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17 初任務

 天空騎士団の団長室は、最上階にある。

俺の初任務が決まったとのことで団長に呼ばれて出向いたのだった。


 広い部屋には、太い石柱が並び威厳を感じさせる。

大きな机の奥に、団長のヴィレッタがちょこんと座っている。

淡い栗色の髪の少女だ。

その隣には、俺より少し年上に見える女性が立っていた。


「秘書のワンダです。よろしくタクトさん。」

「わしの専属の秘書じゃ。団員のことなら何でも知っておる恐ろしいやつじゃ、気をつけるが良い。」

「何をおっしゃいますか。何でもは知りませんし、恐ろしくもありません。タクトさんお気になさらずに。」

ワンダさんは少し怒った口調で言った。

書類の束を持ち、スッと背筋を伸ばして立っている。


「本題に入るぞ。タクトの初任務じゃが…」

「はい…」

「ゴブリン討伐じゃ。」

「え?ゴブリンですか、あの緑の?」


 少し拍子抜けした。

ゴブリンはモンスター強さランクでいくと、かなり下位だ。

天空騎士団でもゴブリン退治とかするんだな。


「おぬしの実力をあなどっているのではないぞ。少し事情があってな。実は、先日とあるAクラスの冒険者パーティーが、ゴブリン討伐に失敗したのじゃ。」

「そうなんですか。それはまためずらしい。」


 Aクラスパーティーはドラゴンやデーモン級の強力なモンスターを何体も討伐し、実績をが認められようやくなれるのだ。

ゴブリンに遅れをとるとは。


「その戦士達は失敗の理由を、モンスターが強化されていたからだと言ったのだとか。」

「モンスター強化ですか。誰かが強化したとか?」

本当なら重罪である。


「本当に強化されているのかはまだわからんがの。ただの言い訳かもしれん。だがその領内はゴブリンどもに荒らされひどいありさまだそうじゃ。」

「そうなんですか。」

「ギルドからなんとかして欲しいと直々に要請がきておるのじゃ。やってくれるか。」

「何やら事情がありそうですが、わかりました。やります。」

「そうか、たのんだぞ。」


 いよいよ、初任務だ。

ここで失敗しないように頑張らないと。

前みたいにゴミ扱いされるのだけはごめんだ。


「ところで、他のメンバーは決まっているのですか?」

「実は、まだ決まっておらんのじゃ。」

そう言うとヴィレッタは目の前の書類をパラパラとめくる。


「氷のスティッキーに、策士ウエルブ、あたりが良いかのう。」

「ウエルブ様は別のクエストがきまっています。」

「そうか、だとすると…」

ヴィレッタとワンダさんが話し合っているところ…


バン!


「いや、私が行きましょう。」

部屋の扉が勢いよく開いた。

扉を開けたのはノワールだった。


「なんじゃノワール、立ち聞きとは行儀の悪い。」

「タクトの初陣のメンバーは私に任せてください。」

ノワールはヴィレッタの前で片膝をついた。

「いや、天空騎士団の筆頭がゴブリン退治とは…」

「あまり、前例はありませんね。」

ワンダさんが相槌をうつ。


「何を言うのです、重要な任務です。それに何か嫌な予感がします。」

ノワールはキリっとした、真剣な表情で言った。


「へえ、嫌な予感がのう…ふーん。」

「な、何ですか。べ、別にタクトと一緒に行きたいとかそう言う事ではないのです。」

ノワールは顔を赤くして苦しそうに言う。

何か事情があっての、しかたなくの参戦なのだろうか。


「まあよい、考えておこう。では残りは、スティッキーか…」


バン!


 別の扉が勢いよく開いた。

「ゴブリン討伐、私めが参加いたしましょう。」

顔に大きな傷のある女性が入ってくる。

ベオウルフだ。


「なんじゃベオウルフか、お前も立ち聞きか。」

「タクトとは共に戦うと約束をしているのです。騎士の誓いです。ぜひお願いします。」

そういってヴィレッタの前で片膝をつく。


 そういえぱ、そんな話もしていたな。

社交辞令だと思っていたが。

本当に来てくれるとは。


「うーむ、強化されていたとしても所詮はゴブリンじゃ。正直なところそこまで苦戦するとは思っておらん。タクトに慣れてもらう意味でも中堅どころを選ぼうと思っておるのじゃが。」

「団長ともあろうお方が、それはいけませんな。何事も最初が肝心なのです。私に任せてください。」

「はあ、もういいわい。後はわしが決めておくからのう。」


「タクト君久しぶり、私も参加しまーす。」

柱の陰から女の子が現れて俺に言った。


「ええと、誰だっけ。」

「ひどーい、セシルですよ。」

ああ、ベオウルフとの手合わせの時に少し話をした、ピンク髪の女の子。


「セシルよ、なぜここにおるのじゃ。」

「たまたま通りかかったんですけど。」

「嘘をつくな、柱の陰にいたじゃろうが。」

「細かいことはいいじゃないですか。私も参加します、いいですよね。」

はあ、とため息をついてヴィレッタは俺の方を向く。


「タクトよ、こいつはこう見えて、わが騎士団最高の回復術師ヒーラーじゃ。一応聞いておくが、なぜ参加したいのじゃ…」


「この前の手合わせで、タクト君がベオウルフさんをやっつけたのを見て、めちゃめちゃ興味を持ったんです。」

「お前、本人を目の前にしてよくやっつけたとか言えるな。言い方を考えろよ。」

横からベオウルフが言ったが、セシルはかまわず話し続ける。

「それでタクト君にヒーリングをかけるのを楽しみにしてたのに…ダメージがゼロだったんです。」

「悪かったな、すぐに負けて。けががなくて良かったじゃねえか。」

「そうですけど、ダメージ受けないとヒーリングかけられないじゃないですか。」

「なんだよ、その歪んだ欲望は。」

「というわけで、一緒にクエストに参加して、今度こそタクト君にヒーリングをかけてあげたいんです。」

セシルはそう言うと、俺に向かって微笑んだ。

ちょっと変わってるこだなあ…


「まあ、いいわい。もうまとめて許可してやるわ。ワンダよ、このメンバーで準備を進めてくれ。」

頭をかかえながらヴィレッタが言った。


「あー、ところで。なんだか面白そうなので、わしも参加したいのじゃが、いいかな。」

「公務がたまっていますので、ダメです。」

秘書のワンダさんは笑顔で答えた。

「むぅ、団長なんぞやるもんではないわい。」

ヴィレッタはむくれた顔をして言った。

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