ぼく
三題噺もどきーにじゅうご。
お題:驚き・イルカ・海
僕の毎日は、驚きでいっぱいだ。
僕の、目の前に広がる世界は、碧で埋め尽くされている。
空から注ぐ太陽が、キラキラと反射して、毎日いつでも星が見られる。
その色は毎日色を変え、形を変えて、僕の上に降り注ぐ。
色とりどりの魚達が僕の真横を通り過ぎる。
ほんの少し、言葉が違うから、何を話しているかまでははっきり分からないけれど。
それでも、彼ら彼女らが楽しそうなのは、見てわかる。
たまに違う所を泳いでいると、見たことのない子も見かける。
そういう子を見たときは、必ずお話ししに行くのだ。
僕は、海にすむ小さなイルカ。
海の神、ポセイドンに仕えている。
ぼくの家族は、みんな神様に仕える。
ポセイドンは、色んな話を聞かせてくれる。
ずっと遠くの海にいる、巨大な魚の話とか、陸に暮らしている『ニンゲン』の話とか。
ずっとずっと昔の話とか。
この世界のことは全部知っている―だからお話しに来るのだ。
その話の中で1番好きなのは『ニンゲン』の話。
僕もたまに見ることがある。
初めて頭の上を大きな影が通った時は驚いてしまった。
後から聞いたけど、あれは『フネ』というモノらしい。
大きな音を鳴らしながら通るものだから、あれはもう見たくない…。
僕は毎日、ポセイドンに話を聞きに行く。
―ホントは、あんまりよくないらしいんだけど…。神様が許してくれるから、いいかなって…。
そうして、まだ見ぬ世界に思いを馳せる。