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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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56 王都散策

昨日は王様の前で緊張したけど、なんか気さくな感じの王様でよかった。礼儀がなってないとか言われなかったし。


武闘会は明後日開かれるらしい。だから今日と明日は自由時間になった。

早速子供たちを連れて街に繰り出そうと思ったけど、サフィとモーリスは今日も王様と話すことがあるらしい。俺一人だと少々心細いので、昨日のサフィと知り合いのメイドさんに案内をお願いした。と言うか、サフィがお願いしてた。


「シシリア、我がいない間この子たちと彼を頼む。」


「はい、お任せください。サフィーネ様。」


メイドさんはシシリアさんと言うらしい。白い虎耳のお姉さんだ。

俺たちは街中を見て回れないかシシリアさんに聞いてみた。そしたらいつもより人出は多いけど、競技場とかギルドなどの特定の場所にいかなければ大丈夫なようだ。


それならということで、まず本屋さんをお願いした。

うちの子たちはトランプなんかのゲームをしているからか、割と数字には強いけど文字がところどころ読めないみたいだ。だから絵本とかで勉強できないかと思ってる。


「本屋でしたらこちらです。」


シシリアさんの案内で街中を歩く。人が多いのでリーシャは抱えていくことにした。


「リーシャはズルいのです!」


レミがちょっとお冠なので、手を繋いであげる。

ほんとは手を空けておきたいけど、しばらく手を繋いでいれば機嫌も治るだろう。


「王都で一番大きい本屋はこちらです。」


シシリアさんがそう言って案内してくれたのは、王都のメインストリートにある大きな石造りの建物だ。重厚で随分と立派な建物である。早速中に入って絵本を探してみる。ついでにこの世界の情報誌とか地図とかも探してみる。

絵本らしきものが並んでいる棚にレミとニナを連れて行き、脇で本棚を整理していたお姉さんに聞いてみる。なんと兎耳のお姉さんである。兎耳のお姉さんが本棚の整理をしていた。大事なことなので二度言ってみた。


「あのぉ、文字を覚えるのによさそうな絵本とかありますか?」


「文字ですか? …それならこちらなんかいかがでしょうか。」


キチンと革で装丁されている立派な本を手渡された。これって俺が思っている絵本と違うんだけど。本を開いてみるとこの世界の文字の五十音表みたいなものから始まり、簡単な物語などが絵付きで描かれている。確かに絵本なんだけど、ものすごく格調高い感じがする。兎耳のお姉さんに話を聞くと、こうした本などを使って文字を勉強しようというのは貴族が多いので、どうしても革張りの格調高い本になってしまうようだ。


まぁ、絵本なんだからいいかと思い購入する。他にも俺が気になる本を探したり、絵だけを見てレミとニナが気に入った本を選んだりで、結構な量を購入した。あらかじめ本は高いと聞いていたからいいけど、銀貨何百枚もかかるとさすがに吃驚だ。


そう言えば大陸の西側と東側で通貨が違うんだ。西側での金貨に相当するものが、獣王国などの東側には存在しない。金貨の上に相当する赤金貨なるものは存在するけど、一般的に市中での買い物では使われないそうだ。だから銀貨を使うんだけど、嵩張ってしょうがない。

でも勉強に役立つものだからね。レミたちにはちゃんと文字を覚えてほしいし。


「こんなに本を買ってもよろしかったのですか? 随分高かったようですけど。」


サクヤが値段に驚いて聞いてくる。


「皆で勉強するのに必要かなと思ってね。文字が読めると楽しいでしょ。」


「…そうですね。本が読めると楽しいです。まるで世界が広がったように感じます。」


サクヤが笑顔で答えてくる。サクヤはだいたい読めるみたいだけど、たまに意味の分からない言葉をサフィに尋ねたりしている。皆で勉強して、考える力を身に付けてくれるといいな。


ホントはギルドにも行きたかったけど、今は混んでいるらしいから諦めようかと思っていたら、シシリアさんに尋ねられた。


「ギルドにはどのようなご用事ですか?」


う~ん、せっかくだから言ってみるか。


「実はこれまでの旅で倒した魔物が手元にあるので、それらを引き取ってもらえないかなと思ったのです。」


「それでしたら、お城でもお引き取りできますよ。ギルドカードの更新もできますし、ギルドと変わりありません。」


冒険者ギルド王城出張所みたいなのがあるみたいだ。

それだったら後でお願いしようかな。ちょっとモーリスと、どの魔物を渡すか相談しないといけない。あまり騒がれるようなことはしたくないからね。



本屋の後は食べ物だ。

シシリアさんにお願いして、王都の市場通りに来ている。朝早く来ればまた違う物があるらしいけど、そんなに特別な物は狙っていない。すぐ食べられる美味しい物とか、調味料が主な目的だ。肉類や魚介類は、まだしこたまアイテムボックスに入っているからね。

