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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第三章 精霊王の錯乱
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85 精霊王の道案内

俺たちは風の精霊王ジンさんと一緒に、ベスビオス山へと向かうことになった。

サフィはおおよその方向しか知らないらしいのでちょうどいいかもしれない。

ジンさんとは風の神殿で出会ったけど、彼はそこに住んでいるわけではないそうだ。風の精霊は、文字通り風になって気の向くままに飛んで過ごしていると言っていた。


今は姿を現しているけど、風になって姿を消すこともできるそうだ。

風になれるなんていいね。楽しそうだ。


その精霊王様は、馬車の上に胡坐をかいて浮かんでいる。

俺のイメージは風袋を持っていない風神様だ。

ミョルニルさんと比べると、呑気な精霊様のようだ。


その精霊王様に従って、ベスビオス山を目指しているけど、目の前には川が流れている。

先に越えてきた谷を流れる川のように、この川もラダルス大山脈から流れてきているようだ。

前回の谷越えと同じように、転移で越えようかと思っていると、


「おまかせあれ。」


そう言うとジンさんがドランたちや馬車を風に乗せた。

あっという間に飛び上がってそのまま川の向こう岸に着いてしまった。


これには子供たちが大燥ぎだ。


「風の精霊さんはすごい力持ちなのです。」


「……楽ちん」


「かぜのおじちゃん、もっと遠くに飛ぶの!」


子供たちは手を叩いて喜んでいる。

馬車に乗っているだけの状態には飽きてきたのかな。

でも、そんな子供たちの様子がまんざらでもないのか、ジンさんはもう一度馬車を風で巻き上げ空を飛ばしていく。


「おお、飛んでいるのです!」


「……森も越える~?」


「お山までひとっ飛びなの!」


いやいや、これはこれでちょっと怖いから。

どうにも馬車が宙に浮いているのは足元が心もとない。

そう思っていると、ちょっと広めの道に降ろしてもらえた。

これだけでも結構移動しているよね。


「この道はイシュルの森に向かう道だと思うわ。ジン様も随分と頑張ってくださったようね。」


ニコニコしながらサフィがそう言う。

その一言に後ろを確認してみると、さっき渡った川がもう見えない。

風でひとっ飛ばししただけのようなのに、距離が稼げていいかもしれない。

でもちょっと不安かな。


子供たちは窓から顔を出して、ジンさんに手を振りながら声をかけているけど、体を乗り出すと危ないね。

俺とサフィで子供たちが落ちないように掴んでおく。


「もっとお空を飛んでほしいのです。」


いやいやレミ、もう充分だから。


「……山まで行っちゃう~?」


いくら風の精霊王様でも、そんなに飛ばせられないと思うよ。


「お空のおさんぽなの。くるくる回るとたのしいの。」


リーシャよ、こんなところでジェットコースターは勘弁してください。

安全装置も何もないから、どこかに吹っ飛んでいくかもしれないよ。


「それにしても、風の精霊王様がこんなに子供好きとは知らなかったわ。」


そうなの? 随分と慣れていて、楽しそうにしているみたいだけど。


「そうね。私がジン様と会うときは、いつもお婆様と一緒だったからあまり楽しくなかったのかも。」


悪戯っぽくサフィが微笑みながら言う。

う~ん。子供好きの精霊王様ってことかな。

うちの子たちはかわいいからね。


そんなジンさんだけど、ちゃんと馬車を先導してくれている。

どうやっているのかわからないけど、モーリスが手綱を操作しなくてもドランたちはジンさんについていく。

何もしなくても目的地に行ってくれる馬車っていいよね。

作れないかな?


そんなことを考えていても馬車は進む。

ジンさんの話では、その昔この辺りは神様に吹っ飛ばされたらしいけど、今ではそんな形跡が全然見られない。

相当昔の話らしいから当たり前だろうけど、草原や林がそこかしこに見られ、殺伐とした感じはない。


でも、テルステット共和国に入ってからあまり人の気配を感じないけど、ここは人が少ないのかな。


「そんなわけないでしょ。まぁ、この国は海沿いに発展しているから、そちらの方に人が集まっているだろうけど。」


へぇ、そうなんだ。


「それにしても穀物の栽培とかもしているから、もう少し川を下ると町や村があるわよ。たぶん。」


一応人は住んでいるんだね。


「そうよ。ただ前にも言ったけど、ここで私やサクヤたちが見られると面倒が起こるかもしれないから人目を避けているの。その辺はジン様も分かっているわ。」


ヒトのいないところを通っているってことね。

確かにその方がいいよね。


「ただ、イシュルの森はどうなのかしら。私もここまで来たことがないからよくわからないのよ。ホント、ジン様がいてくれて助かったわ。」


イシュルの森が問題なの?


「う~ん、何もないかもしれないけど国境だからね。変なところで見つかりたくないし、森を出ると砦があるらしいからね。できれば砦から離れたところに出たいわ。」


そうだね。あんまり兵隊さんとは関わりたくないね。

サフィは喧嘩売るだろうし。


「何言ってるのよ。あいつらがちゃんと仕事しないから人攫いがなくならないのよ!」


怒りのポイントはそこなのね。

でも、国境だけで取り締まるのは無理があると思うよ。


「じゃあどうするのよ。」


う~ん、そうだね。闇取引している元を潰さないとダメかな。

必要としている所を知っていて、誘拐を指示するところを潰す。できれば必要としている所も潰した方がいいだろうけど。


「そんなことできるの?」


そうだね、なかなか難しいとは思うけど、本気になって調べればできると思うよ。

やるときは組織を根絶やしにしないといけないだろうね。



サフィと話をしていると、馬車の前からモーリスの声が聞こえる。


「森が見えてきましたぞ。あれがイシュルの森でしょう。」


もうイシュルの森まで来たようだ。

森に入るのは明日にして、野営の準備をしようかね。

まぁ、携帯ハウスを出して晩ご飯を用意するだけなんだけど。


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