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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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67 二の封印

「海のお船は揺れるのです。」


そうだな、レミ。

ウテナ湖を渡るのとは違うな。

結局俺たちは一人も船酔いはしなかった。まぁ朝出発の夕方着で、実質六時間くらいしか船に乗っていなかったから何とも言えないけど。とにかく船酔いしないでよかった。あれは結構キツいらしいから。


俺たちを連れてきてくれた船の人たちは、今日積み荷をモデナ島に降ろして、明日にはミズリグ村に戻るそうだ。乗客は俺たちしかいなかった。ホントおれたちのために船を出してくれたようなもんだ。

だから船長さんには多めに酒代を渡しておいた。何でも積み荷の上がりもあるし、ダグランさんからも心づけを貰っていたようだ。でも、だからって俺たちが何もしないわけにもいかないので、気持ちばかり渡しておいた。


モデナ島の封印の後は王都ガインに行くので、この島の真ん中辺りにある港から王都に渡る予定だ。さて、あとはいつものように馬車で進むことにする。


「…王都行く~?」


ニナが心配顔で聞いてくる。封印を見に行ってからね。

そんなに心配しなくても大丈夫だよ。みんな傍にいるからね。


「…みんないっしょ~」


ニナが嬉しそうにしてくれる。やっぱりヒト族の多いところに行くのは抵抗があるのかな。なるべく傍にいてあげるようにしよう。


馬たちに馬具をつけて馬車を用意する。

ドランたちは大人しい。ニナたちが船内でブラッシングしてあげてたおかげか、機嫌がよさそうに見える。


モデナ島の封印は島の西部にあり、これも海に近い所だそうだ。水の精霊王アクエスさんは、海の近くにある封印の状態はすぐに分かると言っていたから、こちらで何かすればすぐに伝わるだろう。


ダグランさんの話では、ミズリグ村近くの海ではだんだん魚が獲れなくなってきているそうだから、早く封印を何とかしないといけない。それにモデナ島の魔物が狂暴化しているらしいから注意しないとね。


船で島に近づいているときからそうだったけど、嫌な感じが強くなっている。心なしか、ウラル半島の封印より気持ち悪い。封印がひとつ減って、残った封印が活性化されました、なんてことになっていなきゃいいんだけど。


馬車で移動を始めてから、マップは出しっ放しにしている。魔物が狂暴化しているっていう情報もあるし、油断はできないからね。

この島は王都に近いからか、王都側の海沿いに人が集中して集まっているそうだ。王都と反対側や、今進んでいる島の内陸部は村らしいものは少ないらしい。何となく人が少ない分、魔物が多くなりそうな気がするのは気のせいだろうか。


そんなことを思っていたからじゃないだろうけど、オーガが二体マップに引っかかった。割と早いスピードでこちらに向かって来ている。このスピードだともうすぐ見えてくる感じだ。


「どうやらお出ましのようだ。ちょっと行ってくるけど、こっちはまかせるよ。」


「わかったわ、気をつけてね。」


俺は馬車を止めてサフィにひと言伝えるとオーガの方へ移動する。あまり馬車の近くで戦いたくないからね。


進行方向に向かって左手の林の中からオーガが飛び出してきた。でも何か変だ。ヴォルフ大渓谷に行くとき出会ったオーガに比べて大きいし、肌の色が紫色っぽい。紫色の巨人って気持ち悪いね。


手に持った木をブンブン振り回して近づいてくる。これは怖いよ、夢で見たらどうしてくれるんだ。

俺は風魔法を強めに圧縮して飛ばしてみる。すると先頭のオーガの首が飛んだ。後ろからついて来ていたオーガが吃驚して怯んだようだけど、構わずに距離を詰めて叢雲で切る。

叢雲で切られたオーガは、上半身と下半身が泣き別れになる。う~ん、失敗した。俺グロいのは弱いんだよね。今気づいた。


切り捨てたオーガを放っておくわけにもいかないなと思っていたら、モーリスがやってきた。


「やはり、魔物たちは狂暴化しているようですな。」


「え、そうなの?」


何で分かるのかな。


「このオーガは紫色の肌をしております。これは変異種の特徴で、通常のオーガより強く危険なのです。」


そうなんだ、気味が悪いとは思ったけど。


「できましたら、このオーガを収納していただいて、後でギルドに報告しておいた方がよろしいかと思います。」


そうだね、そんな危険なのが島中にいたら大変なことになるね。

俺はモーリスに言われた通り、オーガをアイテムボックスに収納した。それからマップを展開し、林の奥に他にもいないか調べてみる。

かなり奥の方にいくつか反応があるけど、こちらに向かってくる様子はない。藪を突きたくはないので、早々に馬車へ戻ってこの場を後にする。


その後も紫色のボアやウルフを狩りながら西へ向かって進んで行く。

進むごとに体に纏わりつく嫌な感じが大きくなっていく。早く封印を何とかしないといけないんじゃないかな。そんな気持ちにさせられる。



封印を目指し、島の西側の海に近いところまでやって来ると、そこは黒い霧のようなものが淀んでいた。


「確かあの先に封印があったハズよ。」


サフィが教えてくれるけど、黒い霧のようなものが邪魔で、封印を確認することができない。


「ウラル半島のときみたいに、魔力を飛ばしてみたら?」


サフィにそう言われ、魔力弾のようなものを黒い霧に向けて出してみた。

すると、魔力弾を中心にして黒い霧が消えていった。何だろう、魔力弾に霧が吸収された感じかな。

魔力弾はすぅっと前へ進み、黒いモノリスに当たって消えてしまった。


霧が出てこないうちにモノリスまで行ってみようか。

俺はそのことをサフィに言うと、一人でモノリスまで移動する。モノリスは、魔力弾が当たった部分が白くなっている。これだったら浄化できるかな。そう思い、モノリスの白い部分に手をついて魔力を流すイメージをしてみる。やはり前回同様魔力とは別のものが流れている感じがする。


