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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第一章 はじまりのガイン王国
11/279

10 経験値

旅を続けるには先立つ物がいる。

余計な心配をしたり、あとあと後悔することのないように、お金を稼がないといけない。

魔物が持つ魔石がお金になるということなので、できるかぎり魔物を狩ろうと思う。幸いエルフのサフィが同道してくれているので、俺一人で三人娘を守りながら魔物と対峙しなくて済む。いくらスキルがあるといっても、戦闘素人一人では危なすぎる。


サフィはエルフらしく、風魔法や弓の腕に秀でている。

普段弓は持ち歩いていないけど、アイテムボックスに入れてあるらしい。サフィに聞いてみたら、アイテムボックスの大きさは魔力の保持量によって異なるそうである。また、アイテムボックス内では時間が経過するので、食べ物なんかはそのうち腐るということだった。

俺のアイテムボックスは神様チートのようだ。


俺は刀の叢雲を抜いて前衛に立つ。魔法も使えるけど、せっかく叢雲と剣聖スキルを神様から貰ったので、使いこなせるようになっておきたい。日本刀は剣と違って、叩きつけるのではなく引き裂くものだと聞いたことがある。

それで、素人の俺がキチンと刀筋を立てられるのか心配になったので、前衛で戦いたいとサフィにお願いした。


「シンジ、左前方よ。たぶんウルフね。」


「了解。」


俺は自分のマップ表示でも確認しながら、ウルフがいる方向に体を向ける。

ウルフは俺の視線の先にある、背の高い藪の中から姿を現した。


ウルフはすぐに飛びかかって来るが、俺は右に体を滑らせてウルフと擦れ違い様、刀筋を意識しながら振り下ろす。ウルフは飛び上がったまま後ろに抜けるが、首から血を流して地面に落ちる。致命傷を与えることができたようだ。


「ウルフ一頭じゃ、相手にならないわね。」


「サフィの指示が的確だからだよ。」


俺は、納刀して仕留めたウルフをアイテムボックスに収納しながらサフィに答える。

俺の気配察知でもわかってはいるが、あらかじめ獲物の場所がわかれば落ち着いて対処できる。それだけでも全然楽だと思う。


「レミもやってみるです!」


「ひとりじゃ危ないよ。」


俺がそう言うと


「手伝う~」


「わたしも魔法で援護します。」


ニナとサクヤが前に出てきた。

三人でやるなら任せてみようかな。


「それじゃ、三人で頑張ってごらん。ちょうど、左の方からウルフが来るみたいだよ。」


俺はそう言って、三人に場を譲る。


「それじゃあ、レミは前に出て。ニナは右側から牽制。わたしが最初に魔法を当てるから、怯んだらお願いね。」


「了解なのです。」


「ラジャ~」


サクヤがさっさと指示を出して、その通りにみんな動いている。随分慣れている感じがする。レミとニナもサクヤを信じ切ってるみたいだ。

なんか、鉄壁のフォーメーション、って感じだ。


そうするうちに、背の高い草が揺れてガサガサ音がしたかと思うと、ウルフが飛び出してきた。

サクヤが右手を前に出して風魔法を放つと、ウルフは空中でバランスを崩し、後ろに仰け反る。レミがすかさずウルフに切りつけるが浅いようだ。ニナは駆け寄って足を切りつける。ウルフは顔を上げ、立ち上がろうとするが足を切られて踏ん張れない。すかさず右に回り込んだレミが切りつけるが、ウルフは牙を見せながらレミに噛みつこうとする。するとニナがすばやくウルフに近づき、首を切り裂いた。ウルフは一声上げるとその場に倒れて動かなくなった。


