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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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22 初めての冒険者ギルド

村の入口では案の定ひと悶着あったが、最終的には身分証を持たない人数分、銀貨を支払って村に入ることが出来た。


揉めたのは三人娘のことだった。

ヒト族の村に現れた幼い獣人の子供が、親ではないエルフに連れられていることを訝しがられた。

サフィの感覚では、エルフが獣人の子を連れていても問題ないみたいだが、それは大陸の東側でのことで、西側であるこちらではあまり普通のことではないらしい。

そもそもこちら側ではあまり獣人を見かけないから、いろいろと警戒されているのかもしれない。


それでも村に入れたからいいけどね。これが隷属の首輪をしたままだったら更に大変だったろうね。

あんな首輪はなくした方がいいと思う。あれは古代文明の遺物を参考に作られたものらしいけど、できれば根こそぎ始末したい。

今後の目標だ。



ところで俺たちは今、冒険者ギルドを探している。

村の入口にいた警備の人の話だと、結構わかりやすいところにあるみたいだ。まっすぐ歩いて右手の方に、それらしい建物が見える。

近くまで来ると、モーリスが教えてくれた。


「ここが冒険者ギルドのようですな。入ってみましょうか。」


俺たちはモーリスに続いて、剣を象った看板のある建物の中に入る。

中にはカウンターがあり、きれいなお姉さんが一人座っていた。カウンターの外にはテーブルがいくつかあり、椅子が備えられている。テーブル側には誰もおらず、閑散としていた。テーブルが置いてある場所の向こう側は壁で仕切られているが、一部が途切れて見通せるようになっている。どうやら向こうは食堂のようだ。

ギルドの隣が食堂だなんてテンプレだね。


「いらっしゃいませ。オリバ村冒険者ギルドへようこそ。」


「こんにちわ。」


カウンターのお姉さんに声をかけられると、挨拶をしながらサフィが近づいていく。


「ちょっといいかしら。」


「はい、何でしょうか。」


サフィがカウンターのお姉さんに話しかけて要件を伝える。

まぁ、俺の冒険者登録なんだけど。


「この人を登録してもらえる?」


「こちらの男性でよろしいですか?」


「はい、ギルドは初めてなのでよろしくお願いします。」


「それでは、こちらの申請書に記入してください。名前以外についてはできる限りで結構です。」


「わかりました。」


俺はお姉さんにもらった紙を持って、テーブルの傍にある椅子に座る。

テーブルに置いてあったペンを持って紙を見ると、名前や職業、得意技などを書き込むようになっている。当たり前のことながら、全部異世界の言葉で書かれているはずなのに、なぜか読むことができる。


これが[異世界言語]のおかげなんだね。まったく見たことのない文字を読むことができるというのは、不思議な感覚だ。そして、自分の名前を書き込んでいく。知らない文字を書くことができるというのも違和感一杯だ。まぁ、書き込むと言っても名前の構成というか、家名だとか、ミドルネームとかよくわからないので、シンジとだけなんだけど。職業とか得意技とか聞かれても困るよね。どう書いたらいいのか迷ったので、サフィに視線を向けると、サフィは仕方ないわね、とでも言いたそうに助言してくれる。


「職業は、わからなかったら書かなくてもいいわよ。得意技は剣とか魔法とか書いておけばいいんじゃない。」


「ありがと。」


俺はサフィに言われるがまま記入して、カウンターのお姉さんに紙を渡した。


「はい、ありがとうございます。それではカードを作成しますので、少々お待ちください。お待ちいただく間、冒険者ギルドの規定について説明いたしましょうか?」


受付のお姉さんが親切に聞いてきたけど、サフィを見ると首を振っているので


「ありがとう、でも仲間に確認するから今はいいですよ。」


と、断った。


「わかりました、何かあればいつでもお尋ねください。」


そう言うと、お姉さんは俺が記入した紙を持って、カウンターの奥へと入って行く。向こう側は事務所のようだ。

俺が皆のいるテーブルに戻ろうとして歩き始めたら、入口の扉が開いて騎士のような恰好をした人が数人中に入ってきた。

騎士のような人は一瞬俺たちに視線を向けてから、カウンターの傍で職員らしき人と二言三言言葉を交わし、俺たちの方に寄ってくる。


「ちょっとお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」


騎士みたいな人だから、もっと横柄な態度かと思ったけど、割と丁寧に話しかけてくる。


「自分は、このラインバッハ辺境領の領軍に所属するサムと申します。そちらの獣人のお嬢さん方についてお話を伺いたいので、別室にお越し願えますか。」


言ってることは丁寧だけど、雰囲気は有無を言わさぬ感じがする。これって威圧なのかな。面倒だけど、断るともっと面倒になりそうだから素直について行くことにする。



俺たちはサムに案内されて会議室みたいな部屋に通された。

三人娘は不安そうに俺を見ているが「大丈夫だよ。」と声をかけて頭を撫でてあげた。レミとニナは嬉しそうにしていたが、サクヤはまだ心配なようだ。


会議室にはテーブルがあり、そのテーブルを挟んで対面にサムが座る。

サムが座ってから、俺はみんなの紹介をする。紹介と言っても名前を伝えるだけだけど。


「単刀直入にお聞きします。そちらの三人の獣人のお嬢さん方とはどういった関係ですか。」


サムに聞かれたが、どう答えたものだろうか。

俺が悩んでいると、隣のサフィが口を開いた。


「その前に確認したい。この場は尋問なのか。そうであるなら我々には答える義務はない。帰らせてもらおう。」


おお、サフィが強気だ。前世が日本人の俺にはとてもマネできない強硬さだ。出会った頃の尊大な物言いで拒否している。


「お待ちください。誤解があるようですが、我々はそちらの獣人のお嬢さん方が、なぜラインバッハ領にいるのか、これからどこへ行くのか確認させていただきたいだけなのです。」


