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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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26 ギルドの依頼 その三

今日も歩いている。

馬車を馭者さんに任せて別れてから四日経つ。かなり奥まで歩いたようで、岩が多く歩きにくい。そんな場所でも三人娘は元気一杯だ。あれから三人のステータスを見たら結構経験値が溜まっていたので、サクヤに[体力]と[敏捷]を付与した。レミとニナは以前グレー表示だった[経験値増加]が取得可能になっていたので付与してあげた。サクヤは魔法に傾いていて、レミとニナは近接戦に傾いている。だからサクヤにはバランスよく体力面の補強をしてあげた。レミとニナのステータスは、よく見極めてあげたい。このまま近接に傾いていいのかわからないからね。ただニナは近接と言っても、シーフに近い感じがする。今後の成長に合わせて伸ばしてあげたい。


それにしても、岩場というのは結構大変だ。足元に気を付けないと滑りそうだ。今のところはモーリスが先頭を歩いて、危ない箇所なんかを教えてくれる。

偉い身分の人という感じがサフィとモーリスから漂うけど、こんなに危ないところを平気で歩いているところを見ていると、これがこの世界の常識なのかなと思う。やはり乗り物はあまり発達していなさそうだ。身分の高そうな人が、歩き慣れているってそういうことだよね。



足元を見ながら歩いていると、キラキラと光に反射する石が見受けられる。光を反射する石は結構あるみたいで、大きな岩の中にもあるみたいだ。これって水晶だ。しゃがみ込んで手で拾って見ていると、レミが脇から覗き込んでくる。


「キラキラ光ってきれいなのです。これは何ですか?」


「あら、水晶かしら。この辺りには結構あるみたいね。」


周りを見回しながらサフィが言う。

サフィも気が付いたようだ。俺も周囲を見回し、水晶を見てみる。

透明度の高い石もあるようで、レンズのようにきれいなものもある。

ちょっと気になったので、錬金で木を材料に筒を作り、透明度の高い水晶を磨いて筒の前後に嵌めてみる。小さい方の水晶から覗いてみると、遠くがよく見えるようになった。望遠鏡の出来上がりである。


「お兄ちゃん、それは何ですか?」


「ここから覗いてごらん。」


好奇心いっぱいの目で俺を見ているレミに、望遠鏡を渡して使わせてみた。


「おお、すごいのです! 何ですかこれは。向こうの岩が大きくなったのです。」


レミは望遠鏡を覗いて吃驚すると、すぐに目を離して肉眼で岩を見ている。


「お日様を見ちゃだめだよ。目がつぶれるからね。」


レミから望遠鏡を借りて覗こうとしているニナとサクヤに注意する。

望遠鏡はサフィやモーリスにも渡って、それぞれ感心しながら見ている。


「このような物があるのですなぁ。この歳になって初めて見ました。しかしこれは少々危険なのでは。」


「確かに、遠くが見えるのはすごいけど、変なところで利用されないといいわね。」


モーリスとサフィは気になることがあるようだ。

まぁ、誰でも気になるだろうね。望遠鏡そのものに危険はないけど、偵察などの軍事に利用できるからね。こういうものって、使い方次第だと思う。特に見せびらかすようなことをしなければ、使ってもいいんじゃないかな。


「確かに限定して使えばよろしいのかもしれませんが、もったいない気もしますな。」


モーリスは売ればいいのにと思っているようだ。でもね、あまり金儲けに走る気もないんだよね。

確かに前世の知識で物を作れば、いろいろと便利な物ができると思うけど、闇雲に広めるのもよくないと思っている。

傲慢なのかもしれないけど、俺なりに節度は持ちたい。


皆が一通り望遠鏡を見たあと、俺は川のそばまで行って上流を望遠鏡で見てみる。

岩場は急峻で険しそうだ。奥の方を見てみると、暗い陰になっていてよく見えない。よく見えそうな位置を探しながら移動して、再度望遠鏡で上流を確認してみる。どうやら川の上流は、洞窟のようなところから流れ出ているようだ。影になっていた部分は洞窟で、下の方から水飛沫が散っているように見える。あの洞窟が山脈を抜けてヴォルフ大森林まで繋がっているのかな。


サフィとモーリスに洞窟の存在を話し、これからどうしようかと相談する。

洞窟まで確認に行くとしても、周りは危なそうな崖になっているし、例の魔物もいるかもしれない。そんなところに三人娘を連れて行けない。できれば今いるあたりを拠点として三人娘を置いて、俺が洞窟の確認をするということにしたい。

そんなことを二人に話したら怒られた。


「何考えてるのよ。サクヤたちを置いて行くのはいいけど、あなた一人で洞窟まで行くなんて危ないわ。」


「私もそう思います。ですから、ここはサフィーネ殿にお嬢さん方と一緒に居てもらって、私とシンジ殿の二人で見に行くというのはいかがでしょう。」


「……そうね。あの子たちだけにしておくのは危ないし、二人で行ってくれるならその方がいいわね。」


結局モーリスの意見で行くということになった。

まぁ、確かに一人で行動するのはよくないかな。ここは、二人の言うことを聞いた方がいいんだろう。


ということで、俺とモーリスの二人で岩場を進んでいる。

サフィと三人娘は、俺がアイテムボックスから出した家で休んでいる。携帯ハウスは、川を渡ってガルーシャの森の反対側に設定した。例の魔物が想定の大きさだったら、あまり効果はないかもしれないけど、川がいくらかの障害になってくれると期待している。ただ、携帯ハウスの周囲五十メートルくらいの範囲に結界を張っておいたので、魔物は中に入れないと思うけどね。

