93 イフリート登場
山を下りてきていた魔物たちを眠らせて、火事になっていた森まで三人娘とやってきた。
結構燃えていたと思ったけど、こうしてみるとそれほどでもない。
サフィたちが頑張ったんだろうね。
ところどころリーシャが氷らせたと思われる木があるけど、火はちゃんと消したようだ。
あとは山頂に近い方で火の手が上がっているくらいかな。
焼けた木の影から紫色の熊が出てくる。
まだ変異種はいるようだね。
すかさずニナが飛び込み、首筋を切り裂いた。
たいしたものだと思う。ニナが持っている双剣ウムダーレイジは刃渡りがそれほど長くない。たぶん小太刀くらいだと思う。
それが届くほど相手に近づくのはとても勇気がいるだろう。
そんなニナが変異種の熊を倒して、俺を見上げてくる。
しっかりと頭を撫でてやり、獲物をアイテムボックスに収納していく。
「ニナ、すごいのです。レミも負けられないのです!」
いやいや、レミ。そんなに張り切らなくてもいいよ。
マップを出して確認してみるけど、この辺りにはそれほど魔物は残っていないみたいだ。
火事で逃げ出したか、サフィたちが片付けたんだろう。
「獲物はいないのですか。」
シュンとしてレミが呟く。
しょうがないね。狩りが目的じゃないんだけど。
「上の方に行けばまだいるかもしれないよ。早くサフィたちのところに行かないとね。」
「わかったのです。ニナ、行くのですよ!」
レミがニナの手を引っ張って、早く行こうとする。
狩りができそうでうれしいみたいだ。
それに新しい武器を使いたいんだろうね。
俺と三人娘は急いで森の中を進んで行く。
早くサフィたちと合流したいからだ。
燃えて幹だけが残った木や、消火されて一部が氷ったままの場所を抜けて山の上の方を目指す。
だんだんと濡れ方が激しい木が見られるようになってきた。
サフィたちが近くにいるのかな。
何となく水音が聞こえ、ざわつきを感じる。
「ああ、リーシャ、地面まで氷らせたらダメよ。火だけ消して。」
サフィの声だ。
「むぅ、めんどうなの。」
「リーシャお嬢さん、それなら氷で壁を作ってサラマンダーの炎を止められますか?」
「やってみるの。」
なにやらモーリスがリーシャを宥めているようだ。
みんな頑張っているね。
「サフィ、お疲れ様。」
俺が声をかけると、
「シンジ、遅いわよ。早くあそこの火を消して。」
人使いの荒いエルフだこと。
とりあえず、水をかけておこうか。
「ほっほっほ。お疲れ様です、シンジ様。」
モーリス、ありがとう。
あの様子だと、リーシャだけじゃなくサフィの面倒も見てたんでしょ。お疲れ様。
「いえいえ、何のことはございません。火に水をかけていただけでございますよ。」
随分燃えているところが減ったね。
火が燃えているのは今いるあたりがちょっとと、上の方に確認できるところだけのようだ。
ここまで消すの大変だったでしょう。
「まぁ、サフィーネ様とリーシャお嬢さんが頑張っておりましたから。私はだいぶ楽をさせてもらいました。」
そうなのかい。
ところでジンさんは?
「風の精霊王様は、あちらの奥でサラマンダーの相手をしているかと。」
風と火じゃ相性悪そうだよね。
大丈夫なのかな。
「確かに相性はその通りなのでしょうけど、そこは精霊王様でございますので、上位精霊では相手にならないようです。」
ふぅ~ん、それならいいけど。
それじゃあ、残りの火を消そうか。
サフィたちと合流して消火を始めようとした俺は、三人娘には周囲の警戒を頼んだ。
「おまかせなのです!」
「…獲物はこっち~」
「はい、わかりました。」
三人娘は元気よく返事してくれる。
サクヤは水魔法が使えないから、レミたちと一緒に警戒してもらう。
マップでは近くに魔物がいないようなので大丈夫なんだけど、ちょっと面倒がある。
魔物はいないけど、精霊はいたりするんだよね。
ちょこちょこ火を消していると、目の前に火の玉が現れた。
火の玉の中心には、大きなトカゲのようなものが見える。トカゲと言うか、体長六十センチくらいのイグアナだ。
炎が赤くて良く分からないけど、顔のあたりが紫色っぽく見える。
「サラマンダーよ! こんなところにもいたのね。」
サフィが手を上げて何か魔法を放とうとするけど、その手を掴んで魔法を止めさせる。
俺は封印に魔力の塊をぶつけた時をイメージして、魔力の塊のようなものをサラマンダーに放ってやった。
魔力の塊はサラマンダーにぶつかり弾けてしまったが、サラマンダーは紫色だった顔がオレンジ色に変わり辺りをキョロキョロ見回している。
う~ん、やっぱり瘴気でおかしくなっていたのかな。
火の玉のように宙に浮いていたサラマンダーは身に纏った炎を消して地面に降りた。
大丈夫そうかな。
様子を見ていると、サフィがサラマンダーに近づいていく。
「あなたの御主人様はどこにいるの?」
サフィの問に、悲しそうな顔をしたサラマンダーは上の方のまだ燃えている森を見ている。
あそこにいるんだね。
俺たちはサラマンダーが視線を向けた方に向かおうと、山の上の方に移動していく。
火の手が上がっていた森の中は、サフィたちが消火したおかげでほぼ鎮まってきていた。
残っているのは山の上の方のこの辺りだけのようだ。
面倒なので大きな水玉を作り、炎ごと水で覆ってしまう。
そうして火を消していき、火の勢いをどんどん衰えさせていく。
一番大きく燃えていたところも火が萎んできた。
その火を消そうと思って水をかけようとしたら、突然ブワッと勢いを増して炎が膨れ上がった。
「はっはっは。燃えろよ、燃えろ。炎よ燃えろ!」
膨れ上がった炎の中から、真っ赤に燃えてる感じの変なオヤジが出てきた。
体は大きく、筋肉ムキムキだ。ちょっと鬼のように見えなくもない。
でも顔が紫色っぽくて気持ち悪い。貧血起こしたボディビルダー?
そんな感じ。
こんな変なのが出て来るなんて………
無性に帰りたくなってきたよ。




