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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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66 モデナ島へ

結局、俺は異世界でアイス屋さんを始めなくてもいいことになった。

ダグランさんの奥さんたちに、プリンとアイスの作り方を教えてミズリグ村の特産品として売り出すことになった。そして売り上げの一部がギルドを通して俺に支払われるそうだ。何か随分と手回しがいいね。


「あら、モーリスはやり手の公爵だったみたいだから、この手のことはお手の物なんじゃないかしら。」


そうなの? だからあんなにスムーズに出来てるのかな。それとモーリスにも手間賃みたいなものはあるのかな。あれだけ頑張っているんだから何か利益がないといけないよね。


「その辺はうまくやるんじゃないの。」


だったらいいけどね。あとで聞いてみよう。


プリンとアイスの話が出てから、村長さんの家は何か慌ただしくなってきた。今まで目立った特産品はなかったから、王都なんかに売り出せなかったけど、プリンやアイスのようなお菓子ならば売れるということになったらしい。

まぁ、忙しくなるのはいいことなのかな? あんまり頑張り過ぎなければいいけど。


「サクヤ、レミにもアイスは作れるですか?」


レミは皆を手伝おうとしているみたいだけど、難しいんじゃないかな。


「ええと、かき混ぜるのに風魔法を使ったり、冷やすのにも魔法を使っているみたいだから大変かもしれないよ。」


サクヤは何と言ってレミに諦めさせるか困っているようだ。レミは魔法が使えないからね。

量が多いから魔法を使わないとかなり大変だよ。

それを聞いてレミも諦めたようだ。


「レミも作れれば、いつでも食べられると思ったのです。残念なのです。」


そう言って、レミはションボリしている。

そうか、いつでも食べたかったのか。俺はレミを撫でながら


「いつでも材料があれば作れるから大丈夫だよ。」


そう言ってレミを慰める。


「ホントですか? ありがとなのです。」


レミは楽しそうに皆の作業を見ている。

アイスが食べられると分かって機嫌が直ったようだ。


今日は一日休養日だ。船の出航は明日の朝だから、それまではゆっくりしていられる。

モデナ島までは一日かからずに渡ることができるけど、島に上陸した後馬車で十日くらいかけて封印のところに移動するらしい。封印は島の西側にあるので、東側に上陸してから陸の上を移動することになる。モデナ島って結構大きいね。


ただ、上陸してからが大変かもしれない。魔物が狂暴化しているようなので魔物に襲われるとやっかいだ。危ないから子供たちはミズリグ村で留守番してもらおうかと思ったけど、サクヤを始め皆の反対に押し切られてしまった。

曰く、ガルーシャの森の方が危ないそうだ。


「そうですな、お嬢さん方の年齢からすれば心配ではありますが、ガルーシャの森ではオークまで相手にしておりました。ある程度自衛はできるので我々の傍にいれば大丈夫かとは思います。」


モーリスもそれほど強く子供たちを置いて行こうとは言わなかった。

でもね、本人たちがいくら強くてもまだ子供なんだ。確かに自衛できるようになってほしいとは思う。魔物だけでなく、悪意を持って近づく者にも対処しないといけないと思うからね。

だからといって、積極的に危険な事には近づけたいとも思わない。あの子たちを連れて行く以上、できるだけ安全を確保していかないといけない。


その子供たちは、バランやアナベラたちと遊んでいる。やっぱり同年代の子たちと遊んでいるのがいいよね。

このスキに、俺は村を回って旅に必要なものを買い集める。食料以外にも武器やロープなど考えられるものを揃えていく。サフィは武器屋で弓を見ていた。エルフってやっぱり弓のイメージがあるよね。でもサフィが弓を使っている所を見たことがない。