ところで、幅十メートルほどの川をジャンプして渡って皆に呆れられたのは余談である。


望遠鏡で洞窟を見たときは結構距離があると思ったけど、川からちょっと離れてガルーシャの森の近くを歩っていくと、それほどでもなかった。この辺りはちょうど森との境になっているので、岩場を歩くより楽だ。

しかし、森の木々が所々なぎ倒されているのが見える。例の魔物がやったのかもしれない。それを確認するために、俺はモーリスと森に向かった。


「これはすごいですな。大きな爪で切り裂いたり、根元からへし折られたようですな。どれだけの大きさの魔物なのか……」


モーリスは絶句気味だ。大人数人がかりで抱えるくらいの太い木が、何本も倒されている。

倒されている木は歩くのに邪魔だし、後で使えるかもしれないから、アイテムボックスに収納していく。

これだけ大きな木を倒すくらいだから、相当大きなものがやったのだろう。地面を見てみると、大きな足跡がある。


「これはたぶん狼の足跡でしょう。大きさは尋常ではありませんが。」


モーリスは狼の足跡だというが、その大きさが普通の狼の身体ほどある。


「恐らくサフィーネ殿が懸念していた通り、インフェルノウルフではないかと思います。私も見たことはないので断言はできませんが。」


これだけ大きい足跡だと、フォレストウルフの倍くらいの大きさかもしれない。それだけの大きさで俊敏に動くなんて、災害に遭うようなものだ。そんな魔物と対峙することを考えると、気が重くなってくる。


「これだけ大きいと、簡単に見つかりそうな気もするけど、どうなんだろう。」


「確かにそうですな。ですがあの望遠鏡で見た洞窟を、これだけの巨体で通れるものですかな。」


モーリスはちょっと疑問に思っているようだ。


「どこから来たかはわからないけど、この足跡を残すだけの魔物がいるってことは事実だよね。」


「その通りですな。足跡の形が狼に酷似しており、その大きさが狼ほどあるということですな。」


「あとはその魔物が何頭いるかってことかな。」


「この場所にいたのは大きいのが一頭のようですな。全部同じ足跡のように見えます。ただはっきりしないのですが、小さい足跡もあるようです。ひょっとして親子ですかな。」


う~ん、親子だと面倒かも。子供を守るために親が本気になったりするかもしれない。まぁ、何頭もいるよりはマシかな。一頭相手にしているときに、他の奴に攻撃されたらやっかいだ。

しかしこれだけ体が大きかったら、どれだけ食べるのかな。この辺りの動物が根こそぎいなくなりそうだ。


モーリスと二人で辺りを調べていると、突然木が折れるようなミシミシという音が聞こえ、腹に響くような地鳴りがした。音が聞こえた方向に向かって魔力を伸ばし探知してみると、大きな存在が引っ掛かった。マップ表示を出して見てみると、インフェルノウルフと表示された。どうやら例の魔物は、やっぱりインフェルノウルフだったようだ。

モーリスと二人で音がした方向に向かう。


音がしたところに近づくにつれ、獣の唸り声のような物が聞こえる。

どうやらインフェルノウルフと何かが争っているようだ。


「レッドベアとフォレストウルフでしょうか。争っているようですな。」


モーリスが声を掛けてくるが、その姿は木々が邪魔でまだ見えない。唸り声と木々が倒れるような音だけが聞こえる。モーリスはあの大きな存在をフォレストウルフだと思っているようだ。


「随分派手にやっているようだね。」


木が倒れているのが目に入る。黒い影が飛び上がって巨木の幹を蹴り、大きなレッドベアに飛びかかって行くのが見えた。

レッドベアは腕を振り上げ、黒い影を叩き落そうとするが、黒い影は空中で身を捻りレッドベアの爪をかわして噛みつこうとする。レッドベアは体を開いて黒い影を躱して身を引く。双方とも体の大きさに似合わず動きが早い。


すごい、まるで怪獣大決戦だ。

俺は改めて確認するが、どうやら黒い影がインフェルノウルフのようだ。

しかし、さっき見つけた足跡と比べると小さいように思う。争っているレッドベアと比べても、半分よりちょっと大きいくらいだ。


「魔物って、体の大きさを変えることができるのかな。」


俺は隣にいるモーリスに聞いてみる。モーリスは軽く目を見張って驚いているようだが、表情を戻して答えてくれる。


「体の大きさを変える魔物など、聞いたことがありませんな。」


そうだよね。そんなことできるわけないよね。

でも俺のマップにはインフェルノウルフと表示されている。

これはあれかな。ヴォルフ大森林で育った魔物はいろいろと尖がった成長をするのかな。

ものすごく大きくなったり、大きさが変えられたりと。ひょっとすると、魔法を使う、なんてのもあるかもしれない。マナが濃いせいでそうなるなら、俺の近くにいるとおかしくなったりするというのもあり得るか? でも神様が調節するって言ってたから、影響はないのかな。

そんなことを考えているうちに、インフェルノウルフがレッドベアの首筋に噛みついて勝負が終わった。


インフェルノウルフは息絶えたレッドベアから口を離し、こちらを伺うように見てくる。どうやら俺たちに気づいていたようだ。


さて、どうしたもんかね。


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