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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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54 ビッグヴァイパー狩り

「なんと! ビッグヴァイパーを倒してくださるのですか?!」


長老は吃驚して目を丸くしている。そんなに驚かなくてもいいのに。寿命が縮まらなければいいけど。


「あんな大きな蛇を倒せる人って、そうそういないからね。」


サフィが小声で耳打ちしてくる。

そういうものかな。まぁ一度倒している魔物だし、何とかなるよね。長老からビッグヴァイパーの巣や辺りの状況について聞いていく。


「あとの詳しいことは部落の者をつけますので、彼に聞いてください。」


長老にそう言われて壮年の男の人を紹介された。


「ビルおじさん!」


レミが嬉しそうに声を上げた。

ビルおじさんと呼ばれたオヤジは、レミとニナの頭を撫でている。二人とも目を細めて喜んでいるようだ。


「ビルおじさんは、お父さんの仲間だった人なのです。」


レミがそう言うと、隣でニナがうんうん頷いている。


「お前さん方が二人を助けてくれたのかい。ありがとうよ。あいつらに顔向けできないところだった。本当にありがとう。」


ビルさんは何度も礼を言ってくる。随分心配かけたようだ。こうして二人を会わせることができて、本当によかったよ。

俺たちは軽く話をしたあと、明日の早朝に出かけることにした。今日はレミの家で休ませてもらおう。長老には自分のところで休んでくれと言われたけど、レミとニナの懐かしい家に行ってみたかった。


レミとニナの住んでいた家は元々レミたち家族の家だったそうだけど、こじんまりとした平屋だった。家の中は部落の人が掃除していたみたいで、思ってたよりきれいになっている。


一番広い部屋で食事を取り、少し休んでいる。明日は朝早いから早めに寝た方がいいかな。そんなことを思っていると、奥の部屋に行っていたレミとニナが戻ってきた。二人とも手に腕輪を持っている。


「お母さんの腕輪なのです。」


そうか形見を取りに行っていたのか。

見事な彫刻がされた腕輪をレミとニナに見せてもらったけど、二人とも持ってきた腕輪は大きすぎるようだ。

二人から腕輪を借りて手の上でよく見てみる。鉄のようだけど、ミスリルも混ざっているみたいだ。小さな魔石も嵌っている。その腕輪に魔力を流しながら錬金し、成長に合わせて大きさが変わるようにしてみる。そうして錬金の終わった腕輪を、レミとニナの腕に嵌めてみる。すると大きかった腕輪が少し縮んで二人の腕にピッタリと嵌った。


「これでいつでもお母さんといられるね。」


そう言って二人を撫でると、嬉しそうに頷いた。腕輪に結界の魔法を仕込んだのは黙っていよう。結界を期待して油断するのはマズいからね。

あとは明日の朝が早いので、皆で休むことにする。



翌朝、部落の入口でビルさんと落ち合う前に、子供たちには留守番するよう伝えた。


「レミたちは家で待っていてくれるかい。」


「レミはお兄ちゃんといくのです!」


「…狩りにいく」


「リーシャもいくの!」


子供たちは行く気満点だ。


「ガルーシャの森でも狩りをしたのです。タリシュの森でも狩りするです。」


う~ん、これまで一緒に狩りしていたからね、どうしようか。


「連れて行ってもいいんじゃない。」


考えていると、サフィがそう言ってくる。

サフィの一言に、子供たちは笑顔で歩き出した。俺の言うことは聞いてもらえないらしい。ちょっと悲しいね。


結局全員でビッグヴァイパーのいる森の奥に入ってきたけど、草木をかき分けながら進んでいると妙に薄暗くなってきた。

タリシュの森に入ってきたときはそれほど気にならなかったけど、このビッグヴァイパーの巣に近いところでは鬱蒼とした感じがする。この辺りは、ビッグヴァイパーが住み着くようになってから人が入らなくなったそうだ。案内してくれたビルさんが教えてくれる。


