22 ゴブリン討伐④ エピローグ
<タイレル領主の娘、エリスの視点>
いつものベッドで目をさます。
柔らかい、ふかふかなベッド。
「エリス様、お加減はいかがですか。」
おつきのものが声をかけてくれる。
「ええ、もう大丈夫です。」
あれから、ずいぶんと寝てしまったのね。
ゴブリンに攫われていたなんて夢みたいだわ。
今日は、これからお父様と妹に会う。
ずっと寝込んでいたので、ちゃんと話をするのはあれから始めて。
広い部屋にはお父様と妹のエリアだけが居た。
「エリスよ、その…なんだ、大丈夫だったか。」
お父様はやさしい声で私に話しかけてくれる。
心配をかけて、ごめんなさい…
でも、私には言わなければいけないことがあるの。
「あの時。」
「ん、なんだ。」
「ゴブリンに連れ去られた時です。もうだめだと思いました。ゴブリンに捕まった娘がどうなるか、私もそれなりに存じております。そのような目に会うくらいなら自害しようと…」
「おい、おまえ…」
「隠し持っていた食事用のナイフをのどに当てた時でした。勢い良く扉が開いて…そこには少したよりなさげな勇者様がいたのです。」
「ああ、わしが面会したやつだな。確かに少し頼りなかった。」
「たったお一人で、危険な場所に飛び込んでこられて。でもたったお一人でしょう。無事に助け出していただけるとは、とても思えませんでした。」
お父様と妹は黙って聞いている。
私は話を続けた。
「ただ、勇者様は凄いのですよ、部屋いっぱいにいたゴブリンの中を、傷ひとつ受けずに私たちの元まで来たのです。攻撃を弾き返して、するするっと。」
あの光景は、一生忘れないでしょう。
「それから勇者様は私たちとゴブリンの間に立ちはだかると、たった一人で何十体ものゴブリンの攻撃をふせがれたのです。ですから、私は全くの無事です。あの勇者様のおかげなのですよ。」
「そうか、それほどの手練れであったか。」
「そうです、それほどの力をお持ちなのに、戦いの後は泣きそうな顔をしてこっちの心配ばかりしていて。私が必死に気丈にふるまっているのに、まったくおかしな人でした。」
「お姉様、もしかして、その人のことが…」
妹のエリアがかわいい声で言った。
「そうじゃ、この屋敷に呼んでもてなしをしようじゃないか。なんならタイレルの騎士になってもらってもいいぞ。」
「いいえ、あのお方は、もっと重要な使命があるのでしょう。私のことは別にいいのです。」
「エリス…」
「ただし、あの方にもし何かあれば、私は全力でお守りします、そう心に決めましたの。あの方の敵は私の敵です、たとえお父様でも。」
「急になんだ、わしは何にもしておらんぞ。」
「聞きましたよ、お父様。あの方にずいぶん失礼なことを言ったとか。それに領民についても、代わりはいくらでもいるだとか酷いことを言って。」
「それはだな、わしにも領地の経営という重い責任があるのだ。女、子供が口をだす話ではない。」
「お父様!」
私はお父様の目をにらみつけた。
大声を出されても怯みませんわよ。
しばらく無言での睨み合いになる。
「ふう、わしの負けじゃ。」
先に折れたのはお父様だった。
「いつのまにかこんなに強くなってしまって。わしはどうすればいい。」
「被害にあった人たちには、補償と税の免除を。そのことを書いたお礼状を天空騎士団とギルドあてに送ってください。」
「そうか、わかったよ、その通りにしよう。だからそんな怖い顔でわしを見ないでおくれ。」
お父様は頼りない声でそういった。
「わかりました、今回はそれでいいでしょう。」
「お姉ちゃんやったね。」
そういうと妹は抱きついてきた。
私はその頭を軽く撫でた。
そう、私も自分が正しいと思うように生きていきます。
いつかまたお会いできる日を夢見て。
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