11 入団テストをするはめに…②
「ベオウルフは槍使いだ。長い槍を巧みに操り剣士を翻弄する。あいつに歯が立たず自信を失い、ここを去ったものも多い。気を付けるのだぞ。」
ノワールが言う。
ベオウルフは天空騎士団の中でもトップクラスの実力者だそうだ。
正式な試験ではないとは言え、全く通用しなければここを去るしかないだろう。
そういう雰囲気だ。
「今、会場の準備をしている。二人とも少しここで待っていてくれ。それと、そこにある手合わせ用の防具を装備しておいてくれ。」
試合場の横の一室で二人で待たされることになった。
待ち時間を利用して、戦闘を頭の中で試行してみる。
槍は長め、手脚も長い、ふところが深いな。ふくらはぎの筋肉の付き方から瞬発力が高いのがわかる。
どのくらいのスピードになるのだろうか。
スキル『観察』を使用する。
情報がイメージとして流れ込む。
「おい、なにジロジロ見ていやがる。」
「あ、いえ別に。すいません。」
ベオウルフに怒られた。
大きな傷のある顔ですごまれる。
おっかねえなあ。
ギルドで戦ったゴロツキどもとは迫力がまるで違う。
「よし、準備ができたぞ。」
ノワールに言われ試合場へ行く。
どうせ俺には、失うものは何もない。
やってやるぞ。
◇
試合場にてベオウルフと対峙する。
「よし、私が立ち会いをつとめよう。」
ノワールが言った。
「お前が審判か、公平に頼むぜ。」
「あたりまえだ。お前こそ気をつけろよ、タクトは強いぞ。」
「ふん、特殊ガードスキルが少し得意なだけだろう。そんなやつは何度も対戦したことがある。命知らずのいかれた野郎ばかりだったよ。騎士の戦いは、ギャンブルじゃねえんだ。そんな邪道は俺には通じない。」
なるほど、戦闘スタイルがお好みではないという訳か。
しかし、その言い方は頭にくる。
こっちだって、持てる力をやりくりして、何とか戦ってるんだ。
生まれつき強い力を持っているやつに何がわかる。
「戦闘スタイルは人それぞれですよ、正解なんてありません。俺はこの方法でずっとやってこれたんですから。」
「はん、いっちょ前に怒ったか。精一杯やって、自分の実力を思い知るんだな。」
◇
「一本勝負だ、開始!」
ノワールの掛け声。
騎士団の戦士たちが見守るなか、入団テストが始まる。
ベオウルフは槍を長く持ちゆったりと構える。
場慣れしているのだろうか、笑みさえ浮かべている。
それに引き換え、俺は緊張してガチガチだ。
動悸が激しくなってきた落ち着け。
「さあ、これがかわせるかな。スキル発動、『ライトニングストライク』」
ベオウルフは様子も見ずに、いきなり攻撃スキルをぶっ放した。
残像を残しながらの高速移動。
予想通り、スピードタイプだ。
鋭い切っ先が僕の体を貫こうとする瞬間、
ドン…
重く鈍い音が試合場に響きわたった。
盾スキル発動『受け流し』
ベオウルフの槍は俺の盾に触れると、磁石が反発するように弾き飛んだ。
一瞬だが完全に動きが止まる。
「よし、完璧なタイミングで決まった。」
俺は剣を振りかぶると、無防備なベオウルフに攻撃を入れる。
嫌な奴だけど女性だからな。
大けがはしないように気をつけるか。
手首を効かせて、剣で頭の兜を叩いた。
ゴーン、と兜からはいい音がした。
ベオウルフは膝から崩れ落ちた。
「一本そこまで。」
ノワールの声が響く。
やった、勝った…
しかし、凄い攻撃だった。
今になって脚が震えてくる。
スキル『受け流し』が決まらなければ俺が負けていただろう。
「うぉーすげー。」
「あのベオウルフを倒しやがった。」
「なんだありゃ。」
周りで見ていた騎士たちの声が聞こえる。
「どうじゃ、タクトの勝利じゃ。わしの目に狂いはないのじゃ!タクトの入団に異議のあるものはいるか。」
ヴィレッタが、はしゃぎながら周りに向かって大声を上げる。
「異議なーし!」
「いいもん見れたぞ。これからがんばれよー」
周りから掛け声が飛ぶ。
どうやら、俺の入団は認められたらしい。
◇
倒れていたベオウルフが起き上がってきた。
「なんだ今の技は。」
「盾スキル『受け流し』です。盾で攻撃を弾いて軌道を変えるスキルなんですが、決められた相手は大きくバランスを崩すんです。ジャストガードより難しいので多用はできませんが…」
「受けた瞬間、立っているのか倒れているのかもわからなかった。」
ベオウルフは悔しそうに言った。
「しかし、結局一か八かの勝負じゃねえのか。俺はこんな戦いかた認めんぞ。」
「そんなことはないでよ、ちゃんと狙ってやってます。これが俺のスタイルなんです。」
「なんだと!」
「特殊スキル『観察』の力じゃな。」
ヴィレッタが割って入った。
「『観察』ですか?しかし、こんな短時間で、何がわかるんですか。」
ベオウルフがヴィレッタに強い口調で言う。
「タクトの『観察』スキルはトリプルAランクじゃ。おぬしの動きは戦う前に見切られていたのじゃ。」
「そんな…『観察』なんて地味なサブスキルがトリプルAだと、ありえねえ。どやったらそこまで上がるんだよ。」
「どうやってと言われても。使っていくうちに、自然にレベルが上がっただけなんですが。」
俺は頭をかきながら言った。
観察スキルがトリプルAって珍しいのか。
全然知らなかった。
「個人の気質じゃのう。数値では表せない才能もあるということじゃ。ここまでいくと、おぬしの筋肉繊維や関節の動きまで把握されてるじゃろう。丸裸じゃな。」
「な、丸裸だと。こっちを見るな、この変態め!」
ベオウルフは胸と脚の間を両手で隠し、顔を真っ赤にして俺をにらんだ。
「いや、そんな誤解ですよ…」
こうして、門番の試験は無事クリアしたのだった。
◇
「あの…おけがはないですか?」
試合後、突然現れたピンクの髪の少女が俺の体をペタペタとさわりながら言った。
「ああ、はい大丈夫ですけど、君は?」
「私は、セシルといいます。タクト君のけがをなおす役割なんです。」
僧侶の衣装をまとった女の子は言った。
回復術師なのかな。
「ダメージは受けてないですね…残念です。」
そういうと、セシルは去っていった。
残念とはいったい…
なんだか、変わった感じの娘だったなあ。
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