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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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64 転移は楽ちん

人魚の宮殿でおもてなしを受けていると、アクエスさんがやってきた。


「この度は本当にありがとうございました。おかげ様でこの子たちもこれまで通り暮らしていけます。」


アクエスさんはロアーナさんたちを見ながらそう言ってくる。

そうか、魚が獲れなくなったらここに住めなくなったかもしれないからね。


「これから先、もしも海を渡るときは一声かけてください。あなた様がお持ちの船でお運びいたします。」


どういうことです? ひょっとして双胴船をご存じですか。


「おもしろい船ですね。魚を釣るのに海に浮かべていましたよね。」


楽しそうにアクエスさんは笑っている。


「あなたがリーシャね。以前あなたのお母様から子供が生まれたと聞いていましたが、こんなに大きくなっていたのですね。」


リーシャを撫でながらアクエスさんが言う。


「それにしても、リルーシャは抜け目がないのね。私にも子供がいれば………」


アクエスさんが何か不穏なことを呟いているけど聞こえない。そんなヤバいことを言わないでほしい。俺は託児所じゃないですから。

アクエスさんの呟きは放っておいて、人魚の島では問題ないようだ。真っ白になった封印は経過観察してもらうとして、次はモデナ島の封印だ。ミズリグ村では魚が獲れないということはなかったので、ウラル半島の封印のように瘴気を出しているわけじゃないかもしれない。

まぁ、行ってみないとわからないけどね。


今日は人魚の宮殿でお泊りさせてもらい、明日にはモデナ島に向かうことになる。


「モデナ島までどうやって行くの? 馬車? 船?」


サフィはどうやってモデナ島まで行くのか気になるようだ。それというのも、この人魚の島からモデナ島まですごく遠いからだ。それこそ馬車で何ヶ月もかかる距離らしい。

なので今回はミズリグ村まで転移で行こうと思っている。アクエスさんに双胴船で送ってもらう方法もあるけど、転移だったら一瞬だからね。それにミズリグ村まで行けば船でモデナ島へ渡れるから、割と楽に行けると思う。


「ミズリグ村に行くのですか? アナベラたちに会えるですね。」


「アナベラに会えるの。すぐ行くの!」


サフィとの話を聞いていたのか、レミとリーシャが行く気満点だ。

まぁ、何にしても出発は明日だ。



人魚の宮殿でおもてなしを受けた翌日、俺たちは湖の岸辺にあった大きな岩のところに戻ってきた。アクエスさんやロアーナさんから海の幸をたくさんお土産に持たされた。併せて醤油もおねだりしてみたら、壺を用意してくれた。ありがたいね。これで料理の幅が変わるよ。

お土産をもらってから皆に見送られて地上に戻ってきた。戻ってきた場所があの大岩だ。


さて、これからモデナ島に向かう前に皆と相談かな。

テーブルと椅子を出して休憩の準備をする。俺の考えていることが分かったのか、モーリスはお茶を用意してくれる。


「次はモデナ島に向かうってことでいいんだよね。」


「そうね、その方がいいと思うわ。モデナ島からバンデミル半島も近いしね。西側の封印を先に回った方がいいと思うわ。」


「それなら、ミズリグ村まで転移で行こうと思う。ミズリグ村からモデナ島は近いんでしょ。」


「え、いま何て言ったの? 転移って言った?」


「そう、転移。前に言ったでしょ、一度行ったところなら行けるって。」


「そうだけど、大丈夫なの?」


サフィは何を心配しているんだろう。


「…転移なんて大丈夫なの? 無事に向こうに行けるのかしら?」


どうやら転移魔法自体を疑っているらしい。

一度遺失したものらしいから、正常に機能するのか心配だってことかな。それなら念のために転移できるか確認してみよう。何せこの世界に来たときに最初に確認して以来、使っていないからね。

その事をサフィに告げて試しにミズリグ村まで俺一人で転移してみる。


俺は頭の中でバランやアナベラに出会った場所のあたりを思い浮かべる。森の中ではなく、出会った場所から森の外に出た辺りだ。その場所に移動することをイメージしていると、急に体がフワッと浮いた気がした。すると目の前に森と草原が広がっていた。

そうだよ、ミズリグ村に行く途中の風景だ。どうやら転移は成功のようだ。今度は人魚の島の大岩を思い浮かべる。さっきまで俺がいた場所だ。しっかりイメージすると、また身体が浮き上がるように感じ、人魚の島に戻ってきた。

