15 ゴブリンの巣に行きました
昨日は大物を仕留めることができ、大きな魔石を得ることができた。
夕食の席でひと悶着あったのはご愛敬だ。
ビッグヴァイパー自体高級食材らしく、モーリス以外は口にしたことがないそうだ。それに加えて、唐揚げという料理に驚いたそうだ。何せ全員が揚げ物というものを初めて食べたらしい。
一緒に出した串焼きもある程度好評だったが、唐揚げの衝撃には比べられないようだった。
まぁ、俺の料理スキルのせいかもしれないけど。
俺自身も料理が上手いんじゃないかと勘違いしそうになるくらいだ。
でも肉の下味のつけ方や粉のまぶし具合、油の温度や肉の揚げ方に至るまで、頭の中に指示のようなものが浮かんでくるんだよね。
俺の料理に思うところがあったのか、サクヤが料理を教えてほしいと言ってきた。
俺も、料理することは嫌いではないが、三食いつもだと少々重荷に思うことがないでもない。
サクヤが料理してくれるならありがたい。
そう思ってサクヤのステータスを見て、スキルが取れることを確認してから、[料理]を取得した。
早速、翌日の朝食をサクヤと一緒に準備していると、スープの具に使う野草の処理がきれいに見える。
それと、キノコの出汁加減もバッチリだ。サクヤも目を丸くしていたから、驚いていたんだろう。
おいしいよ、と褒めて頭を撫でておく。
朝食を終えたらあと片付けをして出発だ。
今日も、ゆっくりと進みながら魔物を狩っていく予定だ。
森の深いところから段々と浅いところに出てきているのか、これまでのような狂暴な魔物は鳴りを潜めて、ゴブリンや小動物を見かけるようになった。
いちいち相手にしなくてもいいと思ったけど、サフィやモーリスに言わせると、ゴブリンはすぐに増えるから、見かけたら狩らないとダメだそうだ。
狩るのはいいけど、穴を掘って埋めるのが面倒だね。まぁ、魔法で処理するから大した手間ではないけど。
そう思っていたら、マップにやたらと赤点が表示されるようになった。どうやらこの先にゴブリンの群れがいるようだ。
サフィに目を向けるとうんざりした顔で。
「…ゴブリンのようね。倒しておかないと、後々大変なことになるかもしれないわ。」
やっぱりそうか。倒さないといけないのか。
俺も少々気が滅入ってきた。
「ゴブリンなのですか? レミにおまかせなのです。」
「おまかせ~」
レミとニナはやる気のようだ。
まぁ、この子たちの訓練と思えばいいか。
俺は気を取り直して、三人娘を連れてゴブリンの反応がある方へ向かう。サフィとモーリスには、後ろを警戒するように頼んだ。
木々を避け、草を分け入ると高さ五十メートルくらいありそうな崖が見えた。崖の下には洞窟の入口のようなものがあり、その前は広場のように開けていた。その広場には二十匹~三十匹くらいのゴブリンがいる。
周囲の気配を探ると他には反応はないみたいだ。
洞窟の方も探ってみるが、中までは探知できない。探知できるエリアみたいなものが決まっているのかな。
とにかく広場にいるゴブリンを片付けないといけない。
「それじゃあ、片付けようか。」
三人娘に声をかけて、ゴブリンに風魔法を放つ。
「一番のり~」
ニナが気の抜けた声を上げて、手前のゴブリンに切りかかった。
浅いかと思ったが、首の急所をしっかりと切り裂いたようだ。
「レミもやるです。」
レミも勢いよく飛び出し、近くのゴブリンから相手にしている。
二人とも素早い動きで、縦横無尽に飛び回り、しっかりと仕留めている。
俺とサクヤは、彼女たちの邪魔にならないように、離れた場所にいるゴブリンに魔法を放つ。
広場にいたゴブリンは、あっという間に片付いた。
すぐに洞窟の様子を見たが、特に動きはないようだ。
「これからが本番ですかな。」
後ろからやってきたモーリスが声を掛けてくる。
「そうだね。中を探ってみないとわからないけど、何かいそうだよね。」
俺はそう返して洞窟に入る。
「レミ、ニナ、それからサクヤは俺から離れないように。」
俺は三人娘にそう言って先に進んで行く。
「露払いはお任せください。」
モーリスは言うが早いか俺の前に出て洞窟に入っていった。
「大丈夫なの?」
サフィは、モーリスを尻目に声を潜めてそう聞いてくる。
まだモーリスのことを信じていないようだ。でも、妙なことにはならないと思うんだよね。
「大丈夫だよ。俺やサフィはともかく、この娘たちには何もしないだろう。それで充分さ。」
「そうかしら。」
「ああ、そうだよ。」
まぁ、根拠はないんだけど、弱い者イジメするようなタイプには見えないし、汚い手を使うようにも見えない。
俺の話も真面目に聞いてくれるし、いざというときは魔法で吹っ飛ばせばいいかなと思う。
サフィと二人で話しながら洞窟の中を進んで行く。
中の様子が気になったので、マップを開いてみる。相変わらず俺の視界の左上に表示されているんだけど、サフィには見えないようだ。サフィは特に様子が変わったようには見えない。
マップを見ると、洞窟の中が表示されている。やはりエリアのような区分けがあって、自分がいるエリアのみを表示しているようだ。今いる通路の奥では、いくつかに分岐して部屋がある。各部屋には十個くらいの赤点が見える。部屋の数も十くらいだろうか。一番奥の部屋には強い気配を感じる。ゴブリンキングのようだ。へぇ、やっぱりキングっているんだ。キングだけでなく、メイジやジェネラルもいるみたいだ。
全部で百匹を超えるゴブリンの巣だ。
先を進んでいたモーリスが立ち止まってこちらを見ている。どうやら分かれ道のようだ。
「道が別れているようですが、どうしましょうか?」
「うん、この先部屋がいくつかあって、全部で百匹くらいいるみたいなんだよね。」
「そんなにいるですか。面倒なのです。」
レミが顔をしかめながら言ってくる。俺もそう思うよ。
「確かに面倒だから、ここを塞ごうか。」
「塞いでどうなさるおつもりで、他に出口はないのですか。」
「出入口は俺たちが入ってきたところだけみたいだ。だからここを塞いで中に火でもぶち込もうかと思ってね。」
「ほう、そういうことですか。ならば私たちは外に出ましょうかな。」
「そうだね。そうしてもらおうか。サフィも外で待っててくれるかい。」
「わかったわ、無理しないでね。」
「了解。」
そう言うと、モーリスが先導して入口に向かい、三人娘とサフィが続いた。
俺はそれを見送ってから、直径一メートルくらいのファイアボールを、分岐しているそれぞれの道に放り込んだ。そして、自分が立っていた分岐手前のところで土魔法の壁を出し洞窟を塞いだ。ファイアボールには魔力を込めておいたので、しばらく燃え続けるだろう。
俺はその場でマップを出し、近くの部屋からいくつか赤点が消え始めるのを確認すると、皆を追って外に足を向けた。




