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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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45 久々の陸地

進行方向にようやく陸地が見えるようになってきた。

こんもりした丘の先に森らしきものが見える。


「あれはたぶん、エルフの森の入口ね。」


「へぇ、ここから見てわかるんだ。」


「それはそうよ。自分の住んでいるところだからね。」


サフィが嬉しそうに言ってくる。まぁ、確かに住んでいる所くらいわかるよね。

自分が住んでいるところを忘れるようじゃ困るからね。


俺の隣でサクヤがちょっと困ったような顔をしている。


「どうしたんだい、サクヤ。」


「その、母様が怒っていないか心配で。」


「……そうだね、大事な娘が突然いなくなれば怒るかもしれないね。でも理由をキチンと話して謝れば、分かってくれると思うよ。」


「そうでしょうか?」


「そう思うよ。それに、会う前から心配してもしょうがないよ。怒られたらその時は、一生懸命謝ることだよね。」


「…そう、そうですよね。わかりました。」


ちょっとは前向きに考えられたかな。そもそもサクヤは何につけ、自分が悪いと思い込むことが多いみたいだからね。あまり思い悩まないといいんだけど。


レミたちは、並んで岸の方を見ている。釣りをしたりボディボードで遊んだりと、湖での旅を満喫していたの思うんだけど、やっぱり陸地がいいのかな。


「足が揺れるです。」


「…頼りない。」


もう少しで陸地に着くから、それまでの辛抱だね。

どうやらレミとニナは、思うように走ったり飛び跳ねることができないので、それがつまらないみたいだ。でもね湖の上にいるのに、甲板で飛び跳ねられると、見ているこっちがハラハラしちゃうよ。


そんな二人と話をしていると、船の舳先の方で魚が飛び跳ねるのが見えた。


「お魚なのです。」


レミとニナは嬉しそうに魚を見に行く。


「あまり乗り出さないようにね。湖に落ちないように気を付けるんだよ。」


俺はそう言って二人の後について行った。


レミたちが一頻り水中の魚を見ていた後、だんだん岸が近づいてきたのでそろそろ上陸の準備をする。家の中にいたメンツには全員甲板の上に出てもらって、携帯ハウスをアイテムボックスに収納した。

馬たちが騒ぐかと思ったけど、おとなしいもんだ。


水深を見ながらギリギリ岸に船を寄せて、飛び上がって子供たちを一人ずつ降ろしていく。馬はサフィと協力して浅瀬まで移動し、なんとか陸地に上げた。最後にモーリスを岸に降ろしたら、船をアイテムボックスに収納する。

たかが湖だと思ったけど、だてに大陸一じゃないね。湖を渡るのに、これほど時間がかかるとは思わなかったよ。船を収納してから岸に戻ると、ほっとしているサフィと、うれしくて燥いでいる子供たちがいる。

やっぱり地面の上がいいんだね。


早速レミとニナは飛び上がったり、クルクル回ってバク転している。ほんとこの二人は日毎に身体能力が上がっているんじゃないかと思うくらいだ。

リーシャは二人を追いかけて楽しそうにしている。

サクヤは俺の隣にいる。


「よかった。みんな嬉しそうですね。」


「そうだね。陸地に上がってほっとしたんだろう。皆故郷が近いんだし。」


「はい、私はこの先の丘を越えた森の中だし、あの子たちはここから湖を渡った東側ですね。」


「それだけ近いってことは、すぐ家に帰れるね。」


「……ええ、そうですね。」


どうしたんだろう、返事に間があったけど。ああ、レミたちと別れることになるからかな。寂しいかもしれないけど、湖を挟んで行き来できるなら、会いに行ったりできるだろう。

家に帰れば、これまで通り家族と一緒に過ごせるようになる。ようやくあの子たちの日常が戻ってくるんだ。俺も寂しいけど皆家に戻れるんだから、それが何よりだ。


サクヤも同じようなことを考えていたのか、少し寂しそうな顔を見せる。でもすぐに口元に力が入り、力強く頷いている。


「シンジ様、わたし頑張りますから。」


「おっ、おう。」


何を頑張るんだろう。お母さんに謝ることかな?

よくわからないけど、サクヤは何か決心したみたいだ。


「どうかしたの?」


サフィが俺たちの様子が気になったようだ。


「いや、みんな嬉しそうだなと思ってね。」


「それはそうよ。私も地面がこれだけありがたいとは思わなかったわ。」


「そうだね。足元が揺れないっていうのは安心感が違うね。」


「湖の上だし、あの家があったから安心はしていたけど、やっぱりこうして地面に立つと違うわね。」


そう言って、サフィは足元を踏みしめている。


皆が陸地を堪能している間に、俺はいつものようにテーブルと椅子を出し休憩の準備をする。エルフの森へと向かう最後の休憩かな。俺がテーブルを出していることに気付いたサクヤとサフィがやってくる。


「休んでいくの?」


「そうだね。一休みしてから森に向かった方がいいでしょ。」


サフィの問いかけに答えて、子供たちのオヤツを用意する。


「今日は何にしますか?」


サクヤが聞いてくるけど、最近作っていないから吃驚するようなものはないよ。取り敢えずアイテムボックスに入っていた果物を出し、残っていた生クリームで飾り付ける。

生クリームケーキもどき、って感じかな。


「今日はこんな感じでどうだい。」


そう言ってテーブルに並べていると、


「果物ですか? 今日も美味しそうなのです。」


まずレミが釣れた。


「……天国への階段。一段目」


次はニナだ。


「ふおおおぉ、きれいなの。」


最後にリーシャが来た。


「さあみんな、手を洗ってからオヤツだよ。」


皆に声をかけて、オヤツの時間だ。


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