「もう既にビッグヴァイパーの縄張りに入っているハズだ。部落の者はここまで来ないから、森が荒れてきてるんだと思う。」


なるほどね。ビッグヴァイパーがいるせいで、森の環境も変わってきているんだ。俺はビルさんの話を聞きながら、マップを出して辺りを警戒する。サフィやモーリスも警戒してくれてると思うけど、いきなり襲われることのないようにしないとね。サクヤたち三人娘は俺の後ろにいてもらい、リーシャは俺の服を握っている。


皆が警戒している中、前方の暗い場所からガサガサと音がする。どうやらビッグヴァイパーが出てきたようだ。ガルーシャの森で出会った奴みたいに、大きな頭を持ち上げて高い位置から擡げてくる。チョロチョロ出ている舌がイラつく。何だろうね、馬鹿にしているみたいに感じる。

さて、今回も同じ手でいいかなと思い、魔力を薄く固くするようにイメージしていくと、いきなり辺りに冷気が漂いレミやニナが腕をさすり始めた。すると、間髪入れずにビッグヴァイパーの頭が動かなくなり、そのまま目の前に倒れてきた。


地響きと共に倒れたと言うか落ちてきたビッグヴァイパーの頭は、地面に落ちるとコナゴナに砕け散ってしまった。


「なんかイヤなやつなの。」


俺の服を握っていたリーシャが一言呟いた。

一瞬言葉を失ったが、どうやらリーシャが魔法を放ったようだ。


「ははうえみたいにいかないの。こおらせるだけなの。」


と本人は言っていたが、ビッグヴァイパーの大きな頭を凍らせられるなら十分だと思う。



「やったぁ、なのです!」


「倒した!」


レミとニナが大喜びである。そう言えば二人にとっては親御さんのカタキになるんだね。

二人ともこれまで何も言わなかったけど、やっぱり嬉しいんだろう。リーシャの周りで飛び跳ねて喜んでいる。リーシャは二人の様子に驚いているみたいだけど、満更でもないようだ。


「……いったいこの子は何者なんだ。」


ビルさんがリーシャを見て呟いたけど、誰も聞いてはいなかったようだ。


皆が落ち着いた頃を見計らって、ビッグヴァイパーをアイテムボックスに収納する。巣の周辺でおかしなところがないかビルさんに確認してもらい、特に問題ないようなので引き上げることにした。


部落に戻り、長老のお爺さんにビッグヴァイパーを倒したことを伝えたら驚かれた。ビルさんが一緒だったから、彼からも説明してもらって納得してもらう。

さて、まだ時間は早いからこれから出発すれば森から外に出られるかな。あまり長居しても迷惑がかかりそうだしね。


「たいしたことはできませんが、どうか今日はお礼をさせてください。」


長老のお爺さんにそう言われたので、今日はここで泊まることにした。夜は宴会をしてくれるみたいなので、リーシャが仕留めたビッグヴァイパーを提供しよう。そうだね今日は唐揚げ大会かな。


「すばらしいのです! 唐揚げは正義なのです!」


「……天国への階段。二段目!」


「すてきなの!」


レミとニナ、リーシャは大喜びだ。サクヤも嬉しそうにしている。

片栗粉はエルフの森で大量に貰ってきていたので、今日は体力の続く限り唐揚げを作ろうと思う。部落の人たちにいっぱい食べて欲しいからね。サクヤにも手伝ってもらおうか。


宴会は大好評で終わった。レミとニナは最初借りてきた猫のようにおとなしかったけど、リーシャが唐揚げを食べてゴキゲンな様子を見ているうちに、二人もテンションが上がったみたいだ。

周りにいた大人たちも、終始楽しそうにしてくれていた。


それにしても食材が少ないのが気になった。今回はビッグヴァイパーがあったからそれほど目立たなかったけど、日常の生活で食料は足りているのかな。生活に余裕がなさそうに見受けられるし、今一つ心配だ。なのでリーシャに断ってビッグヴァイパーの素材は、肉も皮もすべて部落にあげることにした。長老さんは恐縮していたけど、どことなく安堵しているように見えた。



