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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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19 ガルシア湖を目指して

草原を流れていく風がとても心地よい。

サクヤに尋ねたら、今の季節は初夏にあたるようだ。この世界にも前世のように、春夏秋冬の四季があるそうで、今は春が過ぎて暑くなり始める時期らしい。前世でいう五月くらいの気候だろうか。それよりも暑いかもしれない。


ついでに、一年は十二ヶ月でひと月三十日。ひと月は五週間で一週間は六日ということだ。前世と似たような日付感なのでありがたい。


初夏という季節柄、これまで野宿をしていても何とか過ごせてきた。

これが冬だったりすると、雪が降って凍えることになる。神様はこの季節の頃合いも見て、俺を転生させてくれたのかな。

神様には感謝しきれないね。



ところで、俺たちは今草原を歩いている。

見渡す限りの草原を、だ。

正直飽きてきた。


ガルシア湖を目指して歩いているけど、見渡す限り草原が続いている。

湖はおろか、町や村なども見当たらない。サフィに尋ねたら、この先のガルシア湖の南側に行かないと村はないだろうとのことだ。

まぁ、穏やかで見通しが良くていいんだけどね。


森の中にいたときのように、魔物に襲われるということがあまりない。

俺は魔法の訓練というかスキルに慣れるように、草原に入ってからずっと気配を探っているが、魔物が引っ掛からない。さっきからマップを表示しているけど、兎の白点しか表示されない。ここへ来て何となく分かったのは、白点は獣で赤点は魔物を表しているっぽいってことだ。


この草原で狼が兎を追いかけていたが、どちらも白点表示のままだった。

どうやら害意の有無は関係ないようだ。まだ使い方をよく理解していないが、獣は白で魔物が赤でたぶん合っていると思う。マップにはいろいろと条件づけなどができそうなので、その限りではないかもしれないけど。



こうして歩いていることに、俺以上に飽きていたレミとニナは、さっきから兎を探している。


「ニナ、そっちに行ったのです。捕まえるですよ。」


どうやらレミが追い込んだみたいだ。

そんなにムキになって獲物を捕まえなくても、俺のアイテムボックスにたくさん入っているから大丈夫だよ。


夜になれば、作り置きした携帯ハウスをアイテムボックスから取り出し、家の中で休むようにする。

あまり旅をしている実感はないけれど、安全でゆっくり休めるのはいいことだ。そんな一日を繰り返しながら旅を続ける。




今日は、雨が降っている。

いつものように、草原を歩いていたら空が曇り出して雨が降ってきた。雨に濡れたくないので、街道からちょっと外れたところで家を出して休んでいるところだ。


家の中では特にやることもなく、みんな暇そうにお茶している。

それを尻目に見ながら、俺は腕を組んで考えていた。目の前には木の幹から剥がした皮がある。頭の中で念じていると薄い紙のようなものが何枚か出来上がった。ただの紙では破れやすいので、ちょっと魔力を込めてプラスチックみたいに固くしてみる。絵柄は前世の記憶を転写して何とかした。


「おお、すごい。トランプが出来た。」


そう、俺は家の中で暇つぶしができないかと考え、手慰みにゲームを作ってみようと試していた。

俺の錬金スキルは、ある程度の材料となるものがあれば、勝手に加工して他の何かを作り出すことができるみたいだ。これってすごい便利だね。土魔法の延長みたいで、土に限らずいろいろなものを材料として、細かい雑貨を作ることもできる。試してみると楽しくていろんな物を作ってみたくなる。


取り敢えず、家を作るときにも細々とした生活雑貨は作っておいたけど、今度は遊び道具を作ってみる。

トランプやリ〇ーシがあると便利だよね。積み木はさすがに三人娘には幼稚すぎるだろうから、他に何かないかな。女の子が遊ぶ道具って思いつかないね。まさか羽子板なんか作るわけにもいかないし。


そうかバトミントンみたいなのがいいかな。羽じゃなくて軽めのボールにしたやつ。

でも、そんなもの家の中で遊ぶわけにはいかないか。まぁ、トランプとリ〇ーシがあればいいか。


「お兄ちゃん、それは何なのです?」


さっそくレミが釣れた。


「これはトランプだよ。」


俺はそう言ってトランプを裏返しにして適当に並べた。

レミにトランプを捲らせて遊び方を教える。神経衰弱は簡単で記憶力も鍛えられそうでいいね。


レミと二人で遊んでいると、ニナとサクヤもやってくる。

彼女たちにも教えて一緒にトランプを始めた。神経衰弱や七並べ、ババ抜きなど簡単なものを教えていたら、目が興味津々になっているサフィも参加してきた。


「こんなの見たことがないわ。どうやって遊ぶの?」


サフィも一緒になって七並べをやってみる。


「ズルいのです。レミのハートの四が並びたくてウズウズしているのに、誰も五を出してくれないのです。ハートの四が泣いているのです。」


レミよ、これはそういう遊びなんだ。誰もズルくはないよ。って言うか、自分が持っているカードを口に出してはダメだろうに。


「ニャハハ、これで上がり。」


ニナがドヤ顔で最後の一枚を出す。

レミは悔しそうな顔をしているけど、まだ五枚も手元に残っている。

こういう遊びはレミには向いていないんだろうなと思う。ひょっとすると、トランプ自体がレミには向いていないかもしれない。だんだん不安になってきた。誰にでも簡単に騙されるレミが目に浮かぶ……


レミは素直でいい子だからね。徐々に世の中のことを教えていかないといけないね。

俺はトランプの輪から抜け出して、もう一つの遊び道具を仕上げる。平な板に碁盤の目を引き、表と裏が白黒の石を作る。


「ほほう、これも遊びの道具ですかな。これはどのように扱うのですか。」


レミたちのトランプを見ていたモーリスが聞いてくる


「これはね、こうして石を置いて、交代で石を取り合う陣取りゲームみたいなものさ。」


「なるほど、縦横斜めで自陣の色で挟むのですな。」


「そう。単純でしょ。」


「単純ですが、奥が深そうですな。」


「難しく考えずに、楽しめればいいと思うよ。」


「そうですな。このような日には打ってつけかもしれません。」


そう言ってくるモーリスと、俺はリ〇ーシで遊んだ。



――――――――――――――――――――――――



ただの玩具かもしれませんが、考え方が洗練されているというか、とても興味深いものですな。

トランプにしろリ〇ーシにしろ、手軽に扱えるのが驚きです。

このようなものを、いとも簡単に考案してしまうシンジ殿はいったい………

私などには思いもつかない物を見、想像もつかない考え方をしています。

どうにも私が知っている常識とはかけ離れた、まるで別の世界の存在のような印象を受けますね。


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