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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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20 ガルシア湖の朝

俺は今、モーレツに感動している。

出発しようと家から出ると、朝日を浴びた周囲の景色がすばらしくて絶句した。


昨日は薄暗くなるギリギリまで移動していたのでよくわからなかったが、目の前に広がる湖が朝日を浴びて輝いている。

視界一杯の水が輝いて見えるので、遠くに見える山々を薄く淡いものにしている。

光が織りなす幻想の世界が、刻の流れから置き去りにしていく。


前世でも湖は見たことはあるし、似たような景色に出会うこともあった。

それでも今眼前に広がる景色は唯一無二に感じる。

この貴重な瞬間が、永劫に続いてほしいと願ってしまう。



「とても美しいでしょう。」


絶句していた俺にサフィが声をかけてきた。


「……そうだね。言葉が出てこないよ。」


「こことは違うけど、私が住んでいる森にも近くに湖があって、また違った美しさを見せてくれるわ。」


「そうなのかい。俺はあまり世界を知らないから、いろいろと見て回りたいものだね。」


「じゃあ、私が案内してあげるわ。」


サフィにそう言われたとき、ハタと気がついた。

そう言えば神様は、案内人を用意してくれると言っていた。

あれはどうなったのだろうか。三人娘を助けたり、魔物を倒して移動したりで忘れていたけれど、案内人ってどこにいるのかな。


まさか”案内人です”なんて看板を背負っているわけじゃないだろうし、どうやって探せばいいんだろう。

でも神様が付けてくれた案内人だから、向こうが俺を見つけてくれるかな。

気にしてもしょうがないし、この先出会えるよ、たぶん。



「どうかしたの?」


黙り込んでしまった俺の顔をサフィが覗き込んできた。

まさかサフィが案内人? それだったらそう言ってくるよね。神様に言われてこの世界に来たけれど、あなたが案内人ですか、なんて聞けないからなぁ。本当のことを話しても、信じてもらえるとはとても思えない。この世界での神様の扱いや、宗教というか信仰がどういう位置づけになっているのか不明だし、考えても結論が出そうにない。

まぁ、なるようになるさ。


「いや、何でもないよ。どんな景色が見られるのか考えていただけだよ。」


「お兄ちゃんは、旅に行くですか?」


いつの間にかそばに来ていたレミが、俺の手を取りながら声をかけてきた。


「…そうだね。みんなを送って獣王国に行った後は、旅に出るのもいいかな。」


「それならレミも一緒に行くのです。」


「………アタシも」


レミに続いて、ニナも一緒に行くと言い出す。

う~ん、子供を連れて旅をするのはどうなんだろう。

ちょっと危ないと思わなくもないけど、それは後で考えてもいいかな。


「二人ともありがとう。でも、まずは一度故郷に帰ってからだね。」


俺は、一緒にいてくれるという二人に感謝して、両手で二人の頭を撫でた。


「わたしも一緒に行きたいです。みんなのご飯はわたしが作りますから。」


サクヤが胸元で両手を握り、力を込めている。


「サクヤもありがとう。ご飯は大事だね。でも一度帰ってからにしよう。」


俺はサクヤの頭を撫でながらそう言った。


ほんと、いい子たちだね。

情に(ほだ)されそうだけど、やっぱり旅に連れていくのは危険だよね。それとも、この世界でも子連れで旅行は当たり前なのかな。

何にしても獣王国へ行ってからだ。



俺は、携帯ハウスをアイテムボックスにしまい、三人娘に声をかける。


「さあ、出発するよ。今日はどこまで歩けるかな。」



――――――――――――――――――――――――



少し離れたところでサフィーネとモーリスがシンジたちを見ている。


「あの強力な魔法といい、底の知れないアイテムボックスといい、シンジ殿は一体何者なのでしょうか?」


若干呆れた表情で誰ともなしにモーリスが呟いた。


「何者でもいいわ。シンジといると楽しいし、あの娘たちも幸せそう。それでいいんじゃないかしら。」


「…そうかもしれませんな。幼き者たちを笑顔にしてあげるのは、大切なことですから。」


「でしょう。だから私もシンジについて行くの。」


笑顔で答えるサフィーネに、モーリスは感じるものがあったのか、


「サフィーネ殿、あなたはもしかすると森の女王の一族ではありませんか。」


そう問いかける。

サフィーネはそれに答えず、じっとモーリスを見つめながら逆に問いかけた。


「ヒルデガルド家の者は、隠居すると旅に出るそうね。何のために旅をするのかしら。」


一瞬目を見開いて驚いた後、観念するようにモーリスは言葉を絞り出す。


「……いやはや、敵いませんな。いつからご存じだったので。」


「ビッグボアを倒した魔法剣を見てからね。今では使える者がいないと聞くわ、あなたの一族以外では。それに腰の物は魔剣レイリウスでしょう。現存する数少ない魔剣。」


「…恐れ入ります。」


「それで、あなたはシンジを害するつもりなの? もしそうなら私は全力であなたを止めるし、一族を上げて魔王国を攻めることになるわよ。」


「いいえ、それはありません。魔王陛下には神の御遣いをお連れするように言いつけられております。」


モーリスは神妙に答える。でもすべては答えない。

千年前の悪夢を起こさせないために、御遣いに魔王を滅ぼしてもらうためとは言えない。


「…そう。ならいいわ。」


サフィーネはそう答えると、シンジたちを追うように歩き始めた。


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