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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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65 寄り道のミズリグ村

ミズールの森に沿って馬車を走らせる。

ここを走るのはバランとアナベラに出会って以来だ。一度通った道なので、大体の距離感が分かる。もう少し行けば火の見櫓が見えるハズだ。


馬車を走らせ、草原を進んで行くと向こうに火の見櫓が見える。ミズリグ村はすぐそこだ。

それにしても、前回来たときよりも嫌な感じが強い気がする。何かが体に纏わりついてくる。やっぱり封印が弱まっているのかな。そんなことを思いながら馬車を進めていく。

ミズリグ村の外側を囲んでいる柵までたどり着き、柵が途切れた村の入口へと進むと、見覚えのある門番さんに挨拶する。


「こんにちわ。」


俺が挨拶すると、向こうも気が付いたようだ。


「おお、久しぶり。元気だったかい。」


挨拶を返してくれる。


「今日はどうしたんだい。」


「ちょっとモデナ島に行きたくてこちらを尋ねました。」


「そうかい、モデナ島かぁ。…まぁ、ゆっくりしていきな。」


門番のおじさんはそう言って入口を通してくれた。モデナ島と聞いて、何か含みがありそうだったけど大丈夫かな。

さて前回来た時は村長さん家に泊めてもらったけど、今回は宿を探さないとね。

そう思ってキョロキョロと宿を探していると


「ああ、シンジ兄ちゃん!」


バランがこちらに向かって走ってきた。


「バラン、久しぶりだね。元気そうでよかった。」


「バランなのです!」


「ニャア、遊ぶ」


「アナベラはどこなの。」


俺がバランに声をかけると、馬車の中から子供たちが飛び出してきた。馬車の中ではサフィとサクヤが失敗した、って顔をしている。子供たちを止められなかったからだろう。

子供たちがバランと燥いでいると、道の向こうからダグランさんがやってきた。


「おお、お久しぶりです。」


俺たちに声をかけてくれる。


「こんにちわ。」


「今日はどうしたのですか?」


「モデナ島に行きたいのですが、その前に宿を探してました。」


「…それでしたらうちの離れを使ってください。子供たちも喜びますので。」


ダグランさんと挨拶を交わしていたら、家に招待された。以前使わせてもらった離れを使ってくれと言ってくれる。

ありがたいけど、いいのかな。あまり甘えすぎるのも気が引ける。


「いいんじゃないの。もし気が咎めるなら、また何か作ってあげればいいじゃない。」


サフィがそんなことを言ってくる。そうか、前回の天ぷらのように何か作ってあげればいいか。そう言えばプリンもアイスもここで作れるね。子供たちに食べさせてあげよう。

そこまで考えて、ダグランさんのお世話になることにした。


ダグランさんに案内された離れは、前回使わせていただいたときのままできれいにされていた。俺たちが離れに通されるとアナベラが顔を出してきた。早速子供たちは庭で一緒に遊び始める。


「どうぞ気兼ねなくお使いください。」


ダグランさんは離れに俺たちを通した後、そう言って腰を上げようとするのでちょっと待ってもらった。


「モデナ島に渡りたいのですが、船は出ていますか。」


「モデナ島へですか。……それはありますが、どうして島に渡るのかお伺いしてもよろしいですか?」


モデナ島へ行くのはマズいのかな。ダグランさんはあまりいい顔をしない。


「島で何かあったのですか?」


「ええ。島の魔物がいつになく狂暴になっていると聞きました。それに島の近くの漁場では魚が獲れなくなったのです。何かよくないことが起きているのではと、村の者たちも食料の販売以外では近づかないようにしています。」


どうやら封印の影響らしきものが出ているみたいだ。

ここでも魚が獲れなくなっているんだね。でも魔物が狂暴化してるっていうのは瘴気のせいなのかな。


「ちょっと用事がありまして、どうしても行かないといけないんですよ。」


島に行く理由は言わないでおこう。余計な心配はかけたくない。


「…そうですか。島には一日おきにうちの村から食料を売りに行っているんです。今日はもう間に合いませんけど、明後日の朝であれば島までお連れできると思います。」


そうダグランさんから説明された。

モデナ島は結構大きな島らしいので、上陸した後は馬車を使うことになるそうだ。モーリスがその辺を気にしてダグランさんに尋ねる。


「その船には馬を乗せることが可能でしょうかな? 向こうに行ってから馬車を使うことになると思いますので。」


「馬ですか。それなら馬を乗せられる船で行ってもらいましょうか。タオに行く船と調整できないか聞いてみましょう。」


そう言ってダグランさんは離れから出て行った。

ミズリグ村と獣王国の港町タオの間では、馬車も運べる大きな船で行き来している。その船をモデナ島行きに使えないか調整してくれるらしい。面倒を掛けてしまい申し訳ないと思っていると、


