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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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44 湖水浴はサイコー

湖の上は、波もなく穏やかだ。

周囲をぐるっと見渡しても、まだ陸地は見えない。

視界に溢れる水を見て、何かもったいない気がしてきた。

これだけの水を前に、釣りだけで終わるのは湖への冒涜だ。


というわけで、俺は板を削っている。ビート板を大きくしたやつ。そうボディボードを作っている。

これに乗って船に引いてもらったら、波がなくても楽しめるんじゃないだろうか。その場合はウェイクボードになるのかな。まぁ、どっちでもいいや。


適当な大きさに切って角を取り、滑らかに仕上げてみる。ロープを二本取り付け、一本は長いものにして反対側を双胴船の船尾に結わえる。もう一本は体を支えるものだ。

服を脱いでパンツ一枚はちょっと恥ずかしいけど、一気に暑くなってきた。神様から貰った服を脱いだせいだ。服を着ているとわからないけど、実際にはこんなに暑いんだね。早く水に入って涼もうか。俺はボディボードを抱えて湖に飛び込んだ。


すぐに浮き上がって、ボディボードを水面に上げるとその上に乗ってみた。双胴船の速度は人が走るくらいの速度まで落としてみたので、ボードはそれほど強く引かれる感じがしない。ちょっとスピードが足りない気がするけど、ロープを握ってボードの上に立ち上がってみる。


おおっ、やればできるもんだ。ゆっくりと双胴船に引かれるボードの上に立ち上がれた。これは結構楽しい。波がないからバランスも取りやすい。


双胴船の甲板では、三人娘や、リーシャが手を振っている。俺も手を振り返すけど、レミが甲板から身を乗り出して湖に落ちそうだ。


子供たちが騒いでいるようなので、俺はボードを掴んで飛行魔法で双胴船に戻った。


「お兄ちゃん、かっこいいのです! レミもやるのです。」


「…アタシもやりたい。」


「リーシャも。」


子供たちはやる気満々だ。でも、リーシャは小さすぎないかな。そう言えば、子供たちの水着はどうしようか。


オリバ村でサフィに買ってもらった服をちょっといじろうか。服やキュロットの裾はバタバタしないように紐で縛れるようにしておく。全体をキツくならないように絞ればいいだろう。今回は泳ぐわけではないし、俺が飛行魔法で補助すればいいか。

リーシャの着物は無理だな。レミの服を小さくして改造しようか。


それから救命胴衣は必須だね。布の織り目をキツくして、水が漏れないように防水して袋を作り、首や胴回りを保護するようにすればいいね。俺が改造した水着もどきに着替えたレミ、ニナ、リーシャの三人に、救命胴衣を着せる。サクヤは今回不参加だそうだ。なんでも泳げないから遠慮すると言っていた。それじゃあ、今度浅瀬で泳ぎの練習をしようか。


準備が出来たら俺とサフィで補助しながら、三人を湖に浮かべたボードに乗せる。今は双胴船を止めているので、ボードは動かない。動かないとは言っても、水の上なのでお察しだ。

まずレミとニナをボードに乗せると、レミは四つん這いで板にしがみついた。ニナは上手にバランスを取っている。次にリーシャを乗せると、彼女もニナ同様、うまくバランスを取ってボードの上に立っている。器用なものだね。


双胴船をゆっくりと動かして前に進ませる。たぶん、ある程度勢いがあった方がいいと思うけど、子供たちの様子を見ながら動かすようにしよう。



「ニャハハハハ~、天国一直線!」


「きもちいいの!」


「あばばばばばっ」


「大変! レミが溺れそうよ!」


ニナやリーシャのようにボディボードの上に立とうとしたレミが、バランスを崩して湖に落ち、ボディボードを引いている紐に絡まって引き摺られている。それを見てサフィが飛び出そうとしているけど、「俺が行くよ。」一声かけて飛びだし、レミをボードごと双胴船に引き上げる。


「ちょっと油断したのです。まだまだいけるのです。」


レミはやる気十分だ。

痛めたところがないか確認し、呼吸も落ち着いているので、もう一度湖上に降ろしてあげる。今度は上手く立ち上がれた。ある程度勢いがないと、バランスを取るのが難しいのかもしれない。


「ひゃっはー! 飛んでるのです。」


やたらとご機嫌なレミである。


三人の様子を飛びながら見守り、疲れが見えだしたリーシャを回収する。


「さいこーだったの! もっとはやくてもいいの。」


リーシャは双胴船をもっと早く走らせて欲しかったようだけど、これ以上早くしたら体を支えられないと思う。

それにしてもレミとニナの体力には驚く。たぶんスキル補正だろうけど、まだまだ余裕のようだ。ニナは後ろ向きに滑ったり、器用にジャンプしている。あの二人の遊ぶ力を見誤ったかもしれない。



そんな二人にも疲れが見え始めたので、早目に回収しようと声をかける。


「二人とも、そろそろお昼ご飯にしようか。」


「え~、まだ大丈夫なのです。」


「もう少し。」


「二人とも、もうお昼は過ぎているのよ。これ以上は、お昼ご飯抜きかしら。」


サフィも飛んできて、二人に言い聞かせている。


「あああ、お昼にするのです。早くご飯が食べたいのです!」


「お昼!」


二人は慌てて、お昼ご飯にすると言い出してくる。

俺とサフィで二人を抱えて双胴船に戻り、家に入る。リーシャはお昼ご飯もまだなのに、家の中でお昼寝していた。


「そろそろ食事ですかな。」


家の中には、モーリスが待機してくれている。


「お嬢さん方、食事の前に汗を流されるとよろしいでしょう。」


モーリスが、レミとニナをお風呂に送り出し、俺は食事の準備を始めた。



遊びに夢中でちょっとお昼は過ぎたけど、遅めの昼ご飯にする。

改めて水上で家の中にいることに違和感を感じる。まぁ、今さらだね。キッチンで料理していても、椅子に座って食事をしていても微妙に家が揺れている。当たり前なんだけど、少しおかしくなってくる。


「何がおかしいですか?」


小首を傾げてレミが聞いてきた。


「いや、水の上で家にいるっておかしいなと思ってね。」


「あなたが言わないでよ!」


ちょっと非難するようにサフィが切り込んでくる。確かに俺が作ったけどね、これほど違和感が続くとは思っていなかったんだよ。でも楽しいでしょ。

普段と違う日常っていうのもいいと思うんだ。


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