18 家があると旅は楽です
食事が終わって、皆それぞれに休憩している。
俺はさっきまで魔法で作っていた家に入り、細々としたところを作っていた。キッチン、トイレ、風呂などの水回りやテーブル、椅子、ベッドなど。結構作る物が多い。そうそう、部屋の入口に扉をつけないと。
一通り作り終えて外で休憩していると、皆がやってきた。
物珍しそうにしていたり、呆れていたり、楽しそうに目を輝かせていたりと様々だ。
「お兄ちゃん。このおうちはどうしたのですか?」
レミは好奇心で一杯みたいで、我慢できずに聞いてきた。
目を輝かせ、楽しみで待ち焦がれたようにワクワク顔だ。
「さっきも言ったように、魔法の練習で作ったのさ。それから中の細々としたところを手直ししてみたんだよ。」
「すごいのです。簡単に作れるのです?」
「そうだね、思っていたよりは楽にできたよ。」
「そうなのですか。お兄ちゃんは天才なのです。」
「そうね、シンジは天災かもしれないわね。」
ちょっと不穏なことをサフィが呟く。
「どういう意味だい、サフィ。旅するときに家があれば、ゆっくり休めていいじゃないか。」
「それはそうだけど、旅する度にいちいち家を作る人はいないわ。」
あぁ、確かにそうだね。でも休むのに家があると便利じゃないか。
いじけそうだが、そこは大人の寛容さで許してあげる。
ここで拗ねるほど子供ではない。
「まぁ、中に入ってごらん。もし、不都合があれば直すから。」
皆を促して、家の中に入ってみる。
一階はキッチン、ダイニング、リビングに風呂トイレ完備だ。おまけに物置もある。
お客様用の部屋も一応作っておいた。
二階はそれぞれ個人の部屋にしてある。
自分の部屋にサフィ、モーリス、三人娘の分もある。
これだけあれば十分だよね。
完璧だ。
なんで皆は不思議そうな顔をしているのかな。
せっかく作ったのだから、レミとニナのように楽しそうにしてほしいな。
「何か、とんでもないものを見ているような気がするのですが。」
「どういう意味だい、サクヤ。」
サクヤはキッチンを見ながら呟いた。
魔導コンロに石窯風レンジ、魔石仕様の水道もある。さすがに食洗器は作らなかったけど、十分と思わないかい。
「これだけ揃っていれば、料理のし甲斐があると思うんだけど、どうかな。」
「そうかもしれませんが、これってどう使うのですか?」
サクヤは魔導コンロを指さして聞いてくる。
俺は、魔導コンロについている魔石に手をやりながら
「この魔石に魔力を流すと火がつくんだよ。そして、このレバーを動かせば、ほら火力が変わる。」
説明しながら実演してみると、サクヤとサフィは口を開けたまま驚いているようだ。
今ならその口の中に虫でも入れ放題だね。
「何よそれ。火の強さを変えるって、そんなことできるの?」
「えっ、魔力の出力を調整すればできるんじゃないの?」
俺はサフィに答えるが、サフィは納得していないようだ。
どうやらこの世界にはたいした調理器具はないようだ。火も竈で薪や炭を燃やして使うようで、火力の調整をレバーひとつで、なんて考え方はないらしい。
まぁ、便利でいいじゃない。
「シンジ殿、このコンロひとつに世の料理人は皆飛びつくと思いますよ。」
モーリスまで呆れている。
でも使い方が分かったからいいでしょ。
その他の石窯風レンジや冷蔵庫などにも驚かれたが、なんか今さらだよね。
作れたものはしょうがない。有効活用すれば問題なし。
一通り家の中を説明した後は食事をして、風呂にお湯を張って皆が代わる代わる入った。お湯に浸かるということにも驚かれたが、風呂から出てきた女性陣は満足げだった。
リビングでゆったりしていると、サフィが話しかけてくる。
「常識がどこかに行ってしまったようだわ。」
「そうかい? ゆっくりできて快適だと思うんだけど。」
「それはその通りだけど、今私は旅の途中だという自信がないわ。」