すごいね。視認できる範囲じゃなくても転移できるよ。


「どうなの、シンジ。一度消えたけど、ミズリグ村まで行けたの?」


「ああ、そうだね。思った通りのところに行けたよ。」


「…すごいわね。ホントに転移できるんだ。それじゃあ、皆で行ってみる?」


「いや、その前に馬たちも連れて行けるか確認したい。」


人だと大きさ的に大丈夫だと思えるんだけど、馬みたいに大きな動物と一緒に転移できるのか、少々不安がある。だからドランと一緒に転移できるかどうか試してみたい。

そう思って俺はドランの隣に立ち、もう一度ミズリグ村近くの森の外をイメージする。すると一瞬でさっき見た風景に戻ってきた。隣にはドランがいる。ドランは俺がいるからか騒ぎはしないけど、しきりに辺りを見回している。そりゃあ急に景色が変われば驚くよね。「ごめん、ごめん」と謝りながら首を撫でてあげる。ドランは落ち着いたようだ。ドランの様子を見ながら、もう一度人魚の島の大岩に向かって転移する。今回も問題なくドランと一緒に戻ってきた。

これなら大丈夫だね。


「大丈夫そうだ。それじゃあ、皆でミズリグ村へ行こうか。」


「ちょっと待って。あなた魔力は大丈夫なの?」


えっ、何? 何かマズいの?


「あなたねぇ、合計四回も転移したのよ。しかもミズリグ村まで。それだと相当魔力を使っていると思うんだけど。」


そうなの? あまり魔力が減った感じはしないけど。


「やっぱりオカシイわよ。これだけ魔法を使って魔力が減らないなんて。」


そうなのかな。モーリスを見ると、彼もちょっと呆れているようだ。


「今では使い手が少ない時空魔法ですが、他の魔法と比べるとかなり魔力の消費が大きいのです。魔力消費が大きいため時空魔法の使い手がいなくなったと言われるくらいなのです。」


そうだったんだ。

でも魔力の消費量とか言われてもピンとこないんだよね。減ったとか増えたとか全く感じないよ。ちなみに魔力が減るとどうなるの?


「そうですな。めまいや脱力感に襲われ、それ以上使うと気を失うこともありますな。」


それって、大丈夫なの?


「気を失うくらい魔力を使っても、一晩休めば魔力は元に戻りますし、体も問題ありません。」


そうなんだ。気を失うことがあるんだ。でも、めまいや脱力感は全く感じていないから大丈夫じゃないかな。


「ほんと、シンジは常識外よね。」


失礼な、何てことを言うのかな。俺ほど常識的平均な奴はいないと思うけど。


「いいえ、いろいろと突き抜けていると思うわ。」


…もういいや。

子供たちもジレてきてるから、早くミズリグ村に行こう。


「そう言えば、関所を通らずにミズリグ村に行ったら、不法入国にならないの?」


今さらながら、サフィがまっとうなことを言う。


「大丈夫でしょう。関所を通らなければ問題になりますまい。」


そうか、行きも帰りも関所を通らなければ問題にならないよね。ってそうなの? そんな安直でいいの。


「よろしいでしょう。そのことに気付く役人などおりませんよ。」


シレッとモーリスが言う。

そんなものなのかな。まぁ、それでいいならミズリグ村に行こうか。俺は皆の中心に移動して、転移を使う。

一瞬で景色が変わり、人魚の島からミズリグ村近くまで移動してしまった。


「これはすばらしいですな。一瞬でここまで来てしまうとは…」


馬たちも含めて全員転移できたことを確認して俺は馬車を出した。

子供たちは目を見張っていたけど、すぐにミズリグ村近くの草原だと気付いたようだ。


「もうここまで来たのです? すごいのです。これなら部落にもすぐ帰れるのです!」


「……いっしゅんでひとっ飛び?」


「アナベラと遊ぶの!」


一瞬で移動できたことに、子供たちは燥いでいる。

でもそうか、レミは部落のことが気になるようだ。優しい子だからね。

折を見て部落に行くことを考えないといけないかな。


子供たちの興奮が収まってきたところでいったんミズリグ村に行き、船を手配してからモデナ島に向かうことになる。船がすぐ手配できるといいんだけどね。

そんなことを考えながら馬車を進める。久しぶりのミズリグ村だ。バランやアナベラに会えるかな、元気だといいけど。


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