19 ゴブリン討伐①
俺たちは王都を出発し目的地へと向かった。
山道を超えてタイレル領内に入る。
とてもいい天気だ。
自然が豊かで、のどかな風景が続く。
「緑がいっぱいで、いいところですね。」
歩きながら、セシルが話かけてくる。
体にぴったりとした僧侶のローブの上に、薄手のガウンを羽織っている。
衣装は膝上までで、ふとももの前にスリットが入る。
「いい景色だね。こういうところでのんびり暮らすのもいいかもね。」
生まれ故郷をおもいだすな。
それにしても、女性の僧侶の装備はなんというか…薄着だよなあ。
これが神の御心なのだろうか…
ふとももなんか丸出しだし、つい目が行ってしまう。
「僧侶の衣装ってかわいいですよね。」
ローブの裾ををつまみながらセシルが言った。
しまった、ちらちらと見ていたのがばれてしまったか。
「そ、そうだね、薄着で寒くないのかなって。」
俺はなんとか平静を装って答えた。
「大丈夫です、神のご加護で守ってくれるのですよ。なんちゃって。本当は信仰とかよくわかんないんですよね。衣装がかわいいからヒーラーになったんですよ。」
「へえ、そうなんだ。ちょっと変わった動機だね…」
よく分かんないのか…それでいいのだろうか。
「タクト君はどうして盾役になったの?」
「初めてパーティーを組む時にだれも盾役やりたがらなくて…仕方なく俺がやることに。それから成り行きで…」
不人気ポジションというのはどこの世界にもあるものだ。
「えーなにそれ、やだー変なの。タクト君って面白いね。」
そう言ってセシルは笑った。
「いや、セシルの方がよっぽど変わってると思うよ。」
「そんなことないですよー、タクト君ったら。もう。」
何がそこまで面白いのか、セシルは笑い続けている。
しかし、彼女も騎士団一の回復術師と言われているのだ。
とてもそうは見えないが、並外れた実力の持ち主なのだろう。
「よし、到着したぞ。あそこが目的地だ。」
ノワールが言った。
草原の先には、のどかな風景とは不釣り合いな大きな館があった。
◇
領主の舘に到着した。
門番に話をして中に入る。
大きな館の一室に通される。
「じゃあ、俺たちは休んでいるから、しっかりたのむぜ。リーダー。」
ベオウルフが少し茶化す感じで言った。
タイレル領主とは代表してリーダーの俺一人で面会することになった。
ノワール達はあまり表にでないほうがいいとの判断である。
領主との謁見か…面倒くさいなあ…
「ほら、背筋を伸ばして。天空騎士団の代表だぞ。」
ノワールはそう言うと、俺の背中を指で撫でた。
「うひ。ちょっと、手つきがその…そくぞくするんですが。」
俺は、背中が弱いのだ。
「ばかもの…変なことをいうな。」
ノワール顔を真っ赤にして言う。
「そ、それより、領主との謁見についてだが、作法はわかるか?」
「はい、全く分かりません。」
「よし、教えてやろう。まずはだな…」
挨拶の文言から、礼のしかたまでノワールは丁寧に教えてくれた。
◇
「さあ、こちらです。」
衛兵に廊下の一番奥の大きな部屋へ案内される。
領主は大きな椅子に座っていた。
ノワールに教えられたまま、一通りの挨拶はすませた。
が、不慣れなのはいなめない。
領主はみるみる不機嫌になる。
「なんかおどおどしてるけど、あんた本当にあの有名な騎士団の人なの?」
「ええ、まあ一応…」
「なんかたよりないなあ。こっちは大変なんだよ。畑は荒らされるわ、家畜は食われるわ。村人もさらわれたり。大損害なわけ。まったくギルドの連中がいい加減な戦士をよこしたせいでこんな目に。あんたらは大丈夫なんだろうね?」
「はい。メンバーはみな優秀ですから。」
俺以外は、ゴブリン退治に来るようなメンバーじゃないんだよ!
と大声でいってやりたいが、今回は秘密なのであった。
もどかしい。
「村人が攫われているんですか?」
「ああ、あいつらがいないと稼ぎが減るからな。困ったもんだ。」
領民のことは、さほど興味なさそうに言う。
「とにかく、村人の救出を優先させましょう。」
「いや、ゴブリンの殲滅を優先させてくれ。これ以上被害が出ても困る。なあに領民はいくらでも代わりがいる。」
「酷い言いぐさですね。領民をまもるのも領主の努めなんじゃないですか。」
「なんだ、ずいぶん偉そうな口をきくじゃないか。こっちはあんたらを呼ぶのに大金はらってんだよ。黙って働けばいいんだ。」
「もういいです、わかりました。一休みしたら出発します。」
評判通りの悪徳領主だ。
これは何をいっても無駄だな。
こんな領主の元で暮らすとは、領民も大変だ。
◇
「タクト、お疲れ様、どうだった。」
「ええ、少し嫌な思いをしました。」
ノワール達に先ほどのやり取りを話した。
「そうか、大変だったな。」
「いえ、大したことないですよ。」
とはいえ、あまりいい気分はしない。
「しかし、そんなやつの為に戦うのも癪に障るな。別に俺たちは金で雇われているわけではないぞ。」
ベオウルフが苦々し気に言う。
「でも村人が攫われているそうですから、救出しないと…」
「ふん、ならしかたねえか。」
「それから、人数分の馬を用意してくれるとのことです。少し時間がかかるみたいなのでそれまでに準備を済ませて下さい。」
俺は皆にそう言うと防具つけ始めた。
俺は盾役にしては装備が軽い方なのだが、他のメンバーはさらに軽装だ。
セシルはいつも通りの僧侶の服装だし、ベオウルフに至っては、上は胸の谷間が強調された革の防具、下は革製のピチピチのショートパンツだ。
「なんだよジロジロみて。」
ベオウルフが言った。
「いや、その格好で行くんですか?」
「何だ、おかしいか?」
「随分露出が多いなあと…」
「ああ、俺はスピードタイプだからな。このほうが具合がいのさ。」
そうなのか、俺も男だから、露出が多いのは嬉しいところもあるが…それにしても…これは…
「なんだ、俺の身体をみて興奮でもしたのか?」
頭の後ろに手を組み、ベオウルフが言う。
「違いますよ、やめてください。」
さっきからノワールが怖い顔をしてこっちを見ているのが気になる。
真面目な人だから、こういうふざけた話題は嫌いなのだろうな…
「なるほど、私ももう少し露出を増やしたほうが…」
ノワールは言った。
「何がなるほどなんですか、張り合わなくてもいいですよ。」
「大変じゃ!今すぐに出発してくれ!」
会話の途中、領主が取り乱した様子で部屋に飛び込んできた。
顔は真っ青で、汗で髪が濡れている。
尋常ではない様子だ。
「どうかしたんですか。」
「わしの娘がゴブリンにさらわれたのだ!」
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