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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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36 山道は危険がいっぱい?

関所を越えてから足を踏み入れた山道は、キチンと整備されていて歩きやすい。見える範囲では勾配もキツくなさそうだ。子供たちは馬に乗せて、サフィ、モーリスと一緒に歩き出す。

リーシャは相変わらず俺の腕の中で寝ている。


道は山腹を削るようにして作られている。山自体はそれほど険しくないのか、ところどころ休憩所のように広くスペースが確保されている。ピクニックにでも来たような気になる。

日差しが強く暑そうなので、短い間隔で休憩を取る。人もそうだけど、馬も大変だ。俺は神様からもらった服のおかげで暑くも寒くもない。これは助かるね。

広場で休憩していると、レミ達が遠くを見ている。眼下にはミズールの森が広がっているが、かなり広い。森の向こうまで見通せないくらいだ。こんなに大きな森の中を歩いてきたんだね。


「お兄ちゃん、望遠鏡を貸してください。」


レミが望遠鏡を要求してくる。ガルーシャの森で、インフェルノウルフを探したとき以降はアイテムボックスに仕舞いっぱなしだった。


「お日様を見ちゃダメだよ。」


レミに望遠鏡を渡すと、ニナやリーシャと交代で森の方を見ている。自分たちが歩いてきたところを確認しているようだ。


「村が見えないの。」


望遠鏡を持って、リーシャが俺に文句を言ってくる。仲良くなったアナベラのことを思い出していたのかな。


「う~ん、ミズールの森はずいぶんと大きいみたいだね。もう少し高いところまで行けば見えるかもしれないよ。」


そう言ってリーシャを撫でていると、レミもやってきた。


「ここの森は大きいのです。タリシュの森みたいなのです。」


そうかタリシュの森もこんなに大きいのか。森の中でレミとニナの部落を見つけられるのかな。俺一人だったら見つける前に迷子になっていそうだ。



馬たちにもたっぷり水をあげて、休憩を済ませると俺たちは歩き始めた。これまでよりも勾配のある坂道が続く。頂上が近いのだろうか。

そうして山道を登っていると、突然前方に岩が落ちてきた。咄嗟に結界を張ってガードする。こちらに岩が転がってきたら危ないからね。岩と共に砂煙が上がり、前方が見えなくなった。マップには二十人ほどの人が表示されている。後ろからも十人ほど走ってきているようだ。

砂煙が収まってくると、髭モジャで汚そうな男どもが現れた。


「おいおい、エルフに獣人がいるじゃねぇか。大漁だな。お前ら、おとなしく荷物を置いていきな。」


ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら先頭の男が寝言をほざいた。

一応、念のために相手が何者か確認しておこうか。


「あんたらは何者だ。関所では山賊が出ると言われたが、あんたらがそうなのか。」


「へへへ、何のことか知らねぇな。俺たちゃお前さんたちの持ち物に興味があるだけだ。」


関所で言われたことはフラグだったようだ。何だか面倒でうんざりしてきた。俺の気持ちを察したのか、サフィが小声で言ってくる。


「ちょっと、派手にやって山を崩さないでよ。」


へいへい、わかりました。

サフィとやりとりしているときも、先頭の男は自分の要求を声高に主張する。


「そこのエルフと獣人たちも置いて行きな。俺たちがかわいがってやるからよ。」


だんだん、聞くに堪えなくなってきた。

手を出すにも汚そうで触りたくないので土魔法で柱を作り、そこに賊の体を固定して道の端に並べる。「何しやがる」とか、「何だこれ、体が動かねぇ」とか聞こえてくるけど全無視だ。ちょうどそこに後ろから走ってきた連中が登場した。


