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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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68 ガインの王都にて その一 港町

モデナ島の港町では、王都行きの船をすぐに見つけることができた。かなり大きな船で、ドランたちを余裕で乗せることができた。

王都には一日もかからずに渡ることができたが、王都の港ではサフィやレミたちを見る目が多く、少々落ち着かない。


どうやらこの王都ではエルフ(ハイエルフ)や獣人が珍しいようだ。

あからさまに見られるわけではないが、ことあるごとに意識されている。サフィはモロに居心地の悪さを顔に出している。そして子供たちもよくわからずに戸惑っているようだ。

サクヤは人々の目が向けられていることを理解しているみたいだけど、レミたちはよくわからずに警戒している。


「まぁ、大陸の西側ではこれが普通ね。」


サフィがボソッと呟いた。


珍しいのはわかるけど、それほど気になるものかな。昔からいる種族なんでしょ、今さらどうこうってわけじゃないと思うけど。


「そうね。でも大昔ヒト族は、獣人や亜人種たちを東に追いやったからね。いろいろと思うところでもあるんでしょ。」


ふ~ん、何か面倒臭いね。

そんなことよりおいしそうなものを探したいんだけど。

それとバンドウ行きの船を手配しないといけないよね。


「賛成なのです。おいしいものは正義なのです!」


「……天国はどこぉ~」


やけに張り切るレミとニナ。その二人の意気込みをよそに、


「その前に宿を決めてしまいましょう。ドランたちを預けないといけません。それからギルドに顔を出した方がよろしいと思います。」


モーリスに注意された。そうだね、ドランたちを連れてウロウロするわけにはいかないね。それに紫色のオーガのこともあるし、早いとこギルドに行こうか。


そうして港の中でも良さそうな宿を見つけ、取り敢えず一泊することをお願いして馬も厩舎に預ける。

一息つく間もなく俺たちは港に繰り出した。


「お船がいっぱいなのです。」


そうだね、レミ。

この港は王都と繋がっていて、港=王都らしい。

だからなのか、大きさも形も多様な船がそこかしこに見られる。


さすが王都だけあって、街自体が大きいので港側と王城側の二ヶ所にギルドがあるようだ。

俺たちは、港側にあるギルドに入り紫色のオーガを引き渡した。それからモデナ島の封印が白くなっていたことも報告する。決して自分たちがやったとは言わない。面倒そうだからね。

ギルドの用事が終わったら自由時間だ。


大きな帆船から小さい船まで様々な船が係留されている港町からずうっと陸の方に視線を移すと、丘のように盛り上がった地形になっており、その上には街が形成されて更に奥には王城が見える。

何とも規模の大きな街だ。


「獣王様のお城も大きかったですけど、ここのお城も大きいですね。街と一緒でとても立派に見えます。」


サクヤがお城の方を見上げながらそう言ってくる。

確かに街との一体感があって立派な城だと思う。まぁ関係ないからどうでもいいけどね。


俺たちは、港で美味しそうなものを探している。

ここは街だけでなく、港も大きい。様々な船を係留できるから当たり前なのかもしれないけど、ミズリグ村の港の何倍あるか見当もつかないほど大きい。


そんな大きな港の中心に市場があって、いろいろな店が軒を連ねている。魚介類だけでなく、普通に野菜とか肉が売っていた。端の方には雑貨屋さんまであった。すごいね、売れる物は何でも売ってしまえって感じだ。


「いろんな物が売っているんですね。」


「そうだね、食べ物だけじゃなくて雑貨まで置いてあるね。」


サクヤが目を輝かせて店を覗いている。

いろんな物に興味を持って、いろんなことを知ってほしいね。


「あっ、あれはロアーナ様のところで見た醤油じゃないですか。」


サクヤが店の中で俺に声をかけてくる。

この店は調味料を扱っているようだ。


「よく見つけたね。醤油はあまりないから買っておこうか。」


醤油があるなら味噌もあるよね、と探していたら売っていた。


人魚の島では見かけなかったけど、ここでは味噌も売っていた。これは買いだね。壺でいくつも購入しておく。店のおばちゃんは喜んでいたよ。どうにも味噌の売れ行きはあまり良くなかったらしい。まぁ、お米の文化じゃないと受け入れにくいかもしれない。売れ残るかなと心配していたところに、俺が大人買いしたからホクホク顔だったよ。


他にも珍しい物がないか探していると、ジャガイモをみつけた。うれしいね。これでポテトサラダやフライドポテトが食べられる。

どうやらジャガイモは北が産地らしく、この辺では作られていないらしい。そう言えばジャガイモがおいしいのは北海道だった。

北のイシュベルク神聖帝国で取れたジャガイモを、船に積んで売りに来たそうだ。これも根こそぎ買いだね。この辺ではあまり見かけない野菜だから、売れ行きは良くなかったようだ。俺のアイテムボックスに入れておけば、腐ることはないからいくらでも買っておけるよ。


俺が目の色を変えてジャガイモを漁っていたからか、


「お兄ちゃん、それはおいしいのですか?」


レミが不思議そうに聞いてきた。


「そうだね、これはとってもおいしいおイモさんだよ。」


そう答えると、レミは満面の笑顔になる。うん、いい笑顔だ。レミの頭を撫でていると


「……幸せの序章」


ニナも笑顔でそう言ってくる。ニナも撫でてあげるんだけど、その言い回しはどこで覚えてくるんだろう。


そうして市場の中をウロウロしていると、見たことのあるお姉さんたちがアイスやプリンを売っていた。


「あら、シンジさん。王都に来ていたの?」


皆でお姉さんのところに行くと、ミズリグ村で作ったアイスやプリンを売りに来たそうだ。でもなかなか売れないらしい。やっぱり初めて見るものだから変な物と思われているかもしれない。

