54.5 猫人族 ニナの庶幾
アタシはニナ。猫人族のニナ。
ついこの間まではタリシュの森の小さな部落に住んでいた。
アタシの父さんと母さんは冒険者をしていたけど、結婚してこの部落に来たと言っていた。
アタシは気がついたときにはレミと一緒にいた。
父さんたちが友達同士だったから、いつもそばにいた。
レミはおっちょこちょいだけど、とてもいい子。
でもドジっ子で危なっかしい。
だからアタシが面倒を見てあげる。
外で遊んでいると、レミはよく転ぶ。
アタシには何もないように見えるけど、レミは転ぶ。
どうして転ぶのかアタシにはわからない。
だからレミとは手を繋ぐ。
どこに行くにもレミと手を繋いで行く。
レミはうれしそうに笑っているから、アタシもうれしい。
レミのお父さんが魔物にやられた。
アタシの父さんと母さんも同じ魔物にやられた。
優しかった父さんと母さんがいなくなった。悲しいし、とても悔しい。
それはレミもいっしょ。レミもお父さんがいなくなった後、お母さんも病気でいなくなった。
アタシにも優しくしてくれていた、レミのお母さんがいなくなって寂しい。
アタシの父さんたちを倒したとても大きな魔物が、部落の奥に住みついているらしい。
そのせいで、部落の外に出るなと言われる。
だからレミといっしょに家で遊んでいる。
長老の爺ちゃんが食べ物を持ってきてくれる。
魔物が住み着く前は獲物がたくさんいたし、木の実や森で取れるものがたくさんあったけど、今は魔物のせいで取りに行けない。
ちょっと、ムゥ、ってなる。
爺ちゃんたちに見つからないようにレミといっしょに外に出て、食べ物をさがす。
アマネダケを探すのはレミが得意だから。
部落の奥に行かないように注意しながら森を歩いていると、急に体がしびれて動かなくなった。
マズい、レミを逃がさなくちゃ。
でも遅かった。レミとアタシはヒト族に捕まった。
初めて見る狐人族のサクヤとアタシたちは、ガルーシャの森まで連れてこられた。
サクヤがフォレストウルフがいると言っている。あんな魔物に出会ったら逃げられない。
それなのに、シンジ兄はなにごともなかったようにフォレストウルフを倒して、檻からアタシたちを助けてくれる。
そして首輪まではずしてくれた。
なによりもシンジ兄が作ってくれるご飯はサイコーだ。
レミもおいしいご飯を食べられてよろこんでいる。
シンジ兄に会ってから、体が軽くなった気がする。
気のせいかな。
でも前より早く動ける。
石のナイフももらって木を切る。
うん、楽に切れる。
部落にいたときより強くなってる。
アタシすごい?
シンジ兄はおいしいものを作ってくれる。
肉はただ焼いただけのハズなのにおいしい。
なぜだろう。考えてもわからない。
おいしいものが食べられるからいいか。
おいしいものはそれだけじゃない。
プリンはすごい。あれは天国。
でもそれだけじゃなかった。
衝撃のアイス。
これはアタシに別のステージを見せてくれた。
肉も負けていない。
ハンバーグは別世界を見せた。
アタシは次々と知らない世界を知っていく。
レミもしあわせそうに食べている。
レミがしあわせなら、アタシもしあわせ。
部落では、アタシは誰にも相手にされなかった。
でもレミは友達。
とってもいい子。
だからアタシはレミを守る。
ちょっと抜けてるレミを守る。
そう言えば、シンジ兄もちょっと抜けてる。
なんか二人は似てるかもしれない。
そうか、二人ともアタシが守ればいい。
そう言えばリーシャも仲間になった。
リーシャは小さい妹。
守ってあげないと。
レミはドジっ子。
シンジ兄は強いけど抜けてる。
リーシャは小さい。
サクヤはお姉ちゃんだけど、魔法以外はちょっと弱い。
だからアタシがもっと強くなってみんなを守ればいい。
みんなを守ってしあわせにしたい。
もっともっと強い敵を倒してアタシは強くなる。
そのためにも、おいしいものをたくさん食べる。
たくさん食べれば強くなれる。
ビッグヴァイパーやレッドベアは大きくて怖い。見ているだけで体が動かない。
でもガンバる。
みんなを守るために、強くなるためにもっとガンバる。
アタシは強くなる。
そしてみんなをしあわせにするんだ。