すると、ウラル半島のモノリスと同じように黒い部分が白くなっていった。手を離してみるが、白くなっていくのは止まらない。

モノリスは次第に全体が白くなっていき、黒い部分がなくなると眩しく発光した。


ウラル半島のモノリスと同じだ。たぶんこれで浄化できたんじゃないかな。

モノリスの周辺に漂っていた瘴気は消えて、辺りの景色が見えるようになった。


「終わったようね。」


サフィが声をかけながら近づいてくる。

そうだね、あまり実感はないけど終わったようだ。


「この石もきれいなのです。これ取っちゃダメですか?」


レミが目をキラキラさせながら聞いてくる。どうなんだろう。

モノリス自体は俺の身長より高いから、このまま持って行くっていうのはナシだけど、だからと言って一部を削り取るのもどうかと思う。


「レミ、これは取れないからこのままにしておきましょう。」


サフィがレミに言い聞かせてくれるようだ。

わざわざモノリスを削ることはないよね。ヘタに触って悪影響が出るのも嫌だし、このままにしておくのがいいんじゃないかな。


封印を浄化してしばらくモノリスの周りを確認し、おかしなところが見当たらないので俺たちは封印を後にした。

来た道を戻っているけど、途中で分かれ道を進むことになる。ミズリグ村ではなく王都へ向かうためだ。


次はバンデミル半島にある封印に行くんだけど、そこに行くためには王都ガインに行って船を探さないといけない。何でもバンデミル半島のバンドウという港町から馬車で移動するそうだ。バンドウまでは王都からしか船が出ていないようなので、どうしても王都に行く必要がある。王都は前回の獣王国でお腹一杯なんだけど、行かないで済む方法がないので仕方ない。諦めて、王都へ向かう船が出る港を目指そうか。


いつものように馬車を走らせる。モデナ島では、内陸部はあまり人がいないせいか道が良くない。馬車の車輪がついているベース部分はガタゴトいっているけど、客室部分はこれまで通り快適なようだ。やっぱり改造しておいてよかったね。この世界ではコンクリートやアスファルトを見たことがない。きれいに整えられていた道は獣王国の王都くらいだけど、あそこはいわゆる石畳の道だった。

道を作るための材料がないみたいだから仕方がないけど、このデコボコはいただけない。いくら馬車を改造したといっても車軸が折れてしまっては元も子もない。

だから道の悪いところでは慎重に走る。


「お兄ちゃん、随分ゆっくり走ってるみたいだけど、大丈夫なのです?」


レミが気にしてくれたのか、馭者台の後ろの窓から声をかけてくる。


「大丈夫だよ。ちょっと道が悪いだけだよ。」


そう言うとレミは客室側に引っ込んでいった。馬車に飽きたのかな。そろそろ休憩しようか。


馬車を道のはずれに寄せて停車させる。

子供たちは元気よく馬車から降りてきた。やっぱり飽きていたようだ。レミ、ニナ、リーシャが馬車の周りを駆け回っている。馬車に乗っているだけでは、身体を動かし足りなくなるみたいだ。


封印は浄化出来たけど、狂暴化した魔物がどうなったのかは分からないので、マップによる警戒はしておく。

封印に行くまでには結構魔物に遭遇したけど、今は魔物の影も見えない。封印の浄化に関係あるのかな。


「何とも言えませんが、警戒しておいた方がよろしいでしょう。」


そうだよね、モーリス。俺もそう思う。

一旦瘴気を浴びて狂暴化した魔物は元には戻らないそうだ。少なくてもサフィやモーリスがこれまで見てきた魔物はそうだった。だから狂暴化した魔物はまだその辺をうろついていると思った方がいいだろう。


できれば魔物を討伐しておきたいけど、あと四ヵ所の封印もここと同じように瘴気を出しているとマズいから、早目に浄化してしまいたい。


「お兄ちゃん、兎を捕まえたのです。でも変な色なのです。」


「…これ、変」


レミとニナが兎を持ってきたけど、色が紫色だ。これは変異種なのだろう。とても食べたい色じゃない。

俺はレミとニナを褒めて、頭を撫でてやった。二人とも嬉しそうにして、次の獲物を探しに行こうとしたけど止めさせた。普通の動物も変異しているのかもしれないから、危険だと思う。あまり馬車から離れないよう、二人に注意しておいた。



封印を浄化して、馬車で何日か移動した。目の前には海が広がっている。港町までもう少しだ。

モデナ島から王都までは毎日のように船が出ているそうなので、それほど時間もかからずに船に乗れるだろう。

早く次の封印に行きたいけど、王都と聞くと心が重い。何もイベントが起きず、静かに過ごせることを祈っておこう。


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