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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第四章 享楽の都
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101 軍隊と一緒

俺たちはイシュベルク神聖帝国の帝都イシュタークへ行くために、帝都親衛隊のヴォールギン隊長たちと一緒に旅をすることになった。

旅と言っても、途中で川を下るから二、三日くらいで行けるらしい。帝都って、結構近いんだね。


俺たちが隊長さんと一緒に行動し始めると、石壁で囲まれた街の方から兵隊さんたちが合流してきた。

街で待機していた親衛隊の人たちらしい。馬に乗っている人も多いようだけど、半分くらいの人は徒歩でついて来ている。

その親衛隊二百人ほどが足並み揃えて俺たちの前後を挟み行軍を始めた。


他のグループと一緒に移動するのって面倒だね。

まぁ、グループというか軍隊なんだけど。


傍から見れば壮観なのかもしれないけど、ずっと監視されているようだし何よりも歩みが遅い。

さっさと帝都に行って終わりにしたいんだけど。


「こうなったらそれも無理ね。彼らについて行くしかないわ。」


サフィが諦め顔でそう言う。そんな簡単に言わないでほしいな。

俺たちは今馬車の中にいる。馭者はモーリスが変わってくれた。

俺やサクヤが馭者をしていると、何か面倒事でも起きると思っているようだ。


「ほっほっほ、傍目に見れば向こうの兵たちはこちらの事を理解できないでしょう。余計な詮索をされてもつまらないことです。」


そう言うと、モーリスはさっさと馭者台に座ってしまった。まぁ面倒事が避けられるならありがたいのかな。

そうしてモーリスが馬車を動かしてからずっと山裾を走っている。


こうして大人数に囲まれていると、自分が悪い事して運ばれているようだ。

相手が軍人さんだからなおさらだ。


「あら、それは疚しいことがあるからそう思うのではなくて。」


サフィがニヤニヤしながら茶々を入れてくるけど、そんなことはない。たぶん。


「まぁ、向こうからすれば得体のしれない連中に見えるでしょうね。私が言ったことすべてを信用はしていないでしょうし、皇帝に害があるかもしれないと思っていてもおかしくはないわ。」


「…それって、帝都への移動中に川に落ちて行方不明とかあり得るってこと?」


「まぁそうね。そういうこともあるんじゃないかしら。」


やっぱりこのままトンズラしようか?