このままだと売れないかもしれないね。俺はお姉さんにお金を渡してアイスとプリンを分けてもらう。


「どうするの?」


お姉さんたちは不思議そうにしているけど、俺はアイスをレミたちに持たせて店の前で食べさせた。


「おいしいのです。このアイス、サイコーなのです!」


「…おいしい」


「つめたいの! あまいの! おいしいの!」


三人はいつものリアクションである。ホントにおいしそうに食べてくれる。

周りにいた親子連れの子供が指を咥えて見ている。親の服を引っ張っている子もいる。子供にせがまれて、不承不承という感じでアイスを買ってくれた親が慌てて戻ってくる。


「これは何なの? どうすればこんなに冷たくて美味しいものが作れるの?」


それは企業秘密である。

お姉さんたちは笑顔で往なしている。子供たちが美味しそうに食べていることに気付いた人たちが、アイスやプリンを買っていく。お客さんがひっきりなしに来るようになったけど、店の前にいたレミたちはどこに行ったのかな。

首を伸ばして辺りを探すと、サフィと一緒にレミたちがこちらに歩いてくる。


「アイスを食べながら通りの向こうまで行って、戻りはプリンを食べながら歩いてきたわ。」


サフィがちょっと呆れていた。

お姉さんたちの前にはお客さんが並んでアイスやプリンを買っている。どうやら認知してもらえたようだね。店は大盛況だ。

それじゃあ、そろそろここから離れようか。


「どうもありがとうね。どうやらこれで王都でも売っていけそうだわ。」


お姉さんにお礼を言われて、俺たちは市場見学に戻った。


それから果物屋さんでメロンに似た果物を始め、珍しい果物を片っ端から購入していく。桃みたいな果物もあったよ。ケーキなんかの盛り付けに果物は必須だよね。

そうして市場の半分くらいを見ただろうか、気になって辺りを見回して見ると不自然に俺たちの周りを囲んでいる人に気が付いた。


サフィやモーリスも気づいたようだ。子供たちを真ん中にしてちょっと詰めてくる。


「いつの間にか、囲まれたようね。」


サフィが言ってくるけど、あまり怪しい感じがしない。

これがチンピラとかだったらヤバいけど、そういう雰囲気じゃないんだよね。何て言うか私服警官みたいな感じ。


良く見ると、警備兵らしき人達もいるようだ。何だろうね。俺たち何もしていないと思うんだけど。様子を見ていると、三、四人の警備兵を連れた身なりのいい初老のおじさんが俺たちの前に出てくる。何か執事っぽくてかっこいい。モーリスに負けてないよ。

その執事っぽいおじさんが俺たちの前で身を屈めると、


「シンジ様とそのご一行様とお見受けいたします。我が主が面会したいと望んでおります。ご同道いただけますでしょうか。」


そう言葉をかけてきた。

何で俺だってわかるの? 俺何も悪いことしてないよ。


「ひょっとしてラインバッハかもしれないわね。」


サフィが耳元で呟く。


あの領主様が何かしたの? でも俺たちがここにいるって知らないよね。

そう言えばあの執事さん、我が主としか言っていないね。誰のことなんだろう。


「確かに私はシンジですけど、あなたのご主人に心当たりがないのですが。」


「我が主はあそこにおります。」


そう言って街の奥に見える城を見やる。


あれって王城じゃないの? 俺を呼んでるのは王様ってこと?


「これは行かないとダメっぽいわね。」


早々にサフィが白旗を振っている。早いよ、もうちょっと抵抗してもいいじゃん。いつもの喧嘩腰はどこ行ったの?


「あなたが私の事をどういう目で見ているのか、今度じっくりとお話しする必要があるわね。」


サフィがジト目でニラんでくる。

そんなサフィを気にせずに、


「シンジ殿、観念した方が良さそうですぞ。」


モーリスが諦め顔で告げてくる。

しょうがないね。二人がそう言うならついて行こうか。

でも宿にドランたちを預けてきたけど、そっちはどうするの?


「それならば、私の方から彼らに伝えておきましょう。たぶん王城の方へ移動してもらえると思います。それと宿のキャンセルもお願いしておきましょう。」


ええ~、王城に泊まるの? 堅苦しそうだよ。


そんな俺の感想は放っておかれて、モーリスはドランたちの事を伝えに行ってしまった。

残された俺たちは、執事さんに連れられて立派な馬車に乗せられた。すごいよ、座席が四列もある。俺がラインバッハの領主様からもらった馬車よりも大きいよ。繋がれている馬だって六頭もいるし。


でも走り出すと馬車はガタゴト揺れる。やっぱり俺の改造馬車の方が乗り心地はいいね。


「この馬車は揺れるのです。」


そう言ってレミは不機嫌そうな顔をしている。他の子たちも同じだ。


「こんなにゆれると寝れないの。」


リーシャもお気に召さなかったようだ。

頭を撫でて子供たちを宥めながら、「窓から見えるあのお城までだから我慢しようね。」と言い聞かせるのだった。


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