宴会も終わりレミの家に引き上げるとき、俺はサフィと共に長老へ明日出発することを告げる。


「もう少しゆっくりされてはいかがですか。」


「あまりご迷惑もかけられませんし、早目に出るようにします。」


長老はちょっと残念そうな表情をしている。

でもビッグヴァイパーはいなくなったから、あとは部落の人たちでやっていけるよね。

俺はサフィを見てから長老に大事な事を伝えた。


「レミとニナは俺に引き取らせてもらえませんか。」


「それは……」


「俺はこれから世界中を旅しようと思っています。その旅に二人を連れて行き、色んなところを見せてあげたいんです。」


長老は少し苦しそうな顔をしている。今の部落の状況がキビシイと分かっているんだろう。


「我もシンジと共に行く。あの子たちのことはまかせてほしい。」


サフィも援護してくれる。


「確かにこの狭い部落の中にいるよりも、あの二人のためになるかもしれませんな。……わかりました。どうか二人のことをよろしくお願いします。」


長老は静かに頭を下げてくる。

俺も感謝の気持ちを伝える。


「これまでレミとニナを育ててくれてありがとうございました。」


「じっちゃん、ありがとうなのです。」


「ありがとう。」


いつの間にかレミとニナの二人が俺のそばに来ていた。

俺は二人の頭を撫でてあげる。ちゃんと長老に面倒を見てもらっていたことをわかっていて、そしてお礼が言える二人はほんとにいい子だ。

二人は嬉しそうに顔を上げて、


「レミはお兄ちゃんといっしょなのです。」


「アタシもいっしょ。」


「そうなのです。みんないっしょなのです。」


そう言ってくれて俺も嬉しくなった。

サクヤとリーシャも寄ってきて、二人の手を取っている。

嬉しそうに長老がその姿を見て、


「子供同士、こうして笑顔でいられるのが幸せですな。」


しみじみとそう俺に言ってくる。

そうだね。この子たちが笑顔でいられるようにしたいね。

そう思っていると、長老がふと気が付いたように


「そう言えば、そろそろ武闘会の時期です。もし興味がおありなら、王都へ行ってみてはいかがですか。」


そう言ってきた。

お祭りみたいなものなのかな。もしそうなら見てみたいね。


夜、レミの家に戻って休んでいるときに、皆に長老から聞いた武闘会の話をする。人魚の島や、封印のあるウラル半島に行くなら、王都は通り道になるらしいので、すぐに王都へ行くことになった。一人を除いて。


「ほんとに王都へ行くの?」


サフィがちょっと嫌そうに言う。王都に何かあるのかな。


「私はお婆様の使いで何度か王都に行ってるのよね。」


どうやらエルフのお姫様扱いされるのが嫌らしい。でもね、それはしょうがないんじゃないの。お姫様なのは事実だし。


「何か暑苦しいのよ、あそこの王様。」


そうなんだ。でも悪い人じゃないんでしょ。


「ん~、悪い人ではないと思うけど、ちょっと戦うことに頭が向いてる人かな。」


戦うことって、戦闘狂?


「そうじゃなくて、何でも腕力で片付けようとするというか、腕力があれば何もいらないっていうか。」


何その脳筋。

面倒そうだね。サフィ、よろしく。


「何言ってるのよ。こうなったら一蓮托生よ。」


ヤバい、巻き込まれそうだ。

でもどうしようもないよね。コソコソするよりは堂々といきたいね。


それと、気になったのはモーリスだ。タリシュの森を抜ける道を行けば魔王国に出られるハズなので、帰国するのだとばっかり思っていた。でもエルフの森でサイリース陛下にお願いされたこともあって、帰国せずに同行すると言い出した。どうせヴェルシュタインに行くときに魔王国を通るから、そのとき故郷に寄れればいい、ということらしい。


「ほっほっほ、シンジ殿やお嬢さん方と旅する方が楽しいですからな。」


何とも心強いことだ。

こうして俺たちは皆一緒に旅を続けることになった。


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