とっても面倒になってきた。

うちの子たちに何かあるようなら、速攻で逃げるよ。


「そうね、それでいいと思うわ。あとは彼ら次第。」


了解、なら大人しくしていようか。



そうして軍隊に前後を挟まれ、しばらく馬車に揺られていると、


「お兄ちゃん、お休みしないですか?」


レミが休憩を要求してきた。


馬車の中にいることに飽きてきたんだろう。いつものことだ。

仕方ないね、ちょっと休憩していこうか。


「大丈夫なの。」


サフィが心配してくれる。

まぁ、軍隊に囲まれている中で馬車一台だけ休憩するっていうのも変かもしれないけど、うちの子たちの安息の方が大事だからね。

俺たちが多少休憩しても、ちょっと馬車を急がせれば歩いている彼らに追いつけると思う。

彼らにただ従ってついて行くのも何か釈然としないしね。


馭者台の仕切りにある窓からモーリスに休憩を告げる。


「承知しました。馬車を端に寄せますのでお待ちください。」


モーリスは俺の言葉に澱みなく馬車を操車していく。

何事もなく、いつも通りだ。


「あなたたちったら……」


ちょっとサフィが呆れ気味だけどいいよね。

馬車が停車したあと、いつものようにテーブルを出してオヤツの準備を始める。

レミやニナたちはすぐに馬たちのところに行き、水を用意してくれている。


そんないつもの休憩を始めていると、俺たちの後ろをついて来ていた兵隊さんの一人が慌ててやって来る。


「いかがされましたか?」


ちょっと焦り気味に聞いてきた。


「馬たちも歩き詰めでしたし、ちょっと休憩します。」


兵隊さん相手に何のことはないと言い切ると、困った顔で「少々お待ちください」と言って隊列の先頭に向かって走っていく。

有無を言わさず俺たちを帝都に連れて行こうとするんだから、こんな態度でもいいいよね。


馬たちの世話が終わったのか、レミたちが戻ってきたのでアイスを出してやる。

子供たちは嬉しそうにスプーンを口に運び、アイスを味わっている。

そんなのんびり休憩をしていると、


「これは……、いかがされましたか?」


隊長さんが俺たちの姿を見て、声をかけてきた。

さっきの兵隊さんに呼ばれたのかな。


「ご覧の通り、休憩させてもらってます。馬たちが山から歩き詰めでしたから。」


「……そうですか。できましたら事前にお知らせいただけると助かります。」


一瞬眉を顰めたけど、隊長さんはそう答えてきた。


「少々時間も押しておりますので、申し訳ありませんがこのあとは急がさせていただきます。」


全然構いません。歩兵も連れている軍隊の行軍に、うちのドランたちが遅れることはないからね。


「ええ、構いません。何でしたら合流地点さえ教えていただければ、そちらでお待ちしますよ。」


「………いえ、できましたら一緒に移動をお願いします。」


別行動にしようか、と言ったら一緒がいいと言われた。

仕方ないね。この後も兵隊さんたちと一緒に行こうか。



休憩してからしばらく馬車に揺られていると、行列の前の方で何かあったようだ。

少し騒がしくなり、歩みが遅くなった。


「どうやら川のようですぞ。向こうに船が見えます。」


モーリスが馭者台から声をかけてくる。

それなら準備をしようか。

とは言っても船を出すだけなんだけど。


子供たちには馬車から降ろす物を準備させて案内が来るのを待つ。

すると、隊長さんがやってきて馬車の扉をノックしてきた。


「恐れ入ります。本日の予定である船着き場に到着いたしました。明日の朝、船に乗って移動することになります。宿にご案内いたしますので、このまま御移動のほどお願いいたします。」


そうなんだ。今日はここまでなのね。

どんな宿に泊まれるのかな。


そのあと兵隊さんに案内されて、川の傍にある宿に一泊した。

宿は普通の宿で、サフィは特別な部屋を用意されていたみたいだけど、俺たちが泊っている部屋に移動してきて休んでいた。


「お付きの者もだれもいないのに、一人で向こうに泊るのはイヤよ。」


そうのたまっていた。

一人がイヤならサクヤでも連れて行けばいいのに。


「あの隊長の部下らしい女性が何人かいたけど、こんなところで知らない者に囲まれるのは気が進まないわ。」


確かにそうだよね。

こっちの部屋に移動してくるのもどうかと思うけど、みんな一緒の方がいいかな。


結局、サフィが一人で案内された部屋に俺たち全員で移動して休むことになった。そっちの部屋の方がずっと広いからね。ありがたいよ。

そうして山から移動した日は終わった。



翌日朝早くに川まで来てみると、多くの兵隊さんが荷物やら馬やらを船に乗せている。朝から大変だね。

その兵隊さんたちの動きもあってか、船が係留されている桟橋のあたりは人がごった返している。

今日は早い時間に出発するようだ。軍の移動は大変だね。


俺たちも準備を始めた方がいいのかな。

どうしようかと考えていると、


「おはようございます。今日もよろしくお願いいたします。」


隊長さんが挨拶してきた。


「おはようございます。こちらこそよろしくお願いします。」


「今日はこの船で川を下ることになります。」


そう言って隊長さんは目の前の大きな船を見る。

う~ん、残念だけどそちらの船には乗る気はないよ。

準備のために船へ荷物を積み込んでいる兵隊さんたちを見ている隊長さんにその事を伝えないとね。


「わかりました。それでは私たちも船を準備します。」


俺のひと言に隊長さんは目を丸くする。


「えっ、どういうことでしょうか?」


不思議そうな顔をして、隊長さんが聞き返してくる。


「船はありますので、皆さんの後からついて行きますよ。それでは準備がありますのでのちほど。」


そう言ってさっさと隊長さんと別れる。

いろいろ説明するの面倒だしね。


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