「おい、お前らカシラに何するんじゃ!」


仲間決定のようなので、同じように土魔法で固定して並べる。


「なにしやがる。俺たちを放しやがれ!」


先ほど先頭で自分の要求を主張していた男が吠える。

こんなやつらの相手をする時間が惜しい。


「あんたらどこまで馬鹿なの。自分の立場を理解してる? このまま消し炭にしてもいいか?」


俺はそう言うと魔法で火の玉を出した。そして徐々に魔力を込めて大きくしていく。

十メートルくらいの玉にしてから男たちに近づける。結構魔力を込めたから熱いと思うんだけど、俺は神様の服のおかげで暑くないんだよね。


「熱い! 許してくれ。頼む。」


俺は火の玉を消して、男どもに近づく。男どもは火の玉のせいで汗だくになっている。

こいつらこのまま処分するのも、関所に突き出すのも面倒だね。

だから、男どもを固定している土柱の上に”山賊です”と書いた大きな看板をつけてやった。

これですぐにわかるよね。


「そのうち討伐隊が来るらしいから、そのまま待っているといいよ。」


俺の一言に男どもが騒ぎ出したので、土魔法で全員の口を塞いでやった。

まったく、山賊なんかしなくても働く方法はいくらでもあるだろうに。



山賊どもはそのまま放置で山道を進む。それなりに整備されている山道のお陰か、割と進んでいると思う。

道の先に目をやりながら歩いていると、道からちょっと外れたところによさげな広場がある。まだ夕方には早い時間だけど、携帯ハウスを出すにはちょうどいい場所だ。俺は皆と広場まで移動する。少し地均ししてから携帯ハウスを置いた。これでお風呂に入れる。


レミたちは厩舎に馬を連れて行き、ブラッシングをしてあげるようだ。そうだね、馬たちも山道を歩いて来て大変だったろうから。今日は食事も奮発しようか。タレがないのが残念だけど、外でバーベキューをしよう。

サクヤと一緒に食材を準備していく。こうして家があるだけで楽しくなってくる。旅をするのはいいけれど、野宿というのはちょっと辛いかな。

モフモフな寝床でもあれば違うかもしれないけど、こうして落ち着ける場所があると安心感があっていい。


そうしているうちに、ブラッシングを終えたレミたちが家に入ってきたので、サクヤも一緒にお風呂に入ってもらった。

汗を流せばサッパリするだろう。


子供たちがお風呂から上がったら夕食だ。

家の前に竈を作り、食材を焼いていく。ビッグボアやフォレストウルフ、ビッグヴァイパーを焼いていく。肉ばかりでなく野菜も食べないと。それから、レッドベアも焼いてみる。熊鍋も考えたけど今は夏だからね。それに味噌がないのはいただけない。だから今日は、お肉たくさん食べ比べバーベキューだ。

レミやニナ、リーシャも大喜びで食べている。


「これほどの肉を食べ比べられるなんて、ありえませんな。」


モーリスは半ば諦めながら食べている。


「フォレストウルフやビッグヴァイパー、レッドベアなど、どれもなかなか食べられるものではありませんぞ。」


そう言われても、俺のアイテムボックスにはまだまだ入っているんだよ。少しずつでも減らしていかないと。


「レミは今日も、幸せ過ぎるのです。こんなに美味しいものを食べられるなんて、お兄ちゃんは神様ですか?」


いやいや、ただの人だから。’?’マークついてるけど。


「…ここは天国」


「おいしくて、いっぱいで、幸せなの。」


「ほんと、こんなに美味しいものを食べられるなんてありがたいです。」


子供達には大好評だ。これは、お腹一杯になる前に言っておかないといけないな。


「みんな、今日はこのあとにデザートがあるからね。デザートの分お腹を空けておくんだよ。」


「「「おおぉっ!!」」」


そんな、ハモるほどの驚きなの? それはそれで、普段食べさせていないみたいだな。


バーベキューが終わった後、約束通りデザートを用意した。

前に作った生クリームを使ったプリンアラモードだ。オリバ村で買っておいた果物も使って、大きく豪華にしてみた。


「ふおおおぉぉ!」


「しゅごいの! いっぱいなの!」


「……こ、これは最終兵器」


レミは言葉を忘れたようだ。

リーシャも興奮してる。

ニナはそんな言葉どこで覚えてきたの。

ここまで驚いてもらえると、作った甲斐があるよね。


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