サムは困り顔でサフィに答える。なんかサフィの迫力に圧されている。

サフィってやっぱり、どこかのお偉いさんじゃないのかな。兵隊さんの圧力に負けない、高貴な者のオーラで圧している空気を感じる。

それでも丁寧に対応してくれるサムも偉いね。


「そなたたち領軍は、旅人になぜ旅をするのか、どこへ行くのかいちいち尋ねるのか。それこそ答える必要はない。」


サフィが圧していく。すごいね。俺が相手しているわけじゃないけれど、手に汗握っちゃいそうだ。


「……わかりました。ハッキリ申し上げます。先日ラインバッハ辺境領内、正確にはガルーシャの森で奴隷取引が行われるという情報を掴みました。そのため、我々領兵が駆り出され対象者の捜索を行いましたが、残念ながら見つけることはできませんでした。ところが、領都に帰投する直前に、三人の獣人の娘を見たという情報を掴みまして、確認を行っているところなのです。」


へぇ~、初対面の怪しげな人間にそんな情報まで話すんだ。随分と真摯に対応してくれるね。相手がエルフのサフィだからなのかな。


「…はじめからそう言えばよいのだ。そなたの推察の通り、この三人は故郷でヒト族の奴隷狩りに遭い、ここまで連れてこられた。ところが、森の中で魔物に襲われ、この三人以外は餌食となったようだ。シンジが魔物から三人を助けて、獣王国に送っていこうとして今に至る。我は三人を、特にサクヤを保護しようとこちらへ参ったが、三人が助けられた後に出会い、こうして共に獣王国を目指している。」


「サクヤ殿を保護するとは……」


「…サクヤは見ての通り狐人族で、我が森に住まう者だ。だから保護しに参った。」


「……そういうことでしたか。それでは改めてお願いしたいのですが、我が主ラインバッハ辺境伯に面会していただけないでしょうか。」


「なぜ我らがそなたの主と面会しなければならんのだ。我は一刻も早くこの娘たちを親元に返さねばならん。話はこれで終わりだ。退席させてもらう。」


そう言うと返事を待たずにサフィは立ち上がり、俺たちに目で合図をしてきた。モーリスは気を利かせて先にドアを開け、サフィが出ていく。颯爽としてとても様になっている。かっこいいね。あまり見惚れてもいられないので、俺は三人娘を連れてサフィに続いて部屋を出ようと動き出す。

サムは何か言いかけたが、諦めて俺たちを目で追うだけだった。ちょっと気の毒になったので、軽く頭を下げてから退出した。



ギルドの受付があるカウンターまで戻ってくると、さっき俺の冒険者登録を受け付けてくれたお姉さんが声をかけてきた。


「シンジさん、カードができましたのでお渡しします。」


俺は三人娘に先に行くように促して、カウンターへ行きカードを受け取る。

なんの変哲もない銀色のクレジットカードみたいなカードだ。


「カードの端に指を当てて、魔力を込めていただけますか。」


俺は言われた通りカードに指を当てて魔力を込めてみた。

すると淡くカードが光り、すぐに消えて元通りになった。


「それでそのカードはシンジさんのものです。魔力で本人識別をしますので、他人はそのカードを使えません。それからカードを紛失した場合、実費がかかりますので注意してください。」


「ありがとう。なくさないようにするよ。」


俺はお姉さんにお礼を言って、ギルドでやりたかった魔石の換金について聞いてみる。


「討伐した魔物の魔石を引き取ってもらいたいんだけど、可能かな。」


「はい、大丈夫ですよ。あちらのカウンターで処理していますので、そちらでお願いします。」


「ありがとう。お手数かけたね。」


お姉さんに軽く礼をしてから指定されたカウンターへ向かうと、中年のオヤジが暇そうにしていた。


「すいません。魔石を引き取ってもらうのは、こちらでいいですか。」


「おう、ここで魔石や獲物の買い取りをしているぜ。」


「それでは、これだけお願いできますか。」


俺は森の中で倒した魔物の内、一角兎やビッグボア、フォレストウルフなどの魔石を出してカウンターに並べていく。

事前にサフィやモーリスと相談したけど、ビッグヴァイパーやブラックタイガーはそう簡単に討伐できる魔物ではないし、後々役に立つかもしれないから取っておいた方がいいと言われていた。

それ以外の魔物もそれなりの物なので、馬車などを手に入れる分には十分らしいから、サフィたちに言われた通りの魔石を引き取ってもらう。


それからこの先獣王国に行くに当たって、貨幣が違うから注意するように、とも言われている。

なんでも、ガイン王国のお金を獣王国で換金することはできるけど、換金場所は王都なので、いちいちそこに行くのは面倒だそうだ。確かに面倒そうだ。だから向こうに行ったら、向こうのギルドで換金した方が楽でいい。

そういうわけで、今回は馬車のための限定で買い取りをしてもらうことにした。


「おいおい、こんなにあるのかよ。しかも、ビッグボアやフォレストウルフもあるのか。」


それほど多くしたつもりはないけど、多かったかな。


「すまないが、査定の結果は明日まで待ってもらってもいいか。査定の結果もそうだが、何より今日はこれだけの金は用意できないと思う。」


「そうですか、わかりました。明日の昼頃にでも来ればいいですか。」


「ああ、その頃には準備できてるぞ。」



結局、換金は明日になった。

それじゃあ、宿を探さないといけないね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 平和ボケした事無かれ主義の日本人とか関係ないと思うけどね(笑)命を軽んじる世界で理不尽なら抗わないと死ぬんだぜ?そのときに強気に出れなきゃただの自殺志願者だな。
2021/12/16 12:40 退会済み
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