あ、卵や牛乳もあるといいな。


通りには屋台なんかも出ている。子供たちは美味しそうな匂いに反応して、そちらに引き寄せられていく。

リーシャも俺の腕の中でワタワタしている。


「お兄、あっちなの! あっちから天国の匂いがするの!」


リーシャよ、だんだん言うことがニナ化してきたんじゃないか。天国が匂うって初めて聞いたよ。リルーシャさんの前では言うんじゃないよ。きっと怒られるからね。

リーシャに言われるがまま歩いて行くと、美味しそうな肉串を焼いている屋台に着いた。


「とってもいい匂いなのです。おじさんこれは何ですか?」


レミが屋台のおじさんに尋ねている。


「これは兎の肉だぞ。丹精込めて焼いているから、柔らかくてうまいぞ。」


「おお、すごいのです。お兄ちゃん、お肉をもらってもいいですか?」


「ああ、いいよ。おじさん、人数分もらえるかい。」


「はいよ。まいどあり。」


そう言って、おじさんから六本の肉串をもらう。シシリアさんは遠慮していたけど、レミの「いらないのですか。お肉がかわいそうなのです。」とションボリした様子を見て、苦笑いしながら受け取ってくれた。


人通りが多いので、ちょっと一休みできるスペースを探し、腰を下ろして肉串をいただく。ピリッと胡椒が効いてジューシーだ。肉の下処理がいいのと、絶妙な焼き加減でとてもおいしい。


「お兄ちゃんのご飯の次においしいのです。」


「う~ん、ちょっと修業が足りない。」


「おいしいの!」


欠食児童たちには概ね好評のようだ。でもねぇニナ、あまり大きい声でそういうことを言っちゃダメだよ。それとレミは嬉しいことを言ってくれるね。今日の夜はお城で俺たちの歓迎会をしてくれるって言ってたけど、俺も何か作らせてもらおうかな。


「シシリアさん、今晩の歓迎会の料理作り、俺も参加させてもらっても大丈夫ですか?」


「お兄ちゃんが料理作るですか? やったぁ! なのです。」


「…申し訳ありません。料理長に確認してみます。」


そうだよね。料理長さんに聞いてみないとダメだよね。


「…シンジ兄が作るなら天国。」


「お兄のご飯がいいの。」


「わたしもお手伝いさせていただきます。」


子供たちの前で余計なことを言っちゃったかな。料理長さんが何て言うか分からないからね。厨房は立ち入り禁止かもしれないし。


「どうなるかわからないよ。もし作らせてもらえれば、何か作ってあげるよ。」


「わかったのです。楽しみなのです。」


「…期待一杯、胸一杯。」


「リーシャ、もういらないの。夜ご飯まで我慢するの。」


ちょっとヤバいかもしれない。子供たちはその気だ。どこか予備の厨房とかを無理矢理借りて、何とかしないとマズいね。


「シシリアさん、普段使われていない予備の厨房みたいなところはありますか?」


「…えぇと、厨房スタッフの賄用のキッチンがあります。」


よし、ラッキー。


「そこをちょっとお借りできないでしょうか?」


「わかりました。帰ったら料理長に聞いてみます。お嬢さん方がこれほど楽しみにしているのですから、何とか頼んでみましょう。」


「すいません。よろしくお願いします。」


うん、何とかなるかな。

獣王国の王都を眺めながら、歓迎会では何を出そうかと考えるのだった。



――――――――――――――――――――――――



王城の奥、あまり広くない質素な部屋にサフィとモーリス、獣王と宰相がいる。


「創造神ユリアーネ様より我が祖母に神託があった。ユリアーネ様は御遣いとしてシンジ様を遣わされた。」


「なんと! そのような神託があったのか。」


「我とモーリス殿の二人で御遣い様にこの世界の案内をしている。祖母からは、御遣い様のことは内密にするよう言いつかっている。さすがに国家元首にまで黙っているわけにはいかないので、獣王には打ち明けておく。」


「承知した。お心遣い感謝する。しかしこのような事はこれまでなかったこと。それも公表しないとは、どういった意図であろうかの。」


「おそらくマナに関わることとは思うが、我も詳しくは知らない。ただ、御遣い様が公表されれば騒ぎになるだろう。それでは創造神様の御意思に添えないということではないだろうか。」


「なるほど、確かにそれは懸念されることではある。」


「こうして打ち明けさせてもらったが、特に何かしてほしいわけではない。ただ、今のところは承知しておいて欲しいということだ。」


「承知した。」


誰もそばで聞き耳を立てているわけではないのに、小声で話を続ける四人であった。


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