「あなたは封印を浄化するつもりなのでしょう。だったらそんなに気にしなくていいと思うわ。」


「そうですぞ。魔物が狂暴化したり魚が獲れなくなったりと被害が出ているのです。それを鎮めに行くのですから、それほど気兼ねせずともよろしいでしょう。」


サフィとモーリスがそう言ってくれる。まぁ、その通りなんだけど、だからって「良きに計らえ」とはならないよ。ちょっとモヤモヤしてきたので、プリンとアイスを作ることにした。気を紛らわせるために、牧場までのんびり歩いて材料を仕入れるようかね。


「それなら私も行くわ。」


そう言ってサフィも牧場までついて来てくれることになった。

前回、ダグランさんに連れてきてもらった牧場まで歩いて行き、牛乳や卵などを買い付ける。ついでにバターやチーズもだ。

それにしても牧場の人たちの顔色が冴えない。気になったので聞いてみると、


「最近牛の乳の出が悪くなってきたんだよ。鶏も以前ほど卵を産まなくなったし。」


これも封印の影響なのかな。


「そうね、封印というより瘴気のせいじゃないかしら。」


小声でサフィが教えてくれる。

俺たちは牧場の人たちにお礼を言って、村長さん家の離れに戻ってきた。

でも瘴気のせいで牛乳や卵に影響が出るなんて、これは本気で浄化しないといけないね。


さっそくキッチンに籠ってプリンとアイスを作る。今日は材料を多めに手に入れたので、プリンとアイスもたくさん作る。まだまだ暑い日が続いているから、冷たい食べ物はたくさんあってもいい。でも食べ過ぎには注意だね。


プリンとアイス作りがひと段落すると、ダグランさんがやってきた。馬を乗せてモデナ島に行く船が、明後日の朝出航できるそうだ。なのでありがたく乗せてもらうことにする。助かるね、まさか双胴船で行くわけにもいかないから。アクエスさんに頼むのも気が引けるし。

ダグランさんにお礼を言って、離れに上がってもらう。せっかくだから、子供たちと一緒に冷たいものでも食べよう。


庭で遊んでいた子供たちも呼んで家に上げる。もちろんバランとアナベラもだ。子供たちは汗だくで遊んでいたようなので、タオルで汗を拭いてあげる。皆でテーブルについたところでアイスを出した。


「やったあ! なのです。」


「…衝撃、第二章」


「アイスなの! つめたいの!」


「冷たくておいしい。こんなおいしいのが食べられるの?」


「そうなのです! お兄ちゃんはおいしいものをいっぱい作ってくれるのです。」


子供たちは大はしゃぎで、アナベラは戸惑っているようだ。


「これは冷たくておいしいですね。このような食べ物があるんですか。」


ダグランさんは感心しきりだ。そうだ、このレシピを教えてあげようか。この村の特産品で作れるものだしいいよね。


「お待ちください、シンジ殿。お教えするのはいいことと思いますが、契約した方がよろしいと思います。」


ええ、面倒はいらないよ。


「そうではないのです。この村で手に入る材料を使って作るプリンやアイスを、この村の特産品として売り出すのです。この村は船でタオや王都ガインに行き来できるのです。そちらに売ることも可能でしょう。そして、その売り上げの一部はシンジ殿が手にするべきものです。」


それなら獣王国にも持って行って欲しいね。絶対ミネア王女が食べたがるよ。

ああ、でもプリンやアイスは冷やしておかないとダメになっちゃうけど。


「大丈夫です。そのような魔道具であれば、少々値は張りますが手に入ります。」


なんか大事になりそうで面倒なんだけど。


「それならば、私が代わりにその辺のことをダグラン殿と詰めましょう。いかがですか、ダグラン殿」


何か話が大きくなってるけど、大丈夫かな。ダグランさんも驚いてるよ。


「……なるほど、この冷たいお菓子はこの村で手に入る材料で作られるのですか。これを王都やタオに持って行けば売れるでしょうね。ですが、物を冷やす魔道具は高いのではないですか。」


「そこは大丈夫です。シンジ殿が用意してくれますぞ。」


えっ、俺なの? まぁ、袋でよければ作れなくはないけどね。

モーリスは随分とテンションが上がってるみたいだけど、大丈夫かな。ダグランさんと一緒に母屋へ行っちゃったよ。

いつの間にかプリンやアイスを売る話になってるけど、俺異世界でアイス屋さん始めるの?


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