「弓よりも魔法で対処した方がいい魔物に遭遇しているからよ。」


決して弓が不得意なわけではないと力説している。たしかにフォレストウルフとかビッグボアの毛皮には矢が立たないと思う。まぁ、機会があればサフィの弓が見られるだろう。


牧場や港など、村の中を一通り見て回ると日が傾いているのがわかった。そろそろ夕食の準備をしないといけない。

借りている村長宅の離れに戻り、夕食の準備を始めていると子供たちが帰ってきた。


「お兄ちゃん、お腹がすいたのです。今日は何ですか?」


今日はフライにしようか。港でいいエビを見つけたんだよね。それに、ビッグボアのカツも作ってみよう。


「楽しみにしてるのです!」


レミたちはサフィに促されて、シャワーを浴びに行った。まだ暑いからすぐ汗ダクになる。サッパリしてから食事する方がいいよね。


夕食に出したエビ、イカのフライやビッグボアのカツは大好評だった。特にタルタルソースが効いたみたいだ。

港で食材を探していたら、船で運ばれてきた果物を見つけた。その中にレモンみたいな物があったんだよね。これの搾り汁や卵と油を撹拌して、胡椒などで味を調える。

それから村で作られていたピクルスに似た酢漬けのキュウリもどきを、みじんにして混ぜるとタルタルソースの出来上がりだ。


「ほう、これはすばらしい味ですな。シンジ殿といると新しい味に出会えて楽しいですな。」


モーリスがエビフライにタルタルソースをつけて味わっている。気に入ってくれたみたいでよかったよ。


「ほんと、よくこんなに美味しい物を知っているわね。」


サフィが感心している。


「あの材料でこんな味になるなんて不思議です。」


サクヤも驚いている。でも作り方はわかったから、いつでも作れるよね。ピクルスモドキや野菜を入れていない、なんちゃってマヨネーズも作ってある。これはサラダにかけておいた。そちらも好評だ。


「今日のサラダはおいしいのです。サクヤ、この白いのは何ですか?」


いつもは肉を頬張っているレミがサラダを美味しそうに食べている。


「それはマヨネーズというソースだそうです。」


子供たちはカツを気に入ってくれたみたいだけど、このマヨネーズもうけたようだ。レミの隣でニナがマヨネーズ付きサラダをシャクシャク食べている。

よかったよ、新しい味を気に入ってくれて。


「お兄のごはんはサイコーなの。」


リーシャも嬉しそうに食べている。

やっぱり食事は皆で食べると楽しいよね。



翌日、俺たちはミズリグ村の港から船に乗ってモデナ島を目指す。

モデナ島へは朝出発して、夕方には着くらしい。ウテナ湖を渡ったように何日もかからないでよかったよ。港にはダグランさんやバランたちが見送りに来てくれた。


「これからプリンとアイスを王都に売り込んできます。」


ダグランさんはやる気満点な顔でそう言ってくる。

海で捕れた魚介類と一緒に王都で売りさばくそうだ。そのために容量の大きいアイテムボックスというか袋をいくつか作ってあげた。これは時間が経過しないやつなので、冷たいものでもそのまま保存される。そして容量は屋敷一つ分くらいにしておいた。


「あのアイテム袋があれば、大量にプリンやアイスを運べます。ホントに助かります。」


ダグランさんの一言に反応した人がいる。


「ちょっと、待って。アイテム袋って何? まさかあれを作ったんじゃないでしょうね!」


いや、あの、冷たいものをそのまま保存しないといけないからねぇ。


「あれほど人前に出しちゃダメだって言ったのに!」


サフィに怒られた。

美人が怒るとハクが付きすぎて怖いよね。


「なんですってぇ!」


ヤバい。本格的に怒ってる。

ちゃんと氷も入れて冷やしているように見せるよう言ってあるから大丈夫だよ。


「何が大丈夫よ。後で困っても知らないわよ。」


はい、注意します。


「どうだかわからないわね、シンジは。」


どうやら収まってくれたようだ。よかったよ。

あのままモデナ島まで怒られっ放しだったら、大変なことになるところだった。気を付けないといけない。


出航の時間になり、船が港から離れる。子供たちはお互いに名前を呼び合いながら手を振っている。モデナ島の封印に行った後、ミズリグ村には戻らずに王都ガインへ向かうことになるからだ。


モデナ島の次に予定している封印は、ガイン王国のバンデミル半島にある封印だ。バンデミル半島は王都ガインのずっと西にあり、王都から出ている船で行くのが一番早いらしい。なのでミズリグ村には戻らずに、王都からバンデミル半島を目指すことになった。

転移があるからいつでもこれるけど、あまり転移を使うのも良くないみたいだからミズリグ村に来る機会はそれほど多くないだろう。

だから子供たちは名残を惜しんでいる。


船は風魔法で急速に港から離れていく。自然の風だけでなく、魔法使いが同乗し風魔法で補助するそうだ。

だからなのか、割と小回りが利いている感じがする。


それにしても初めての海でワクワクするね。前世でも船に乗って海に出たことはないから、とても楽しみだ。

湖と違って揺れるのかな。そう言えば湖では船酔いしなかったな。海でも大丈夫だよね。


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