「何であれ、のんびりできて、快適だったらそれに越したことはないでしょう。」
「そうかもしれないけれど、何か納得がいかない。」
サフィは口を尖らせながら、文句にならない文句を言っている。
美人はどんな顔をしても可愛いものだね。
それよりも、さっきまで燥いでいたレミとニナが静かなんだけど、どうしたのかな。
気になってソファーを見ると、さっきまでゴロゴロしていたと思ったら、二人とも丸くなって寝る体制に入っている。
「二人とも、こんなところで寝ると風邪をひくよ。さぁ、部屋に行ってもうお休み。」
俺が声を掛けると、サクヤが返事してくる。
「はい。ほら二人とも、もう寝ますよ。さぁ、立ってください。」
サクヤは二人に声をかけて、二人を二階に連れて行った。
翌日、自室のベッドで目を覚ますとお腹が重く、両手が動かなかった。
どうしたのかと思ってよく見てみると、右手にニナが、左手にレミがしがみついて寝ていた。
二人を起こさないように、静かに腕を引き抜いて掛けていた毛布をどけると、お腹にサクヤがしがみついていた。
サクヤも起こさないようにどけてから立ち上がり背伸びをする。
昨夜は家のことでいろいろと問い詰められたが、こうしてベッドで寝られるとゆっくり休んだ感じがして心地良い。
さて、着替えてから食事の準備でもと思っていたら、サクヤが起き上がった。
「……おはようございます。」
目を擦りながら挨拶してくるが、まだ眠そうだ。
「おはよう、サクヤ。どうしてここで寝ているのかな。」
俺の一言で目が覚めたのか、サクヤがオロオロしだす。
「あの、これは、その、レミとニナが夜中に起きてトイレに連れていったのですが、帰りに二人がこの部屋に入って寝てしまったので…」
三人娘にはそれぞれ個室を用意したんだけど、昨日は一緒に寝たらしい。
んで、夜中にここで二人が寝てしまったので、サクヤも仕方なくここで寝ることにしたようだ。
まぁ、これまで野宿してきて一緒に寝ていたからね。
「ゆっくり休めたならいいさ。さて、食事の準備をしようか。」
「はい。」
俺とサクヤは食事の準備をするために、一階へと向かった。
皆で朝食をとった後、出発しようと家を出る。
もったいないけど、また作ればいいかなと思いながら家を土に戻そうとすると、レミとニナが近寄ってきた。
「おうちをどうするのです?」
「邪魔だから土に戻そうと思っているけど、どうかしたのかい。」
「せっかく作ったのにもったいないのです。」
「おうちがいい~」
レミとニナが俺の手を掴んで力説してくる。
確かにもったいないけど、このままにはできない。持って行ければいいけどそうもいかない……
あれっ、アイテムボックスに入らないかな。
俺は作った家を、試しにアイテムボックスに収納する。
「おお、入った!」
自分でびっくりしてしまった。
このアイテムボックスは無制限なのか? あれほど大きな家が収納できるなんてすごいね。
念のためにアイテムボックスから取り出して確認してみる。特に問題ない。大丈夫そうなので、家をアイテムボックスに収納して出発だ。
サクヤとサフィは呆然としているけど、気にしない。
モーリスは頭を振っているけど、気にしない。
レミとニナは大喜びだ。また家で休めるから嬉しいんだろうね。
さぁ、出発だ。目指すはガルシア湖だね。
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いったい、どれほどのものがあのアイテムボックスに入るのでしょうか。
レッドベアやビッグヴァイパー、ビッグボアなどの大型の魔物が入っているはずですが、まだまだ余裕があるようです。
と言うことは、魔力量がとんでもないほど多いということなのでしょうが、それほど大量の魔力などヒト族でありえません。
サフィーネ殿があまり気にしていないのは、彼が御遣いであることを知っているから、ということですかね。




