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たのまれごとは旅路のはじまり  作者: 多田シロー
第四章 享楽の都
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99 帝都の親衛隊

「少々お尋ねしたいことがある。」


俺たちの馬車を囲んでいるヒト族の騎士のような人たちのうち、真ん中にいるちょっと年配の人が馭者台に座っている俺に向かって話しかけてきた。


「はぁ、何でしょうか。」


また何か面倒事の匂いがする。

もうプンプンだよ。


「この先で魔物の暴走が起きたと連絡があったのだが、こうして見ると穏やかそうだ。山の方で何か異変はなかっただろうか?」


一人の騎士が俺に話しかけてくると、端にいた人が馬車に馬を寄せて中を見ている。

何だろうな。検問みたいなものかな。

それにしても、何て答えるのがいいのかな。


「山は穏やかですよ。」


とりあえず様子を見ようと思い、当り障りのない返答をしてみる。


「今はそう見えるが、昨日、一昨日とどうだったろうか。見た感じ、あなた方は山から下りてこられたようだ。と言うことは、昨日の山の状態をご存じなのかと思ったのだが。」


しょうがないね、嘘はつきたくないし。


「魔物たちが山から下りてきていたようですけど、戻って行ったようですよ。」


自分で言ってても苦しいなぁ、と思う。

案の定、俺の相手をしている騎士さんは、俺のひと言に目を細めている。

怪しいと思っているんだろうな。俺だってそう思うもん。

でもねぇ、何と言ったらいいもんだか。イフリートさんやジンさんのことを話しても通じるかどうかわからないし、魔法で城壁作って防ぎましたって言っても信じてもらえないだろうし、何て答えるのがいいのかね。


「……それはどうしてだろうか? どうして魔物は山に戻って行ったのだろうか。」


「さあ? 魔物の気持ちはわかりません。」


俺がそう答えると、年配の人の後ろにいた若い人がピクリと動く。

イラッ、ときたのかな。

悪いんだけど、答えようがないこと聞かないでほしい。

どうやって山に戻ったかは、俺も知らないから。イフリートさんやジンさんに聞いてほしいくらいだ。


そこで馬車の中を覗いてた人がコソコソ年配の人に耳打ちしている。


「それでは、馬車の中の者に尋ねてみよう。」


ああ、やっぱりそう来た。

止めた方がいいと思うよ。うちのハイエルフはヒト族限定で喧嘩っ早いから。


「シンジ。もうよい。」


あ~あ。声がイラついてるよ。うちの大魔神。


馬車から声がかかると、扉が開いてモーリスが出てきた。

そのモーリスは扉を押さえ、サフィの手を取っている。


「そなたたちは何者だ。」


サフィが馬車より出てきて騎士たちを誰何する。


「さきほどから聞いておれば自分たちは名乗りもせず、うちの者を問い詰めておるようだが、これがイシュベルクの作法なのか。」


サフィがニラみつけるように言う。

そんなに怖い顔しなくてもいいのに。


「そういうあなたは何者だ。」


一瞬サフィの物言いに怯みを見せたけど、すぐに何事もなかったように問いかける年配の騎士。


「無礼者が! 馬上から我に声をかけるとは、イシュベルクの皇帝もお里が知れるの。」


「なっ!」


年配の人の後ろにいた騎士が血相を変える。

おお、一触即発ってやつだ。

ホント、サフィったら種族限定で瞬間湯沸かし器だね。


「やめんか。」


年配の人が後ろにいた若い騎士を止める。

そして馬から降りると名乗り出した。


「ご無礼は許されよ。私はイシュベルク神聖帝国 帝都親衛隊隊長のアレクセイ・ヴォールギンと申す。我らは麓に見えるあの街より魔物の暴走が報告されたので、皇帝陛下より下知を受けて調べに参った。」


そう言って隊長さんは離れたところに見える石壁で覆われた街に目をやった。

魔物の暴走って、昨日か一昨日のことだよね。それともその前から暴走の兆候があったのかな。

帝都からくるの早いね。ここって帝都から近いのかな。


そんなことを考えている間も隊長さんの話は続く。


「ところが、我らが街に着いてもそれほど魔物が降りてきている様子がないので、本隊を街に置いて我らだけで確認しに山へと来てみた。そしたらあなたたちを見かけたので、こうして尋ねさせていただいている。」


「それはご苦労であったな。魔物たちはさきほどその者が答えたように山へと帰って行ったぞ。」


サフィが俺に視線を向けて答える。


「それは………、そのまま信じよと?」


「信じるも信じないもそなたらの勝手、好きにすればよい。それに、こんなところで時間を無駄にするより己が目で見た方が早いのではないか?」


「このエルフめ、無礼もたいがいにしろ!」


後ろにいた若い騎士が、サフィのもの言いに堪らず言い返してきた。


「我をエルフと呼ぶか、この慮外者め!」


サフィが若い騎士をニラみつけた。ああ、微妙に威圧しているみたいだね。

サフィにニラまれて若い騎士は気圧され後ろずさる。膝を着いてしまいそうだ。

その険悪な雰囲気の中、馬車からふよふよとサラが飛んできてサフィの肩にとまった。


「なんと! それは火の精霊王様の眷属ではないか。」


隊長さんが目を見張ってサラを見つめる。

さすがにベスビオス山が近いからか、火の精霊王様のことは知っているようだ。


「この精霊はイフリート様からの預かりもの。そなたらが気にするには及ばん。」


「そうはいかん!」


と、隊長さんが踏み出そうとしたところへ、


「シャー!」


とサラが威嚇の声を上げ、隊長さんへ向けて炎を吐いて見せる。

サラもお怒りのようだけど、彼らを煽ったのはサフィだからね。


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