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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
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43 湖は続くよ、どこまでも

正直俺はナメていたと反省している。

ウテナ湖が、とても大きいと身をもって理解した。


双胴船は、馬車よりは早いんじゃないかと思っていたけど、四方どこを向いても全然陸地が見えない。どれだけ進んだのか、サッパリわからない。

これって海なんじゃないの、と本気で思っている。

それでもマップを信じれば、エルフの森があるとされるウテナ湖北岸を目指しているのは間違いない。


船は日中だけ稼働し、夜は停泊するようにしている。だから思ったほど距離を稼げないということもあるが。

風の魔法を刻んだ魔道具を止めなければ夜も動かせないことはないけれど、寝ている間に何か起こると大変なので、夜は魔道具を止めている。まぁ、食料はたっぷりあるから、少々時間がかかってもビクともしない。


「いくら食料があっても、漂流するのは嫌よ。」


そんなの俺だって嫌だよ。

サフィはからかっているつもりかもしれないけど、俺は内心ドキドキだ。


「お船さんが向かっている方向は、合ってるですか?」


船の進む方向が心配なのか、レミが尋ねてきた。

俺やサフィが話していたのを聞いていたのだろうか。


「今大体お昼だから、お天道さんがいる方が南でしょ。だから船はお天道さんと反対の北に向かっているんだよ。」


レミに説明していて気が付いた。果たしてこの世界での方位は前世の世界と同じなのだろうか。

もし違っているようだとマズいんだが。


サフィに確認すると、日の出は東で日の入りが西ということだ。それを聞いてほっとした。

俺の方位感覚は合っている、ハズだ。

大丈夫。マップに表示されている通りに行けば間違いない。


「それならいいのです。そのうち着くのですよ。」


なんか、達観できるレミが羨ましい。



レミじゃないけど、俺も心配するのはやめた。

ウテナ湖は広いし、大きい。せっかくだから楽しまないとね。


湖のレジャーと言えば釣りだ。ここは、気合を入れてやってみようか。

日差しが眩しいので、自分で作った麦わら帽子をかぶっている。国境を越えたときに子供たちに作ってあげたら、大人にも好評だったのでサフィとモーリスにも麦わら帽子を作ってあげた。サフィは似合うんだけど、正直モーリスはどうなんだろう。本人は気に入ってるみたいだからいいけど。


双胴船の真ん中、船と船を繋いでいる甲板に座って釣り糸を垂れている。どんな餌がいいのかわからないので、取り敢えずパンくずで挑戦してみる。

ところで、この湖にはどんな魚がいるのかな。コイとかフナはあんまりなぁ、美味しいと思ったことはない。ナマズはたぶん湖底の方だろうから糸が届かないな。そう言えば、俺って淡水魚は苦手だった。これは釣れたらリリースかな。



糸を垂らしてぼーっとしているが、竿先はピクリともしない。

周りには水しかないので、妙に静かだ。


サフィたちは家の中なので、ここには誰もいない。みんな外は暑いから嫌なんだろう。

馬車につけたなんちゃってエアコンは何だかんだ言って好評なので、人前ではNGだけど携帯ハウスに付けるのはOKとなった。だから、携帯ハウスのリビングや各自の部屋に取り付けた。これで夏も快適に過ごせる。

快適過ぎて、外に出てこないのもどうかと思うけど……



「お魚さん、釣れたですか?」


レミが俺の隣にちょこんと座って聞いてくる。


「……おさかなぁ」


ニナが反対側に座った。

二人とも俺の釣りが気になったようだ。


「まだ釣れてないよ。」


レミとニナは水面をじっと見ている。釣り竿から垂れている糸を見ているのかな。


「二人とも釣りをやってみるかい?」


二人とも頷いたので、予備の竿を出して糸を付けてやる。今回はリールまで作っていないので、竿に糸と針をつければ準備OKだ。餌にパンくずを付けようとすると、


「アタシはこっち~」


ニナはゴソゴソと何かを針につけている。よく見るとミミズのようだ。いつの間に準備したのだろうか。エサをつけて準備出来た二人は、早速湖に糸を垂れる。二人とも、じ~っと竿先を見つめて動かない。

その集中力はたいしたものだけど、そんなに気を張っていると疲れるよ。


それからいくらも経たないうちに、ニナの竿にアタリが来た。


「ニャッ!」


ニナが気合を入れて合わせると、一気に竿が撓った。

かなりの大物がかかったみたいだ。

グイグイと糸を引き、右に左に竿の撓りが引っ張られる。


これだけ引かれると辛いかなと思い、ニナに目をやるとニコニコ笑っていた。


「ニャア~、アタシは負けない!」


随分と余裕で、楽しんでいるようだ。

俺は大きなタモを準備して、いつでも引き上げられるようにする。レミはニナの腰に抱き着いている。


「ニナ、ご飯を逃がしちゃダメなのです!」


レミ、もう食べることに頭が切り替わっているのか。これが本能なのだろうか。ニナは、レミの言葉を受けて、力いっぱい竿を引き上げる。おかげで水面に魚が見えた。

すかさず俺はタモを入れて魚を掬い上げた。タモに入りきらないほど大きい魚だけど、強引に甲板に引っ張り上げた。


ドスンッ、という感じで甲板に打ち上げられた魚は、一メートルを越える大きさだ。タモの中に入ったまま鰭をバタつかせて暴れている。


「どうしたんですか!?」


俺たちの騒ぎを聞きつけたのか、サクヤがやってくる。


「これは、随分と立派なクブダイですね。」


サクヤが大きな魚に目を見張っている。

どうやらサクヤはこの魚を知っているようだ。


「里にいるときに、お祝い事があるとこの魚が出されました。」


へぇ、そういう魚なんだ。だったら美味しいのかもしれないね。


「今夜はごちそう。」


ニナが胸を張る。

そんなニナの頭を撫でて褒めてあげる。

これだけ大きい魚だと、食べ応えがありそうだ。夕食がたのしみだね。



今日は家の外でニナが釣り上げた魚を焼きながら晩ご飯だ。

さすがに、一メートル超える魚を焼くだけのスペースがキッチンにはないので、外に竈を作って焼いている。サクヤが言うには、頭も焼いて食べるらしいので、兜焼きにしてみた。


淡泊な味だけど、とても美味しい。

パンやスープも出して皆で食べる。ニナとレミも嬉しそうだ。

そうだよね、自分で取った獲物って格別だよね。


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