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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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6 森での狩り

森で出会った三人娘と一緒に、森を抜けるために南に向かって歩いている。

さきほどまで元気に先頭きって歩いていたレミが、振り返り様に俺に向かって走って来て声をかけてきた。


「お兄ちゃん、お腹がすいたのです。何か食べないのですか?」


確かにずっと歩き詰めで、そろそろ俺も腹が減ってきたな、と思っていた。


「それじゃあ、ご飯にしようか。」


「獲物、探す~?」


何やらやる気になったニナが、顔を空に向けて鼻を「くんくん」鳴らしていた。


「あっちに何かいる。」


ニナが右手を挙げて指をさすと走り出した。

俺はニナが指さした方に向けて魔力を伸ばし、気配を探ってみる。

何か生き物がいる強い気配が感じられた。


「サクヤはここで待っていてくれるかい。薪を集めていてくれるとうれしいかな。」


俺は周囲に魔力を伸ばして、他の生き物の気配がないことを確認してからサクヤに一声かけた。


「わかりました。それでは、この辺で準備しています。」


とサクヤは答えて薪を集め出した。



俺はさっきから感じている強い気配を確認し、ニナを追いかけて走る。後ろからレミも追いかけてくる。

ニナの後ろ姿を見つけて近寄ってみると、ニナが木の影から前方を伺っていた。

ニナの隣に並び前を見ると、1メートルくらいの白い大きなものが見えた。

声を潜めて、ニナに聞いてみる。


「あれはなんだい?」


「……一角兎。」


「食べられるの?」


「……頬っぺたが落ちる。でも、狂暴。」


どうやら相当美味しいらしいが、狂暴で捕まえるのが大変なようだ。


どうやって捕まえるのが正解なのか分からないが、首を落とせば大丈夫だろうと思い風魔法を飛ばしてみる。

手に魔力を集めたとたんに一角兎はこちらに向き直って襲い掛かってこようとしていた。へぇ、魔力に反応するんだ、と思いながらすぐさま魔法を飛ばした。次の瞬間、飛び上がろうとした一角兎の首が落ちた。

