102 帝都への川下り
俺たちは昨日泊った宿を出て、ベスビオス山の麓から帝都近くを流れる川の船着き場に来ている。
今日はこの川を下り、帝都を目指すことになる。帝都側の船着き場には明日の夕方くらいに到着する予定だそうだ。
この船着き場には俺たちと一緒に来た兵隊さんだけでなく、一般の旅行者みたいな人もいる。
そのせいかこの辺りはかなりの混雑だ。
これほど兵隊さんがいたら一般の人は迷惑だよね。
ああ、でもこの場合は兵隊さんが優先されるのかな。国家権力って怖いよね。
荷物を運んだり馬を連れている兵隊さんたちをかき分けて、桟橋までやってくる。
人が多くてここまで来るだけでも大変だよ。船を早く用意したくて急いだけど、子供たちは大丈夫かな。
そう思って後ろを振り返ると、兵隊さんの肩を足場にポンポン飛び跳ねるレミとニナが見える。
あらら、いつの間にそんなことできるようになったの、二人とも。
それはちょっと危ないね。
二人が飛んでくる方に向かって行くと、うまい具合に二人が俺の肩に腰を下ろしながら着地した。器用なもんだ。
「人が多くて大変なのです。」
「………」
レミが文句を言い、ニナが頷いている。
でもね、人を蹴って移動するもんじゃないよ。危ないからね。
兵隊さんも何か言いたげにこちらを見るので軽く頭を下げておいた。
うちのかわいい子たちに足蹴にされるくらい、大したことないよね。
そうしていると、兵隊さんの上の方にリーシャの姿が見える。
えっ、空飛ぶリーシャ?
良く見ると、サラの前足にリーシャが掴まっている。
サラは重量ギリギリなのか、ヨロヨロとよろけながら飛んでいるように見える。
俺の頭の上まで来るとリーシャは手を離して落ちてきた。
俺は肩にレミたちを乗せたまま、落ちてきたリーシャを抱える。
「危ないよ、リーシャ。落ちたら大変でしょ。」
「リーシャをおいていくのがわるいの。」
リーシャに怒られてしまった。
まぁ、急いで船を出そうと思っていたからね。
ちょっと、悪いことしたかな。
そう思っていると、俺の腕に収まったリーシャの上にサラが落ちてきた。
サラは疲労困憊のようだ。
お腹を上にしてゼェゼェいってる。
サラも大変だったね。
そこへサクヤと手を繋いだサフィがやってくる。
「そんなに急がないでよ、人が多いんだから。」
へいへい、失礼しました。
すぐ後ろにはモーリスがいる。皆揃ったようだ。
ドランたちは、双胴船に厩舎を出してから連れてくることにしている。
それじゃあ船を出そうか。
俺は、桟橋の端の方の船がないところにやってきて双胴船を出した。
「おお~。」
後ろの方にいた兵隊さんたちが驚いているようだけど気にしない。
このまま船に乗って行きたいけど、隊長さんには話しておいた方がいいよね。
それにドランたちも連れてこないと。
「それはそうよ。何、このまま黙っていくつもりだったの?」
いや、それは、そんなことはないですよ。
「まったく、人のことは言えないわよ。あなたも随分とイラついているんじゃないの?」
う~ん、そうなのかな。ちょっと自分たちのペースじゃないことでイライラしているかもしれない。
そんなことを思いながら、双胴船の上に携帯ハウスと厩舎を出して船の準備をする。それから隊長さんと話をするために、兵隊さんたちの後ろでこっちを見ていた隊長さんのところに向かった。
「いかがされました? 突然船が現れたように見えましたが、あの船でこの川を下るおつもりですか。」
「ええ。そうしようかと思ってます。これだけ大きい船が行き来できるなら、あの船でも大丈夫ですよね。」
「…それはそうかもしれませんが、できればこちらの船に乗っていただけるとよかったのですが。」
「ちゃんとそちらの船について行きますので大丈夫ですよ。」
「そういうことではないのですが…」
隊長さんには無理矢理納得してもらい、俺たちは双胴船で行くことにした。
どうにも彼らと一緒というのは落ち着かないんだよね。
そうして準備が終わると、兵隊さんたちを乗せた船は出航していく。
双胴船の船尾につけた駆動装置を動かして、俺たちもその後ろをついて行く。
どれだけ距離をとればいいかわからないけど見失わない程度だったらいいかな。
こうして川下りが始まった。
朝出航して昼が近い今も、双胴船は順調に川を下っていく。
気になっていた波も川幅が広いせいかそれほど立っていない。
川の向こう岸が見えないってすごいよね。まるで湖の上にいるみたいだよ。
「お兄ちゃん、釣りしたらダメですか?」
う~ん、そうだね。
せっかくだから釣りでもしようか。
でもその前にお昼ご飯だよ。
レミたちを連れて家に入り、お昼ご飯にする。
今日は簡単にサンドイッチとローストボアだ。
ローストボアには醤油ベースのタレを用意した。これが結構いけるんだよね。
子供たちも喜んで食べてくれる。
食後のデザートは果物にしようか。
食事が終わったら、レミたちと一緒に釣りをする。
ウテナ湖で使った釣り竿を出して、レミとニナに渡す。ニナ先生、今日もよろしくお願いします。
何か大物がかかるといいね。
「あの、よろしいのですか? 向こうの船からこちらを見ているようですけど。」
子供たちと並んで糸を垂らしているけど、サクヤが心配している。
「いいんじゃないかな。特に釣りしてはダメって言われていないし。」
「あの状況で、わざわざそんなこと注意してくるわけないでしょう。」
サフィがいつの間にか甲板に出てきていた。
あれっ、サフィも釣りしたかった?
「そうじゃないわよ。向こうの様子はどうなのかなと思って見に来たのよ。」
先を行ってる船には特に変わった様子はないみたいだけど。
「でも私たちが別の船で行くと言ったら、急遽もう一隻の船を仕立てたでしょう。そっちはどうかなと思ってね。」
サフィが気にしている船は、先を行く船よりずっと小さいけど俺たちの後ろをついて来ている。
まぁ監視用なんだろうけど。大変だね。
「あなたがそれを言うの?」
いや、だって彼らと一緒の船に乗りたかったの? 俺は勘弁してほしいね。
「そうなんだけどね。」
サフィには何か引っかかることがあるのかな。




