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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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50 封印の影響

リーシャをよろしくしてから、リルーシャさんとリオンは大森林に帰って行った。

何か真っ白な灰になった気分だ。

帰り際、今回のように魔法を打ち上げて合図をくれれば、会いに来てくれるとリルーシャさんから伝えられた。


それほど長く話していたとは感じなかったが、陽が陰ってきている。

これからエルフの森に戻るのは危険なので、このままここで野宿することにした。いつもの携帯ハウスを出すには狭いので、テーブルを土に戻して簡単な小屋を作ることにした。


「はぁ~、あの家が恋しくなるなんて、あなたのせいよ。旅先で野宿できないなんて、どうしてくれるの?」


ちょっと理不尽だと思う。

でも俺もたいして変わらないので、出来上がった小屋にトイレと風呂を追加した。トイレも風呂も必要だよね。小屋を建てたスペースには収まらないので、木々の間にトイレと風呂を作り、小屋とは渡り廊下で繋いだ。あとは周りを結界で囲んでおけば大丈夫。リオンでも破れなかった結界だから安全だ。


小屋を一通り作り終えたら晩ご飯だ。と言っても、小屋にはキッチンがないので、調理の必要がないパンとか果物で済ませる。


「今日のごはんはさびしいの。」


リーシャがちょっと項垂れている。

うん、俺もそう思う。材料ならたくさんアイテムボックスに入っているけど、調理できないってのは想定していなかった。これからは調理済の料理を収納しておいて、いつでもどこでも食べられるようにしておこう。



翌朝、エルフの森を目指して出発する準備をはじめ、昨日の宿泊小屋を土に返した。エルフの森への帰路は、一度通った道を戻るだけだからか、思っていた以上に早く戻れた。


夕方、サイリース陛下の屋敷に着くと前回通された部屋に案内される。ほどなくして、サイリース陛下とサリアさんがやって来た。


そのサイリース陛下が俺の膝の上にいるリーシャを見て、不思議そうな顔をした。


「氷の精霊王には会えなかったのですか?」


「いえ、そうではなく、会えるには会えたのですが……」


俺が返事に詰まっていると、サフィが代わりに答えてくれる。


「氷の精霊王リルーシャ様に会うことはできたのですが、リルーシャ様はシンジにリーシャを預けられたのです。」


「なんと、精霊王が子供をシンジ殿に預けたのですか?」


「そうです、お婆様。シンジから神の気配を感じ取り御遣いであることを悟ったようです。それでリルーシャ様がリーシャをシンジに預けられたのですけれど。」


「……そう言うことですか。神の気配を()るとは、さすがは精霊王ですね。確かに御遣い様に我が子を預けるというのも、わからなくはありません。」


「そうなんでしょうか?」


俺がそう尋ねると、サイリース陛下が答えてくれる。


「あなた自身がどのように思われているのか何となくわかりますが、ユリアーネにしてみれば間違いなくあなたは御遣いの役割を果たしてくれる人なのです。そこは疑うべきではないと思いますよ。」


なんか俺の立場が重くなってる気がする。中身はアラサーの一般人なんだけどね。でもこうして励ましてくれる人がいるっていうのは心強い。頑張りたくなってくる。


「そうですね。せっかくこうして遣わしていただいたので、自分にできる限りのことをしたいと思います。封印がどんなものか気になりますし。」


「ええ、あなたに旅を続けてもらうのがユリアーネの望みでしょう。ですが、封印を見に行かれるのですか?」


「はい、どうにもあの嫌な感じが気になりますので。」


「……そうですか、あまりお勧めはしたくないのですが。もし行くのでしたらサフィ、十分注意して案内してあげてくださいね。あまり無理はしないように。」


「はい。もちろんですわ、お婆様。」


「先日説明した通り封印は七ヵ所ですが、場所が分かっている六ヶ所の内、竜王国やベスビオス山、ヴェルシュタイン公国の封印の地に行くのは大変かもしれません。」


なんでもヴェルシュタイン公国は大陸の北の端にあって結構遠いらしい。それから竜王国は、地続きではあるけど険しい山脈を通ることができず、船で海から上陸しないといけないだろうと言われた。ベスビオス山の封印は山の上で、どこも行くのは大変そうだ。でも、一度行ってしまえばあとは楽になるよね。


「それはどういうことなの?」


サフィが気になったのか尋ねてきた。


「一度行ったことのあるところなら、転移が使えるから。だから帰ってくるのは簡単だよ。」


「えっ、今何て言ったの? 転移って聞こえたけど。」


「その通りだけど、何か問題でもあるの?」


転移を使ったらマズいのかな。


「……そうね、そもそも転移魔法は時空魔法の一つなんだけど、その時空魔法を使える人があまりいないの。そして、転移魔法は古代文明と共に遺失したと言われているわ。」


サフィが呆れた顔で言ってくる。


「そうだったんだ。それじゃあ、転移魔法が使えるとか言ったら呆れられるのかな。」


「…そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」


「そうですね、為政者であれば何が何でも確保しようとするかもしれません。」


サイリース陛下が怖いことを言ってくる。確かに為政者だったら欲しがるかもしれない。


「そうですね……」


「ええ、ですから転移魔法については口にしない方がいいでしょうね。」


「わかりました。」



俺のことはこの辺で勘弁してもらおう。

俺はサフィを見て、湖でロジーナに会ったことを聞いてみる。


「そう言えば、湖で友達に会ったでしょ。」


「ああ、そうね。ロジーナが困っていたわね。お婆様、森に帰ってくる途中、湖でロジーナに会ったのですが、何でも人魚の島の方では魚が獲れなくなってきているらしいのです。何かご存じありませんか?」


サフィは俺に一言答えると、サイリース陛下に人魚の島について尋ねた。


「そうなのですか? ……人魚の島と言えばウラル半島の封印が気になりますね。あそこは半島の先端に封印がありますから、封印に何かあると島にはすぐ影響が出るでしょう。」


「それはどういうことでしょう? 確かにロジーナの話では、島から出てくれば魚がいるということでしたので、島周辺が異常なのかもしれませんが。」


「もしかすると、封印が弱まっているのかもしれません。そのせいで瘴気が濃くなってきているとすれば、そのようなことが起きるかもしれませんね。あそこは半島の先が島を覆うように伸びていますから。」


ここでも封印か。

やっぱり何とかしないといけないと思うんだけど、神様は俺には関わらせたくないんだよね。でも人魚にとって、魚がいないのはご飯がないってことだ。それはあんまりだ。

何もできないかもしれないけど、とにかく封印を見に行ってみよう。


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