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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
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16 魔物に囲まれました

洞窟の外に出ると、モーリスが倒したゴブリンを集めていた。

俺も広場の端に穴を掘って手伝う。


「どれくらい待てばよろしいでしょうか。」


「そうだね、十分くらいかな。」


モーリスと俺は話をしながらゴブリンを片付けた。


三人娘は、と見回してみると、広場の端の方でレミとニナがしゃがみ込んで何かを探しているようだ。

サクヤとサフィは離れたところで話をしている。

みんな気が抜けたようで大丈夫かなと心配になり、マップで周囲を確認してみるが、特に魔物の反応はない。


そろそろ洞窟のゴブリンも片付いた頃合いと思い、洞窟に向かうがその前に皆に一声かける。


「洞窟の様子を見てくるよ。」


そう言うと、俺は一人で洞窟に向かった。

たぶん中は酷いことになっているだろうから、あまり入りたくないけど、そうも言ってられない。

洞窟の入口に着いてから、中の分岐点を塞いでいた壁を取り除く。


するとかなりの熱気が中から流れてきた。

危なかった、洞窟の中に入って壁を壊していたら大やけどするところだ。慌てて氷を魔法で出し、風魔法で砕きながら中に送り込む。ダイヤモンドダストのようだけど、洞窟の中ではよく見えない。これでどれだけ冷えるだろうか。ダメなら水でも流し込もうか。などと考えていると、マップの奥から赤点が二つ入口に向かってくる。どうやらゴブリンキングが生きているようだ。もう一つはメイジらしい。ゴブリンメイジがいるということは、魔法で防いだのかな。


俺は洞窟の入口から下がり、広場まで戻る。


「ゴブリンキングとゴブリンメイジが残っていたようだ。中から出てくるから注意して。」


広場の端の方にいたサフィとモーリスに声を掛けて洞窟の入口に向き直る。

すると、俺と身長が変わらないくらいのガタイのいいゴブリンが出てきた。隣には子供のようなゴブリンが杖を持って立っている。あれがゴブリンキングとメイジなのか。なんか想像していた姿そのままだな。そう思っていると、突然キングが両手を上げて吠えた。


「ゴアアアアアァァァ。」


ちょっと煩いよ、うちの子が吃驚するだろうが。レミとニナがいる広場の端を見ると、二人が耳を押さえてしゃがみ込んでいる。やっぱり煩かったのかな。何にしても吃驚したようだ。このままでは負けたみたいで癪に障るから俺も吠えてみた。


「ガアアアアアアアァァァァ。」


するとキングは首を竦めて後ずさりした。メイジは両手で杖を握りしめ、俯いて怯えているようだ。すかさず俺はやつらの首目掛けて風魔法を飛ばした。キングもメイジもその魔法で首を落とされ、体を支えることができずに後ろに倒れる。



「いやはやゴブリンキングも一撃ですか。」


そう言って感心したようにモーリスが歩いてくる。だがふと立ち止まると右の方に顔を向けた。

俺もすかさずマップを見てみる。赤点が多数こちらに向かっているようだ。赤点の方角から、バキバキッ、と木が倒れる音がする。



「どうやらキングは仲間を呼んだようですな。」


「そうみたいだね。団体さんのお出ましだよ。」


大きな気配を4つほど感じる。それ以外はオークやゴブリンのようだ。大きな気配は、ビッグボアが2匹とブラックタイガー、レッドベアのようだ。俺の元にモーリスが寄ってきた。それに合わせてサフィや三人娘も駆け寄って来る。


「どうやらビッグボアとブラックタイガー、それからレッドベアのようだ。大きいのは何とかするから、サクヤ、三人でゴブリンやオークを何とかできるかい?」


俺はサクヤに尋ねる。


「ゴブリンは何とかなると思いますが、オークまでとなると……。数はどのくらいですか?」


「う~ん、ゴブリンが八とオークが三かな。」


「それぐらいなら、倒せなくても何とかなると思います。」


「まぁ、無理しないで、すぐにそっちにいくから。」


俺はそうサクヤに言うと、大きな気配に向かって走り出した。


「あっ。」


サフィが何か言いかけたが、魔物は広場のすぐそこまで来ている。早めに対処しないと、サクヤたちが心配だ。

広場から森に入るとビッグボアが二頭見えた。魔法を放とうとしたが、ビッグボアよりも大きな気配を感じた。ブラックタイガーとレッドベアだ。

ちょっと待った。来るのが早い。


そう思ったが相手は容赦してくれない。まったく、異世界はデンジャーだね。

俺はヤバそうな奥の二匹に向けて魔法を放った。ブラックタイガーは首を落としたが、レッドベアは爪で魔法を引き裂いてくる。えっ、そんなのありかよ、と思ったときにはビッグボア二匹に抜けられた。ビッグボアにゴブリンやオークが従っているのが見える。


