20 ゴブリン討伐②
「少し離れた村の収穫祭に、領主の代表として娘が参加していたのだ。そこをゴブリンに襲われて…村の娘たちと一緒に連れ去られてしまったのだ。」
領主は俺の肩を強く掴んで言った。
「なんで、こんな時に祭りなんか。」
「村の連中は祭りをやらんと働かんのだ。警備は厳重に行っていた。ゴブリンなんかに突破されるはずがないのに。」
「そうですか、強化されているというのは本当かもしれませんね。」
「頼む、どうか…どうか娘を…」
領主は俺の足元にうずくまり、泣きそうな声で言った。
謁見の時の態度とえらい違いだ。
「勇者さま、お願い。お姉様を助けて。」
領主と一緒にいた小さい女の子が俺に言った。
その顔は涙でくしゃくしゃだ。
可哀想に、心配だろうな。
「ああ、大丈夫、絶対に助けるよ。」
俺はそう言うと剣と盾を取った。
◇
「もう少し先の森がゴブリンの住処です。」
馬に乗った騎士が言う。
領主のおかかえの騎士団の人に目的地まで、案内をしてもらうことになった。
草原を馬でかける。
「申し訳ない、我々が不甲斐ないばかりに…所詮はゴブリンだとなめていました。あんなに強いとは…」
「やはり、通常のゴブリンより強いのですか。」
「はい、全く別のモンスターと思ったほうがいいでしょう。」
悔しさを滲ませながら、タイレルの騎士は言った。
「お嬢様が攫われてから、丸一日が経ちます。早く助け出さないと…我々も加勢したいのですが。すぐに動けるのが私だけで…」
「道案内をしてくれるだけで十分ですよ。」
俺は馬に乗りながら言う。
「私たちもすぐに参戦します。お嬢様をほおっておくわけにはいきません。」
「いや、治安を守るのが君たちの役目だろう。混乱時には人間こそが恐ろしいのだ。モンスターの相手は我々に任せてくれ。」
ノワールが言う。
タイレルの戦士はノワールを見て驚いた顔をした。
「まさか、漆黒のノワール様ではないですか。以前お見かけしたことがあります。ゴブリン退治などに来ていただけるとは…」
「まあ、その、なんだ。複雑な事情があってな。他言無用でたのむぞ。」
「はい、お嬢様をお願いいたします。」
タイレルの戦士は引き下がった。
漆黒のノワールは彼女の二つ名である。
高名な騎士には、自然と二つ名が付く。
しばらくすると、ゴブリンが潜む森に着いた。
道幅はせまく馬での移動は無理そうだ。
タイレルの騎士に馬を預けて徒歩で進んだ。
◇
うっそうと茂った森を進む。
森の中は樹木におおわれ薄暗い。
「戦い方ははどうする。」
ノワールが言う。
「俺が敵をひきつけますから、そこを二人が攻撃してください。」
いつもの戦法である。
これしか出来ないのだ。
「セシルは回復と補助魔法をお願いいます。」
「はーい。了解でーす。」
「面倒だな、突っ込んで蹴散らせばいいだろう。」
ベオウルフが言う。
「ひとまとめに倒さないと時間がかかります。この方法が一番早いと思いますよ。」
ゴブリンに捕まった人達が心配だ。
酷いことをされる前になんとか、助けたい。
「うむ、戦いは相手を侮った方が敗れるものだ。」
ノワールが言う。
「はいはい、わかりましたよ。リーダーの実力の程を見せてもらいますよ。」
ベオウルフはそう言って俺の背中を強く叩いた。
◇
「よし、着いたぞ。」
ノワールが言う。
森の奥に少し開けたところがあり。
木製の粗末な小屋がびっしりと並んでいた。
「すげえ量だな、全部燃やしちまうか。」
「いやいや、村人を助けないと。」
「冗談だよ。全く、おぞましい光景だぜ。救出したらすべて焼き払ってやる。」
ベオウルフは言った。
「よし、行きましょう。」
敵の本拠地に真正面から乗り込む。
これが騎士の戦い方だ。
「さあ、ゴブリンども出てこい!」
ベオウルフが叫ぶ。
小屋の中から、次々とゴブリンが現れた。
俺は最前列に進み出て盾を構える。
ゴブリンは木製の棍棒を構えて襲ってくる。
剣や槍を持っているものもいる。
装備はバラバラだ。
「スキル発動、『挑発』」
盾役の俺に攻撃が集中するようにスキルをつかう。
挑発スキルはトリプルAまで上げているので有効範囲はだいぶ広がっている。
それでも、全体をカバーすることは出来ない。
「スキル発動『観察』」
ゴブリンどもを観察して動きを予測する。
取りこぼしの無いように、動き回る。
確かに、見た目は普通のゴブリンと少し違うな。
身体も全体的に大きいし、顔にや体のところどころに太く血管が浮き出ている。
顔も凶悪に、なっている気がする。
攻撃力もワンランク上がっているな。
キン、キン、キン…
甲高い、金属音が連続で響く。
盾スキル『ジャストガード』で盾受けをしたときに発生する独特な音だ。
『ジャストガード』はタイミングがシビアなのだが、決まると敵の攻撃を無効化出来る。それに敵のスタミナを奪うことも出来るのだ。
「見事なものだ。本当にジャストガードを実戦で使うんだな。信じられん。」
「だから言っただろう、タクトはすごいやつだと。」
「なんでお前が得意げなんだよ。」
「ノワール、ベオウルフ、攻撃を頼みます。」
敵をひとまとめにしたところで、攻撃フェイズだ。
「よし、行くぞ。」
ノワールは剣を大きく振りかぶり、ぐっと力をためる。
『マキシマムバーストアタック!』
ノワールが剣を振り降ろすと衝撃波がゴブリンの群れに吸い込まれるように飛んで行く。
それは大爆発をおこし大量のゴブリンを吹き飛ばした。
黒々とした煙が上がる。
「こちっちも行くぜ、『スピアレイン!』」
ベオウルフは高く飛び上がると、空中から目にも留まらぬ速さで連続攻撃をする。
ゴブリンは穴だらけになり血を吹き出して次々と倒れていく。
凄まじい攻撃力だ。
ゴブリンの戦力はみるみると溶けていく。
いくら強化されたとはいえ、元の戦力差がありすぎる。
「キャー!」
突然、後方からセシルの悲鳴が聞こえた。
孤立していたセシルにゴブリン数体が遅いかかったのだ。
ゴブリンはにたにたとよだれを垂らしている。
「セシル、危ない!逃げて!」
俺は大声で叫んだ。
「やだー、来ないで。」
セシルは悲鳴を上げながら魔法使いの杖を軽く振りかぶると、ゴブリンをぶん殴った。
ゴブリンは信じられない勢いで飛びあがり、頭から地面に落ちた。
襲いかかるゴブリンたちは魔法使いの杖で殴られ、血や体液を撒き散らしながら次々と倒されていった。
「あいつはああ見えて馬鹿力でな。腕力の数値が異常に高いんだよ。」
ベオウルフが戦いながら言う。
後で聞いた数値は、俺の数倍であった。
「あーもー。ベオウルフさん余計なことは言わないでくださいよ。セシルはか弱いヒーラーなのです。」
杖に着いた血を払いながら、セシルは言った。
面白かった、続きを読みたい、
と思っていただけましたでしょうか?
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な気持ちで結構です。
参考にさせていただきます。
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
よろしくお願いします!