俺とニナは、一角兎に駆け寄り、動かない姿を見ていると、


「……血抜きしないとダメ。」


ニナが俺の顔を見ながら言うので、一角兎の足を持って逆さまに持ち上げる。

どこかちょうどいい高さの枝がないかニナに探してもらい、一角兎の両足で枝を挟み、落ちていた蔦で足を縛る。

真下の地面は掘っておき、後で埋められるようにしておく。


そこまで作業が進むと、先ほど一角兎を仕留めたあたりでレミの声がする。


「すごい、おっかない顔なのです。」


どうやら風魔法で切り落とした首を見つけたらしい。


「……角はお金」


ニナが呟くのでレミのところに行くと、レミが一角兎の頭から角を取ろうと奮戦していた。


「こいつ、死んでも角は渡さないみたいなのです。」


「どれ貸してごらん。」


レミから頭を受け取り、地面にたてる。レミに離れるように言って腰の刀、叢雲に手をかける。

前世で刀なんて使ったことはないけど、神様から貰った体で剣聖だしいけるんじゃね、と思いながら叢雲を抜き、一気に角の根元を切って納刀する。

手ごたえが薄く、切れなかったのかなと恥ずかしくなってくると、角が根元からポロッと落ちた。


「おお、お兄ちゃんかっこいいのです。」


とレミが言いながら拍手してくれた。内心、角を切り落とせてほっとしながら角を拾う。


「ニナ、これでいいのかい。」


俺がそう尋ねると、


「……完璧。」


と言って、ニナが親指を立てる。この世界でもそのジェスチャーはありなんだなと思いながら、拾った角をニナに渡す。

ニナは角を受け取ろうと手を出してきたが、俺の後ろの方に視線を移した。


「何かいるのかい。」


俺はそう言いながら魔力を伸ばし気配を探る。

さっきの一角兎よりも大きな気配がこちらに近づいてきていた。


「うん。何かこちらに向かっているようだね。血の匂いにでも誘われたのかな。」


「……たぶん。」


「他にも何かいるですか。」


ニナは何かがこちらに来ていることをわかっているようだが、レミはあまりわかっていないみたいだ。

それにしても、獣人って結構気配に敏感なんだな。俺は気配察知がなかったら気づけないな。

そう思いながら、角をニナに渡して大きな気配に向かった。


大きな気配の元は、大きな狼だった。体長は5メートルくらいある。

あれって狼なのだろうか。幌馬車のところにいた狼しかり、この世界の狼は随分と大きいんだね。


「……フォレストウルフ。」


ニナが一言呟いた。


「レミたちは、あれに襲われたです。でもレミたちは馬車の中にいたので大丈夫だったのです。」


そう言うレミの顔は血の気が引いているようで青白かった。


「う~ん。強いのかい。」


俺は声を低くして、ニナに尋ねる。

幌馬車のところにいた狼は、魔法で倒すことができた。

この世界の人たちにとってあの大きさの狼は普通の獣と危険度が変わらないのか気になったので、強さを聞いてみた。


「……」


ニナは俺の顔をじっと見て、黙って頷いた。


そうしているうちにフォレストウルフはひと飛びに飛びかかれるくらい近くまで寄ってきた。

いやぁ、大きい。レミの体より大きそうな顔の生き物が生きているって不思議だ。

口を開いて涎を垂らしているあたり、俺たちは獲物認定されているようだ。

なんていうか、心外だね。そんなに簡単に獲物になってあげる気はないよ。


俺はちょっと強めの風の塊をフォレストウルフの顎にぶつけてやる。フォレストウルフは顔を上にして、縦に回転しながら後ろに吹っ飛んだ。

自分でやったことながら、あの巨体が吹き飛んだことに驚いた。

フォレストウルフは吹き飛んだ先で体を起こすと頭を振っている。軽く脳震盪でも起こしたのだろうか。

だとしたらチャンスだ。


俺はフォレストウルフに駆け寄りながら細い氷の槍を何本も作る。後でフォレストウルフから引き抜きたくないから氷の槍にした。融けてなくなると思ったのだ。

氷の槍も普通のものではなく、幌馬車のところの狼のときと同じく、魔力を込めて固く、鋭くしていく。走り寄る俺に気が付いてフォレストウルフが顔を上げたとき、用意していた氷の槍をフォレストウルフの顔面に叩きつける。


氷の槍は、フォレストウルフの目や口に突き刺さり血を振りまく。

それぞれの槍は深く刺さり、何本かの槍先が後ろに飛び出ているのが見えた。

フォレストウルフは、腹に響くような音と共に地面に倒れ、動かなくなった。


「やったのです。お兄ちゃんがフォレストウルフを倒したのです。」


静かになった森にレミの喜びの声が響いた。

ニナはその隣で呆然としている。ニナのあんな顔は初めて見たなぁ、などと思いながら俺はフォレストウルフに近づいてアイテムボックスに収納した。

それから血抜きをしていた一角兎も収納して、サクヤに任せた竈が気になったのでそちらに移動する。


サクヤは石を集めて竈を作り、魔法で薪に火をつけようとしているところだった。


「サクヤ、獲物だよ。」


俺はそう言うとアイテムボックスから一角兎を取り出し、サクヤに見せた。

サクヤは驚いて目を見開き


「これはまた大きな兎ですね。…ひょっとして、一角兎ですか?」


そう訊ねてきた。


「うん、そうらしいよ。これだけ大きいと食いでがあっていいよね。」


そう答えてみたのだが、サクヤが気にしているのはそうではなかったようだ。


「そうではなくて、こんな危険な魔物を倒したのですか! ……でも、シンジ様はフォレストウルフを倒しているんですよね。今さらでしたか。」


サクヤは驚いていたようだけど、すぐに諦め顔になっていった。


「そうだけど、こいつは危険なのかい?」


俺は後ろを振り返って、レミとニナに聞いてみる。


「ちょっと大きくて強そうだったのです。」


「危険~」


レミはよくわかっていないようだったが、ニナはしっかり認識していたようだ。

それにしても、サクヤの様子を見ると危険なんだなと考え直し、三人娘に害が及ばないよう気を付けないといけないと思った。



サクヤたちと料理を食べて後片付けをすると、あとは寝るだけである。

俺は火の番をするために起きていたが、三人娘は寄り添いながら木の根元で寝ている。


こちらの季節はよくわからないが、夜でも暖かくて過ごしやすい。それでも明け方冷え込んだりすると心配だから、今日仕留めた一角兎の毛皮が毛布替わりにならないかといろいろ試している。


寝る前にサクヤに魔物の毛皮が使えないか聞いてみたら、使えるが乾かしたり鞣したりするのに時間がかかると言われた。ふと一角兎だけでなく、フォレストウルフの毛皮も使えるといいのにと漏らしたら、サクヤは血相を変えていた。やはりフォレストウルフは別格の魔物で、出会ったら諦めるしかないと相当恐れられているようだった。そのフォレストウルフを仕留める俺の魔法などは、この世界ではかなり強力なもののようだ。力加減を間違うと面倒なことになるかもしれない。


まぁ、あの子たちを守るためには必要な力だなと思いながら手元の毛皮を魔法で乾燥させ鞣していく。

前世ではこんなことはできなかったし知識もなかった。でも今は、やりたいことを念じると頭の中にやり方や使うべき魔法などが浮かんでくる。これがスキルの恩恵なのかとありがたく思い、神様に感謝する。


毛皮を鞣し終わると、立ち上がってその毛皮を三人娘にかけてやった。

これで少々冷え込んでも大丈夫だろうと思い、さきほど毛皮を鞣していたところに戻る。


俺は地面に落ちている石を拾い魔法で削っていく。

魔物がいるこの森では、無手では厳しい。そう思い三人娘に簡単な武器を持たせようと考えた。手元には鉄などないので、石でナイフ代わりにならないかと思ったのである。

ないよりはマシだろうと削り続ける。


ナイフを作り終えたら俺も少し眠ろう。周りには魔法で結界を張ったのでたぶん大丈夫だろう。

森の夜は静かに更けていった。


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