80 相性は面倒
竜王様を見送った後、俺たちは携帯ハウスに戻ってお茶することにした。
竜王様とミョルニルさんが強烈で疲れたよ。
レミたちにはアイテムボックスにしまってあったプリンと果物を出してあげて、俺はミスズさんから購入した緑茶にしてみた。
そのお茶を飲みながらほっとしていると、モーリスが呟いた。
「それにしても[王の証]が千年前の元凶であったとは思いもよりませんでした。」
そうだね。神様からもらった指輪でおかしくなるなんて、誰も思わないよね。
それにしても指輪が[王の証]って名前なんだね。
「そうですね。竜王様が仰った通り、その昔ヒト族に迫害されていた魔族やエルフ、ドワーフなどを率いて大陸の東側に逃れるようにと授けられた物だそうです。このことは他言無用に願いますが、見た目は意匠の凝ったただの指輪ですが、使用者に威圧などを使わせ人々を従えやすくするものだと聞いています。どれほどの効力があるのかはわかりませんが。」
へぇ、何か使い方間違ったらヤバいことになりそうな、物騒な指輪だね。
「そうなのですが、実際にそれほどの効力はないと魔王様は仰っていました。」
まぁ、何にしてもその指輪を浄化すればいいんだよね。
「そういうことになると思います。ただ、ここの封印を見た時、瘴気を出していないようでした。ひょっとすると指輪の方も瘴気を出しておらず、魔王様は大丈夫なのではないかと思えます。」
そうだね。そんな感じはするよ。
でも何で封印が瘴気を出すのを止めたんだろうね。最初の二つは結構瘴気が出てたのに。
「二つの封印を浄化したことによって、シシュリアーネ様がお気づきになったのかもしれないわ。」
サフィがそんなことを言ってくる。
神様を封印するって、どれだけ強力なのかわからないけど、意識とかあるのかな?
寝ているような状態なんじゃないかと思うんだけどね。意識があったら辛そうだ。何千年も身動き出来ないなんて考えられない。
まぁ何にしても次は西側最後の封印、ベスビオス山だ。
それにしても竜王様は面倒そうなことを言っていたよね。
火の精霊王イフリート相手に戦うの?
俺はごめんだよ。
「ミョルニル様は風の精霊王様に会いに行ったみたいだから、うまくすればお二人がイフリート様を宥めてくれるかもね。」
それはうまくいったらだよね。
確実にそうなるかわからないでしょ。
「そうだけど、あまり悪い方に考えるのもよくないと思うわ。」
う~ん、そうだね。
そうなんだけど、最悪は想定しておかないといけないよね。
「必要かもしれないけど、考えすぎなくてもいいと思うのよ。あなたは精霊王様と会う機会が多かったけど、本来精霊王様は人前に出てくることはないわ。」
そうなの?
「そうよ。あまり人々に干渉することはないの。異変があれば別だけどね。」
ふ~ん。
「だからイフリート様がもしおかしくなっていたとしても、他の精霊王様が対応しようとしてくれると思うわ。少なくても人々に対応させようとはしないわよ。」
そういうものなんだ。それならいいね。ミョルニルさんや風の精霊王におまかせだね。
「………そうだけど、あんまりお気楽にしてもいられないかもよ。」
その時はその時ってことで。
「…まぁいいわ。それでベスビオス山の次なんだけど、これまた面倒でね。」
え~、もうお腹いっぱいです。
「そう言わないで。ゼルギウス様も言っていたけど、ヴェルシュタイン公国に行くのであれば、ベスビオス山から北へ向かって海を渡るのが近いんだけどね。あそこはキロス島があるから面倒なのよ。ずっと遠回りになってしまうけど、魔王国側からヴェルシュタイン公国へ行く方が安全だわ。」
キロス島は何かマズいの?
「あそこには太古の昔に女神に付き従った天使たちがいるのよ。これがまたヴェルシュタインの者たちと相性が悪くてね。顔を合わすと魔法を打ち合うのよ。島に近づくと、余計な揉め事に巻き込まれると思うわ。だからあそこには近づかない方がいいわね。」
えっ、天使がいるの?
それにヴェルシュタインと相性が悪いってどういうこと?
「まず天使だけど古代文明が滅ぼされた時、シシュリアーネ様に従って天上界よりやってきたと言われているわ。」
へぇ~、神様に従うって文字通り天使だね。
「そうね。そして問題なのがヴェルシュタインはヴァンパイア、不死者の国なのよ。」
えっ、何それ。怖い。
「方や神の使いでもう片方は不死者なのよ。最悪よね。キロス島にはこの世界唯一のシシュリアーネ様の神殿があるの。だから天使たちはその地を守っているのよ。シシュリアーネ様の復活を願ってね。」
そういうことなんだ。
でもヴァンパイアなんかがいるんだね。他のアンデッドもいるの? ゾンビとかスケルトンとか。
「いるわよ。ヴァンパイアはゾンビとかスケルトンなどのアンデッドを呼び出せるけど、街中をゾンビが闊歩しているわけじゃないわ。」
「そうですな。シンジ様がどのように思われているか分かりませんが、ヴァンパイアは不死者でありますが我々魔族の括りになります。外見上もヒト族とそう変わりはありません。ただ力が強くて身体能力が高く、膨大な魔力であらゆる魔法を使いこなすのです。」
モーリスがヴァンパイアを解説してくれるけど、何かとんでもなく強い種族のようだ。
「あら、身体能力はエルフより上だけど、魔法はエルフの方が優れているわ。」
何となくサフィが対抗意識を燃やしている。
ヴァンパイアに思うところでもあるのかな。
「まぁそう言うことで、キロス島の傍を通るとヴァンパイアを意識した天使たちが飛んでくるのよ。」
そうなの?
「そしてヴェルシュタイン側に上陸しようものなら、ヴァンパイアの一味として襲ってくるでしょうね。」
え~、問答無用なの?
「そうよ。不死者に所縁のある者はすべて浄めるって感じらしいわよ。」
はぁ~、そうですか。
関わり合いたくないね。
何か話をするのも面倒そうだ。
「そうね。たぶんこちらの話は聞いてもらえないと思うわ。」
だからヴェルシュタインへ行くには魔王国側から行けってことなのね。
「そうよ。あなたなら一瞬でタリシュの森まで行けるでしょ。あそこから魔王国はすぐそこだから、魔王国を抜けるだけでヴェルシュタインへ行けるわよ。」
はぁ、ここまで何事もなくやってこれたけど、この先はとんでもなく面倒そうだ。
ホント、気が重くなるね。




