21 ゴブリン討伐③
「あらかた片づけたな。」
ノワールが言う。
ゴブリンの主力は倒しきっただろう。
こちらに攻撃をしてくるものは、もういない。
本来なら、追撃戦に入るのだけれども、今回は村人の救出を優先する。
生き残っている、ゴブリンどもを倒しながら手分けして探索した。
「たす…けて…」
洞窟の奥からかすかに悲鳴のようなものが聞こえた。
「みんな、この奥から声が聞こえました。」
「よし、突入しよう。」
「待ち伏せをしているかもしれない。気をつけろ。」
洞窟に入ろうとすると、背後から突然ジャイアントオーガが2体現れた。
青い皮膚に2本の角をはやした巨人だ。
大きな足音を鳴らしながら、こちらに向かってくる。
「どうやら、ゴブリンメイジが呼び寄せたらしいな。」
ノワールが言った。
ジャイアントオーガの後ろには、隠れるようにゴブリンメイジが集まり呪文を唱えている。
地面に描かれた、魔法文字が怪しく光る。
「ゴブリンごときがモンスター召喚とはな。」
「こいつは、なかなか骨のあるやつが現れたじゃねえか。」
ベオウルフが槍を構えながら言った。
しかし、悠長に相手をしている暇はない。
囚われた娘たちを一刻でも早く救出しないといけないのだ。
「こいつらは無視して、救出に行きましょう。」
「それはまずいな、下手に暴れられると洞窟が崩れ落ちるかもしれんぞ。」
「解りました、それなら俺一人で救出に行きます。」
「一人では危険だ。罠があるかも知れん。」
ノワールが言う。
「なんとかします、早く助け出してあげたいんです。」
俺は答えた。
「そうか、よしわかった、行けタクト。ここは任せろ。」
「はい、お願いします。」
そう言うと、俺は一人で暗い洞窟に飛び込んだ。
◇
洞窟に入ると、中は真っ暗だった。
空気はひんやりと冷たい。
ランタンに火を付けて進む。
ゴブリンの待ち伏せは今の所ないな。
しばらく進むと分かれ道があった。
かすかに物音がする方へ進む。
さらに進むと少し広い空間に出た。
武器や防具、道具が置いてある。
間違いなくここがゴブリンの隠れ家だな。
奥にはいくつかの扉があった。
一つだけかすかに明かりが漏れている。
その扉を開けると。
中はゴブリンで一杯だった。
部屋の奥には、とらわれた娘たちがいた。
若い可愛らしい女の子ばかりだ。
ゴブリンは娘たちにのしかかり、押さえつけている。
娘たちは泣き叫ぶ。
まわりのゴブリン達は薄ら笑いを浮かべている。
「お前ら…何を…」
あまりの光景に頭の中が真っ白になる。
俺は部屋に飛び込むと、ゴブリンの集団のわずかな隙間をすり抜ける。
敵の攻撃はすべて弾き返した。
最奥まで駆け抜ける。
女の子に覆いかぶさっているゴブリンの背中を心臓を狙って突き刺した。
ゴブリンはすぐに動かなくなった。
その隣のやつは、蹴りあげて離れたところの首を落とし、踏みつけた。
他のゴブリンもあわてて女性を襲うのをやめ、立ち上がる。
そこを、まとめて切り倒した。
剣がゴブリンの体液でベトベトする。
女性たちを全員助け出すと、ゴブリンどもと睨み合いになった。
派手に倒したせいだろう、敵も驚いて動きが止まっている。
「助けて、ここから出して!」
パニックになった女性たちが扉へ行こうとするが、何とか押しとどめた。
扉の周りはゴブリンで一杯だ。
「駄目だ、危ない、下がっていて。」
「こんなことろ、もう嫌よ。」
「そうよ、ひどい目あうくらいなら、いっそ逃げ出して殺された方が…」
娘たちは怯えて言う。
「大丈夫、ここから先は一歩も通さない。」
俺がそう言うと同時に、ゴブリンは一斉に襲ってきた。
「スキル発動、『ジャストガード』」
薄暗い部屋の中で盾が一瞬光る。
キン、キン、キン…
何十体ものゴブリンの攻撃を全てジャストガードで防いだ。
ゴブリンどもの動きはみるみる悪くなる、ジャストガードは敵のスタミナを奪う効果がある。
疲れきって腕も上げられなくなったゴブリンを順番に斬り倒していく。
完全に流れ作業だ。
「やったわ。」
「すごい。」
泣いていた娘たちから歓声があがる。
「勇者様やっちゃえ!」
襲われていて泣いていた娘が、腕を突きあげて言った。
「よし、見てろよ。スキル発動『受け流し三連』」
ドン…ドン…ドン…
受け流しが決まった時の、独特の重低音が三連続で響く。
受け流しは攻撃をはじき、バランスを崩す。
くらった相手は、少しの間完全に動きが止まる。
俺は、ゴブリン3体ののどを立て続けに剣で突き刺した。
いくら攻撃しても無駄だと思い知ったのか、残りのゴブリンはわれ先にと逃げ出していった。
「まて、逃がさないぞ。」
追いかけようとした俺を娘たちが押し留めた。
「待って、行かないで。」
不安そうな声だ…
それはそうだよな、こんなところに置き去りにされたら心細いだろう。
まあいいさ。
洞窟の外には、最強の戦士たちが待っているのだから。
◇
「ありがとうございます勇者様、もうだめかと思っていました。」
娘の一人が言う。
気品のあるしっかりとした物言いだ。
この人が領主の娘なのだろう。
こんな状況なのにまったく取り乱していない。
ただ衣服は引き裂かれて、ボロボロになっている。痛ましい。
「こんな、姿で申し訳ございません。私はタイレル領主の娘エリスです。代表して、お礼申し上げます。」
破れた衣服を整えながら彼女は言った。
「ごめん、俺がもっと早く来ていればこんなことには。」
「大丈夫です、ゴブリンどもが私たちに乱暴しようとしてすぐに勇者様が到着したのです。怪我をしたものは数名おりますが、全員その、なんといいますか。暴行はされておりません。」
「本当ですか…」
「本当です。」
「本当に本当?」
「そうです。」
「本当に大丈夫だったんですか!」
「もう、しつこい勇者様ですね。本当ですよ。」
そういって、領主の娘は笑った。
もう、おかしな方ですねと少し呆れた感じで言われてしまった。
なんとも締まらないやりとりである。
全員無事で、本当に良かった。
ホッとして座りこんてしまう。
助けた娘たちから、口々にお礼を言われる。
外の方は、どうなったのか。
ノワールたちのことだから大丈夫だとは思うけど、早く戻らないと。
俺は重い体を持ち上げて、外に向かった。
◇
娘たちを連れて暗い洞窟を出ると。
ノワールとジャイアントオーガが向かい合っていた。
「くらえ!『バーストアタック!』」
ノワールの攻撃はジャイアントオーガの胴体を吹き飛ばした。
ジャイアントオーガは前向きに倒れ、動かなくなった。
もう一体はすでに倒されていた。
「タクト君、みんな無事だったのね、よかった。けがをした人はみんなセシルが直しますよ!」
そういったセシルの足元には、洞窟から逃げ出だしたと思われるゴブリンどもが頭から血を流して倒れていた。
詳しくは聞くまい。
その後、タイレルの騎士団とも合流して、できるかぎり村人を探し助け出した。
こうして、俺の初任務は終了したのだった。
その後の調査隊が派遣され入念に調べたが、ゴブリン強化についてはっきりしたことはわからなかった。
あの、ゴブリンは特殊な個体だったのか、または誰かに強化されたのか…
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