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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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34 封印の気配

村長さん家の離れに戻った俺は、キッチンを占拠している。

狙いはプリンと生クリームだ。アイスも頑張ろうか。まぁ、生クリームは生乳を冷暗所で放置だけど。


牧場で手に入れた卵と牛乳を使ってプリンを作る。七人分あれば足りるけど、子供たちが欲しがるだろうから多めに作る。

それから、砂糖もすりつぶして粉にしておく。クリームに混ぜるときは粉糖だったと思う。


鍋を火にかけてカラメルを作り、容器に移してからプリン液を入れて蒸す。ワクワク楽しくなってくる。ふと気が付いて隣を見ると、レミとリーシャが涎を垂らしていた。反対側にはニナもいる。後ろではサクヤが興味津々だ。そうか、カラメルか。匂いはごまかせないからね。


「これは冷やしてからじゃないと美味しくないよ。」


そう言って子供たちを解散させるが、諦めきれないようだ。ドアの影からレミ・ニナ・リーシャが顔だけ出して、こちらを覗いている。

仕方ないね。俺は蒸しあがったプリンの器を四つ取り出して魔法で冷やしていく。いい感じに冷えたところで子供たちを手招きした。


「サクヤ、スプーンを用意して。」


サクヤが人数分のスプーンを用意して皆がテーブルについたところで、めいめいにプリンを渡す。

サフィとモーリスがキッチンに入ってきた。


「何しているの? 随分甘い匂いがするけど。」


「ちょっと味見をね。」


そう言って子供たちを見ると、すでにプリンを口に入れていた。


「おいしいのです! プルプルで柔らかいのです。」


「……天国。」


「すごいの! おいしいの!」


「これは何ですか。甘くてすごくおいしいです。こんなの初めて食べました。」


子供たちは大満足のようだ。

レミ、食べるのが早いけどそれしかないからね。ニナ、スプーンを舐めても味は戻ってこないよ。リーシャ、上目遣いしてもダメだよ。もうないからね。


「一体どうしたというの? レミたちはおいしそうに食べてたけど。」


「卵で作るお菓子を試したんだけど、好評だったようだね。」


「それはまだあるの?」


「これから冷やすから、晩ご飯の時には食べられると思うよ。」


「え~、今はダメなの。」


サフィが珍しくダダをこねてるけど、夜には食べられるからいいじゃない。

俺の一言で子供たちは落ち着いたようだ。晩ご飯の時にまた食べられると分かったからだろう。

やっぱり子供たちにお菓子は効果あるね。でも食べ過ぎたり、虫歯には注意しないと。


子供たちはプリンに満足したようだけど、俺はもうひと踏ん張りアイスに挑戦だ。

卵を割って卵黄を取り出し、砂糖と牛乳を混ぜて軽く火にかける。卵白はあとでスープにでも使おうか。粗熱を取って冷やしながらかき混ぜて、魔法で凍らせる。完成したアイスは子供たちに気づかれないようにアイテムボックスに収納だ。

あの子たちの驚く顔を見たいからね。



昼間子供たちが期待した通り、晩ご飯のデザートにプリンを出してあげた。

今度はサフィとモーリスにも出した。結果は大好評で、モーリスは店を出したらどうかと言い出す始末だ。そのうちにね、と言っておいたけど店を出すのって面倒そうだ。


それからキッチンの片隅に置いた生乳だけど、考えてみたら分離を待たなくても、クリーム成分の抽出って、魔法で出来ないだろうか。

そう思って試しにやってみたらできた。器にクリームと粉糖を入れて撹拌する。いい感じで出来たので、そのままアイテムボックスに収納しておく。こうしておけば、いつでも使えるからね。プリンに乗せてプリンアラモードでも、パンに挟んでもおいしそうだ。


甘味の出来を確認してからリビングに戻ると、サフィとモーリスが話をしていた。

せっかくミズリグ村まで来たので、船で獣王国に向かおうかとモーリスは考えて、船の手配ができそうか昼の内に確認したそうだ。でも生憎馬を乗せられる船は、獣王国のタオに向けて出航したばかりなので、次にミズリグ村から出るのはかなり後になるということらしい。


次の船を待つのがいいか、それとも当初の予定通り山越えがいいか。

船を待っているくらいなら、予定通り山越えでいいのでは、と言ったらサフィとモーリスも賛成してくれた。山越えは覚悟していたことだし、馬たちを船で運ぶのは何となく不安がある。

そういうわけで、明日はミズリグ村から出発して山越えを目指すということになった。



翌日朝早く、ミズリグ村の入口まで来ていた。これから山越えのためにミズールの森へと向かう。

子供たちは、仲良くなったバランとアナベラに別れを告げている。ガイン王国と獣王国は友好関係なので、いつでも来れるだろう。トランプはリーシャに渡しておいたので、彼女からアナベラにプレゼントしてもらった。

またいつか会える日を楽しみに、ダグランさんたちに見送られながら出発した。


馬車は軽快に進んで行く。ミズリグ村からミズールの森はすぐそこだ。

ダグランさんに確認したところ、バランとアナベラに出会った山側に近い道と、ミズリグ村から入った道は途中で合流して峠に向かうそうだ。

だからミズリグ村からミズールの森に入って獣王国を目指すことにする。


それにしても、やっぱり嫌な気配がする。悪い予感とは言わないが、心がざわつくような感じがする。

何となく後ろ髪を引かれるような気がするが、獣王国に行くのが先だ。


「どうかしたの?」


サフィが聞いてくる。今日は俺が馭者をしているが、サフィも操車の仕方を知りたいと言って馭者台に座っている。


「う~ん、何か嫌な感じがするんだよね。悪い予感とかそういう意味ではなくて、空気が淀んでいると言うか気味の悪い気配がするというか。」


「嫌な空気が身に纏わりついている感じ?」


「そうだね。そういう感じはある。」


「それって、六つの災いかもしれないわ。」


「何それ?」


「この大陸で、太古の昔に邪神が封印されたと言われているの。それが六ヶ所あるから六つの災い。ここから近いところで、西の方のモデナ島にあるのよ。」


「そんなのがあるんだ。」


封印ねぇ。神様はそんなこと言ってなかったな。大昔に滅んだ文明があるとは言ってたけど。


「災いはマナを吸い上げ、邪神を覚醒させると言われているわ。本当かどうかわからないけどね。」


そういうことなの? 封印がマナを吸い上げているから、マナが薄くなっているのか。ってことは、俺がマナを持ってきてもあまり意味がないかもしれないじゃん。俺が持ってきた量よりも、封印が吸い上げる量が多ければ結局薄くなるよね。

どういうこと、神様?

封印なんて話はなかったし、邪神なんてのも聞いてない。まさか邪神と戦えってことなの。勘弁してよ神様。


「どうしたの? 何か心配事でもあるの。」


「ん、いや、何でもない。」


はぁ、あまり動揺しちゃマズいね。

サクヤたちのためにも、無事に獣王国に行かないといけない。それにリーシャのこともある。

もしかすると大森林に行くことになるかもしれないから気を付けないと。


油断大敵、諸行無常、ちょっと動揺しているけど気を引き締めて行こう。



――――――――――――――――――――――――



やっぱりシンジは御遣い様なのかしら。

封印の気配を感じ取っているみたいだし、やる事なす事常識はずれなのよね。

でも邪神のことは知らなかったみたい。ユリアーネ様は話していないのかしら。

そうすると封印には近づけない方がいいわね。

帰ったらお婆様に聞かないとダメだわ。


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