ヤバい、と思ったが、何とかサフィやモーリスが凌いでくれると信じ、レッドベアに対峙した。

レッドベアは威嚇のためか後足で立ち上がり、前足の爪を振り下ろしてくる。まるでビルから鉄骨が落ちてくるみたいだ。


冗談じゃない、何で熊が赤くてこんなに大きいんだよ。神様これって反則じゃないんですか。俺は神様に愚痴った。それでも状況が良くなるわけでもないので、土で槍を十本ほど作りレッドベアに放つ。


レッドベアは簡単に爪で払い、牙を剥き出しにしてくる。

今度は氷で槍を作り、魔力を込めて固める。固めて、鋭くして牙を剥き出しにした口目掛けて叩きつける。氷槍が口に入るか、というタイミングで雷魔法を氷槍に向けて放つ。氷槍はレッドベアの口に刺さり、頭の後ろへと突き抜け体が一瞬光った。光った後に残ったレッドベアは、首から胴体にかけて筋状に黒焦げができていた。


レッドベアはそのまま前に倒れこんでくる。

俺は慌てて後ろへ下がってみたが、俺がどけた場所にレッドベアは倒れた。


やれやれ、熊がこんなにデカいとは。十メートルくらいあるんじゃないかな。

レッドベアが動かないことを確認してから、俺は後ろに振り返り、ビッグボアが抜けた先に目を向けた。


すると、広場に入ったところでビッグボアは二匹とも倒れていた。

一匹は体中切り刻まれて、もう一匹は首を落としていた。

まぁ、誰がやったか一目瞭然だよね。

広場には、ゴブリンやオークが転がっている。



「サフィ、ビッグボアには風魔法が効くのかい。」


「ご覧の通りよ。でも結構魔力を持って行かれたわ。」


相当魔力を込めて放ったらしい。サフィの額には汗が浮かんでいる。


「お疲れ様だったね。」


そう、一言掛けておいた。


「モーリスは大丈夫だった。」


「はぁ、なんとかなりましたかな。でも続けて何度もあると、年寄りにはきついですな。」


「それでも、余裕そうだけど。」


「いやいや、そんなことはありませんぞ。」


そうなのかな。あまりキツそうな感じはしないけどね。


俺は、土魔法でいつものようにテーブルと椅子を作り、二人とサクヤを座らせた。

それから、レミとニナを呼んで座ってもらう。二人にはよくやったと頭を撫でておく。


周りはマップで確認済で、赤点表示はない。

俺はコップに水を出して、皆に配る。皆が水を飲んでいる間に、魔物をアイテムボックスに収納した。

みんなのところに戻ってきて椅子に座ると、


「森の最強種であるレッドベアを、いとも簡単に倒すとは……。一体あなたは何者なのですか?」


モーリスに聞かれる。


「そう言われてもねぇ。」


「迷子のお兄ちゃんなのです。」


レミがドヤ顔でそう言い放った。ニナも隣で腰に手を当ててドヤ顔を見せる。


「それでは、私と一緒ですな。」


確かにそうだね。モーリスも道に迷っていたし。



――――――――――――――――――――――――



あれほどの魔物を簡単に倒してしまうとは、一体彼は何者なのでしょうか。


私の問いは有耶無耶になってしまいましたが、やはり彼は御遣いなのでしょうか。

ハイエルフのサフィーネ殿も屈託なく従っていますしね。ハイエルフは気位が高く、あまり他人に馴染まないと聞いていましたが、彼女を見ていると普通のお嬢さんに見えますね。


魔王様は、民に類が及ぶからご自分を討てと申されました。お優しい魔王様ならではのことですが、シンジ殿ならまた別の答えにたどり着くのではないでしょうか。

そう願いたいですが、神のみぞ知る、ということでしょうか。


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