表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第二章 古代の封印
41/279

38 国境を越えて

俺たちは関所を越えて、ようやく獣王国へ入った。

やっぱり馬車や徒歩だと時間がかかるね。車のように時間単位の移動なんて夢のようだ。転移魔法を使えば早いかもしれないけど、行ったことのないところには転移できないからね。今の俺には役に立たない。


ようやく獣王国に入ったとは言え、まだ山道は続いている。

この山道を下りて、道なりに行くと港町タオに着くらしい。道は途中で分岐していて、ウテナ湖に向かう道があるそうだ。俺たちはウテナ湖に向かう道を進むことになる。


ただ、ウテナ湖まではかなり距離があるらしい。そこから湖を回り込むようにして北上するとエルフの森だ。エルフの森までは、川を越えたり、山を越えたりで二ヶ月ほどかかるという。遠いね。


もう少し山道を下れば馬車を使えるようになると思う。そうすればもっと早く移動できるようになるだろう。

早く人里に出たいね。考えてみれば、俺はこの世界に来てからオリバ村やミズリグ村などの村しか見たことがない。王都とは言わないけど、大きな街とかも見てみたいね。そのうち見ることができるかな。


そう言えば、ガイン王国と獣王国と言うか、大陸の東と西では貨幣が違うということを忘れていた。

せっかくオリバ村のギルドで換金してもらったけど、また無一文になっちまった。サフィとモーリスに相談すると、山を下りた森の向こう側に村があるから、そこのギルドでまた換金すればいい、と言われた。今度は何もないよね。面倒事は嫌だよ。


馬に負担がかからないように、慎重に下り坂を下りていく。

こうしてみると、ラインバッハの領主様にもらった馬はかなりいい馬のように思える。どんなことにも慌てず騒がず、キチンと言うことを聞いてくれる。そんなことをモーリスに話してみると、


「その通りですな。これはかなりいい馬だと思いますぞ。魔王国でもこれだけの馬はなかなか手に入りますまい。」


そう言ってくる。

ほんと、あの領主様にはお世話になったね。


「これぐらい普通じゃない。サクヤたちを助けて、インフェルノウルフを撃退したんだから。」


サフィはなんとも素っ気ない。そんなものなのかな。

こんなにいい馬と馬車を貰えたんだよ。もうちょっと感謝というか、何かあってもよさそうだけど。ただ、油断すると馬たちに髪の毛をハムハムされるんだよね。あれはちょっと困るかな。まぁ、レミたちも懐いているみたいだし、名前でも考えてあげようか。

う~ん、俺が今連れている一番ガタイのいいのがドラン。サクヤを乗せている優しそうなのがルシア。レミが乗っている鼻筋が白いのがライン。ニナが乗っている大人しいのがブラウかな。

あとで皆に伝えよう。こうして一緒に旅しているんだし、名前で呼んであげた方が馬も嬉しいよね。


山道を下り、辺りが薄暗くなってきたところで野営することにした。

だいぶ下ってきたからか、道も広くなり、休憩できる広場も多い気がする。携帯ハウスを置けそうな更地を見つけて設置した。厩舎も出して馬たちを連れて行きながら、名前を付けてあげる。

馬たちは名前を付けてもらったことが嬉しいのか、機嫌が良さそうだ。三人娘は、それぞれ自分が乗ってきた馬の名前を呼びながらブラッシングしている。俺もドランにブラシをかける。皆楽しそうだ。


ブラッシングが終わると、家に入って食事の準備だ。三人娘とリーシャは風呂に送り、俺はキッチンへと入って行く。


「何か手伝えることはないかしら。」


俺がキッチンで食事の準備をしていると、サフィがそう言いながら入ってくる。

あれ、珍しいね。サフィが料理を手伝ってくれるなんて。


「いつもあの子たちが美味しそうに食事しているのを見ていると、私も作ってあげたくなったのよ。」


へぇ、そうなんだ。それならスープでも作ってもらおうか。と言っても、出汁はとってあるから野菜と肉を入れて煮込むだけだけど。

そう言えば、ミズリグ村で昆布を手に入れていたのを忘れてた。昆布出汁となると、醤油と合わせたいよね。醤油が手に入るまで昆布はお休みかな。


ビッグボアの肉を用意して、軽く表面に焼き色をつけてから、スープ出汁の入った鍋に入れていく。野菜を洗い適当な大きさで切ってもらって、それも鍋に入れてしばらく煮込む。塩と胡椒で味を調えてあげれば完成だ。

その他にも、フォレストウルフの肉を包丁で細かくして、ボールに入れて捏ねる。ステーキとか焼肉ばかりじゃつまらないから、今日はハンバーグだ。捏ねて叩いて平たくしたハンバーグを焼いていく。