「やったのです!」


「勝利~」


レミとニナはハイタッチして喜んでいる。思っていたよりも、鮮やかに倒してしまった。

獣人族ってハンパないなと感心してサクヤに声をかける。


「サクヤたちは随分手馴れているね。」


「そんなことはないです。夢中でしたから、良く分かりません。」


「三人共、息ピッタリだね。」


「そうですか? そう言われると嬉しいです。やるならあんな感じかなと考えていたので。」


サクヤは少し照れながら、二人を褒める。

それにしてもうちの子たちはすごいなと思い、気になったので三人娘を鑑定してみた。


 名前  サクヤ

 種別  狐人族

 性別  女

 年齢  10歳

 スキル 火魔法、風魔法、土魔法、火耐性、魔力操作

 加護  なし

 装備  普通の服

 武器  石のナイフ

 経験値 36,804


 名前  レミ

 種別  犬人族

 性別  女

 年齢  8歳

 スキル 体力、跳躍

 加護  なし

 装備  普通の服

 武器  石のナイフ

 経験値 78,693


 名前  ニナ

 種別  猫人族

 性別  女

 年齢  8歳

 スキル 跳躍、敏捷

 加護  なし

 装備  普通の服

 武器  石のナイフ

 経験値 86,451


それぞれこれまで見てきた動きが反映されているようなスキルだ。


それにしても、俺には経験値なんてなかったけどこの子たちにはあるんだね。

三人ともスキルの選択肢が表示されている。これって取得できるっていうことなのかな。


試しにサクヤの選択肢に表示されている[魔力回復]を選んでみる。すると、サクヤのスキルに追加された。

おお、やっぱり取得できるんだ。

だったらレミには[敏捷]と[見切り]を、ニナには[体力]と[縮地]を取得する。


三人ともスキルの選択肢の中に[経験値増加]があったが、グレー表示で選択できないようになっている。これは経験値が足りないってことかな。様子を見て、取得できるようになったら取得してあげよう。スキルの取得は、ちょっとした目標になっていいかも。


でも、経験値が見えるのっていいよね。何で俺のは見えないんだろう。そう思って自分のステータスを見てみる。

すると経験値は表示されなかったが、スキルに[索敵]と[隠密]が増えていた。


これってどういう仕組みなんだろう。自分のスキルは操作できないけど、他人のは勝手ができるって微妙だよね。

なんか余計なことをしているような気分になる。

でもこうして三人娘にスキルを付与してあげれば、自衛することもできるだろう。将来どうなるかはわからないけど、選択肢が増えるように育ててあげることもできるかな。


それにしても、経験値ってレベル上げに関係するんじゃないのかな。でもステータス表示のどこにもレベルは見当たらない。まぁ、あの子たちが強化されるならいいことだと思えばいいか。ちょっとスキルについてひとりで考えていると、


「この動きに付いて来るのです!」


「むむっ、負けない」


レミはさっきよりも素早い動きで地面を蹴り、木の幹を蹴り、枝伝いに他の木に飛び移り縦横無尽に移動している。

ニナは残像を残しながら数メートルを飛ぶように移動している。


あれっ、マズイかな。二人とも、メチャメチャ動きが良くなっている……


サクヤとサフィは呆気にとられて二人を見て、俺を見てくる。

何か新しいスキルでも取れたんじゃない、と言って俺は適当に流した。俺が何かしたと思われてるのかな。まさかそんなことはないよね。



陽が暮れてきたので野営と食事の準備を始める。

もう何度もしてきたことなので、さすがに慣れてきた。相変わらずレミとニナの二人は競うように食べる。これだけ食べっぷりがいいと、作っている方もうれしくなってくる。今は材料がないから作れないけど、できればお菓子とかも作ってあげたい。


嵐のような食事が終わって片付けてしまえば、あとはもう寝るだけだ。

昼間は狩りをして動いたからか、三人娘は船を漕ぎはじめている。アイテムボックスから毛皮を出して掛けてあげればすぐに夢の中だ。

三人が寝付いたのを見て、サフィが話掛けてくる。


「この子たちほんとにどうしたのかしらね。レミとニナはあんなに動きが早くなったし、サクヤは魔力が回復したようなことを言っていたのよね。」


サフィは疑わし気に俺を見ている。

ステータスを見ていたらスキルが取れました、なんて言ったらどうなるんだろう。ゲームじゃないんだからステータスが見えるなんて変だよなぁ。俺は曖昧に笑ってごまかした。


サフィは何か言いたそうだったが諦めたようだった。


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