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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第三章 精霊王の錯乱
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83 谷を越えて

ガルーシャの森で街道を見つけてからは、馬車を出して進んでいる。

こうしていると、やっぱり馬車は楽だね。何だかんだで歩いていると結構疲れる。

それでも前世のときよりは体力があるような気がする。あの頃だったらこんなに歩けないと思う。

神様から貰ったこの身体のおかげだ。


それにしても道があったから馬車を使っているけど、さすがに町中ほど道は整っていない。結構切り株やらがあって、車輪はガタゴトいっている。

まぁ、客室内は揺れていないようだけど。


この街道を進んで森から出たら、山側に向かうことになる。テルステット共和国とイシュベルク神聖帝国の間には大きな川があるらしく、上流側の方が渡りやすいそうだ。

でもあまり山の中まで行くと、それはそれで大変そうなんだけど。


それから気になる国境の警備だけど、大陸西側のヒト族の国では国境警備らしきものがないみたいだ。

ラインバッハの領主様は警備隊を出してそれらしいことをしていたけど、テルステット共和国側に国境警備用の砦とかはないらしい。

何なんだろうねテルステット共和国って。

まぁ、この世界の国境事情なんか知ったことじゃないからいいけど、ザルだね。


ただ、テルステット共和国とイシュベルク神聖帝国の間にあるイシュルの森を抜けると、イシュベルク神聖帝国の国境警備用砦があるらしい。

まぁそこも森の外にあるだけで、城壁なんかがあるわけじゃないらしいから、砦から離れたところの森から出入りすれば砦側ではまったく気づかないんじゃないかな。


国境の事はさておき、今はガルーシャの森を抜けないとね。


「森の中を馬車で走れるってすごいですね。」


今、馭者台に俺と一緒に座っているのはサクヤだ。

人通りが少ないから大丈夫だろうと馭者をしてもらっている。


「そうだね。ここの領主様が頑張ったんだろうね。それにしてもサクヤは馬車の扱いが上手になったね。」


ホント、サクヤは卒なく馬車を操っている。馬たちが賢いせいもあるだろうけど、その馬たちをしっかり操っているサクヤがすごいと思う。


「そんな…。シンジ様が教えてくれたからです。」


そう言ってサクヤが嬉しそうにする。

何でも一生懸命なサクヤだからこんなに上手になれるんだよね。

そんなサクヤの頭を撫でてあげる。


サクヤに馭者をまかせていると、前の方が明るくなってきた。森が終わるのかな。

そう思っていると、森を抜けるて広い草原が視界に入ってきた。

ガルーシャの森を抜けるとこんな景色が見れるんだね。ガイン側でもそうだったけど、こうして遮る物がない景色はほっとするよ。

ここでいったん馬車を止めて休憩しよう。



ガルーシャの森を抜けてから、山沿いに馬車を走らせる。

このまま北へ向かえばイシュベルク神聖帝国だ。

まぁ、その前に川を渡ったりするらしいけど。


その高い山の麓を走っていく。


「ふぇ~、おっきい山なのです。」


「……でっかい。」


馬車を走らせていると隣にいたレミとニナが驚きながら見上げている。

俺が馭者をしようとしたら、二人が馭者台に座る俺の両隣に座ってきた。

ガインで草原を走っていた時も山を見てきたけど、こちらの山の方が高くて大きいようだ。


「タリシュの森にある山より大きいのです?」


レミが視界に入る一番大きな山を指さして聞いてくる。


「そうだね。こっちの山の方が大きそうだね。」


「………」


ニナも頷いている。


そんな取り留めのない話をレミやニナとしていると、道の向こうに崖のようなものが見える。

ひょっとしたら川かな。サフィが言ってたからね。


崖のそばまで来ると、道は大きく迂回するように曲がっていく。

このまま道沿いに行って、この谷を越えられるんだろうか。

まぁ、考えてもしょうがない。俺たちはこのまま谷を超えようか。


一旦馬車から降りて、馬車をアイテムボックスに収納する。

そしていつものように俺の周りに集まってもらって、谷の向こう側に見える木の根元に向けて転移した。

一瞬、ふわっと身体が浮く感じがしたが、すぐに足元が地面を受け止める。

さっきまで見ていた木の根元に転移出来た。


「ホント、便利ね。こんな簡単に谷を越えられるなんて。」


サフィが呆れているけど、遠回りしなくて済むからいいでしょ。


辺りを見回すけれど、谷のこっち側はあまり人通りがないのか、馬車を走らせるような道がない。

しばらくはドランたちに乗せてもらって移動するしかないかな。


「そうね、この先馬車はムリだわ。」


サフィのひと言に、仕方なしにこのまま進むことにする。

まぁ、ドランたちならこのぐらい苦にもせずに進んでくれるだろう。



俺たちはドランたちの背に乗って道なき道を北へ向かった。

谷を越えて林を抜けると丘が見える。

その先にはまた林があるようだ。


丘の手前で一休みしようと馬から降りた。

とたんにレミが丘へ向かって走っていく。

馬に乗っているだけでも結構体力を使うと思うんだけど、子供たちには物足りないのかな。

ニナやリーシャもレミを追いかけている。


と、その時、丘に向かって走っている子供たちに一陣の風が舞った。


「ああ、ダメなのです。戻ってくるのです!」


どうやらレミの帽子が飛ばされたようだ。

風は上昇気流のように帽子を舞い上げ、林の方へと飛んで行ってしまった。


「あんなに飛んだのです。」


「……むっ、追いかける~」


「かぜのおじちゃん?」


レミとニナが慌てて帽子を追いかけ始めたけど、リーシャは小首を傾げている。

何か気になることでもあったかな。


子供たちが走って林に向かってしまったので、休憩をやめて俺たちも追いかける。

子供たちに続いて林の中に入るけど、帽子が飛ばされてこんなところまでくるのかな。


木々をかき分けるように林の中を進み、緩い傾斜を登って行くとそこには蔦の絡まる石造りの壁に囲まれた神殿があった。


木々や草が覆いかぶさるように生えているけど、真ん中の辺りは若干高くなっているのか、神殿がよく見える。

すごいもんだね、こんなところに神殿があるなんてびっくりだ。

それに、この石はどこから運んだんだろう。


理解が追いつていないから、つい余計な事を考えてしまう。


「この中に帽子が飛んでいったのです。」


「………」


レミがそう言うと、隣でニナが頷いている。

周りを見回してみると、門らしきものがある。

あそこから中に入れるかな。


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