三人娘たちが風呂から上がったようで、サクヤがキッチンに入ってきた。


「あ、サフィーネ様、わたしがやります。」


「いいのよ。いつもあなたたちにまかせっきりだから、たまには私も手伝わないとね。」


サフィはサクヤの手伝いを断って、料理を続ける。

サフィが手伝ってくれたからか、とても美味しそうにできた。


出来上がった料理をテーブルに並べて皆で食べ始める。

子供たちはハンバーグに興味津々だ。俺はリーシャを隣に座らせて、ナイフとフォークの使い方を教えながらハンバーグを切っていく。


「やわらかくてフワフワでお肉じゃないの。でもおいしいお肉の味なの!」


ちょっと食感に戸惑ったようだけど、美味しそうに食べている。

レミやニナも不思議そうにハンバーグを見ていたけど、一口食べると美味しそうにしている。


「これは何ですか。いつものお肉とは違うですか。」


「…お肉が別世界。」


ニナ、ちょっと意味不明だよ。


サフィに手伝ってもらった食事に大満足したあと、子供たちはリビングで遊んでいる。俺はサフィと食後のお茶タイムだ。


「やっぱりあれだけ美味しそうに食べてもらえると嬉しいわね。」


「そうだね。特にレミたちは嬉しそうに食べてくれるからね。」


サフィは、自分が作った料理を美味しく食べてもらえて嬉しかったみたいだ。

誰かに食事を作ってあげたことがなかったのかな。まぁ、楽しく料理できて、それを喜んでもらえたんだから良かったよね。



翌日、いつものように準備をして出発する。リーシャはドランの背中の上だ。

辺りを見回すと、これまでの景色とちょっと変わって見える。山の麓まで降りてきたからだろうか。何となく木が少なくなって、草が増えてきたような感じがする。


しばらく歩いて行くと、森が見えてきた。モーリスが言うには、あの森に沿って行けば村があるらしい。

もう少し下れば馬車を使うことができるだろう。そうすれば楽に村まで行けるかな。


やがて山道も終わり、平坦な道が続くようになった。なので、馬車をアイテムボックスから取り出して、馬に馬具を取り付ける。ドランたちは嫌がるかと思ったけど、全然そんな素振りもなく大人しくしている。久しぶりの馬車だから、ゆっくりと走り始める。特に問題なく、快調に馬車は進んで行く。



天気のいい日が続いているが、夕方になると不意に雨が降るときがある。まぁ夕立なんだけど、どこの世界でも似たようなものだなと思う。

すぐに止みそうなら気にしないけど、土砂降りになりそうなときは、携帯ハウスを出して雨宿りだ。馬たちも雨の中を走るのは嫌だよね。


こんなときは早目に諦めて、家の中でゆっくりする。

そう言えば、俺はこの服のお陰で気にならないけど、馬車の中は結構暑いようだ。リーシャが汗をかきながら昼寝をしていた。馬車の中にエアコンをつけたいな。


熱交換器だのコンプレッサーなんてものはわからないので、ファンタジーらしく氷魔法で冷やした触媒に風を通せばOKなんじゃないかと思う。レッドベアの魔石に氷魔法と風魔法を刻んでみる。錬金ができると、こんなこともできるようになるんだ。その魔石を箱で覆って馬車に取り付けると、その箱に開けた送風口から涼しい風が出てくる。結構いい感じだ。これなら夏でも涼しく移動できるね。


翌日、早速なんちゃってエアコンを試してみる。


「何これ、何で馬車の中がこんなに涼しいの?」


「涼しくて気持ちいいのです。」


「……極楽」


サフィは意味が分からなくて、怪しげな顔をしている。子供たちは素直に喜んでくれた。


「今の季節、馬車の中は暑くて大変なんじゃないかな、と思ったから涼しくなるようにしてみた。」


「…してみた、ってこの魔道具がそうなの?」


俺の説明に、サフィが魔石を入れた箱を指さして尋ねてくる。


「そうだよ。魔石には氷と風魔法を刻んであるから、涼しい風が出てくるでしょ。」


「ちょっと待って。今何て言ったの? 魔法を魔石に刻んだって聞こえたけど。」


「そうだよ。レッドベアの魔石にちゃちゃっと刻んでみたけど、何かマズかった?」


「……あなたねぇ。そんな物は古代文明の遺物にしかないのよ。」


サフィが教えてくれたことによると、魔石に魔法を刻む技術は、古代文明とともに遺失したと言われているそうだ。今はミスリルなどに魔法を刻み、そこに魔石を埋め込んで魔道具を作っているらしい。効率悪そうだ。でも魔石に直接魔法を刻むと、魔石が壊れてしまうんだって。へぇ、そういうものなんだ。

まぁ、こうして涼しいからいいんじゃない。


「これも、人前では禁止ね。」


微妙にお叱りを受けてしまうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