95 精霊王の闘い
俺と三人娘はサフィたちと合流して、森の火事を消火して回った。
獣たちが逃げ出すほどの火事だったけど、サフィやモーリスたちが消火して事なきを得た。
まぁ、さすがに森にはノーダメージとはいかなかったけど、被害がそれほど広がらなくてよかった。
森に火を着けた下手人は、盛大に殴られている。
風の精霊王にグーパンされて森の外まで吹っ飛んでいった。
「さすがは精霊王様。豪快ですね。」
イフリートさんが吹っ飛んでいるのを見て、サクヤがそう漏らす。
そうだね。あんなの生身の人間が受けたら、コナゴナになりそうだよね。
「それにしてもイフリート様って他の精霊王様とは違うのでしょうか?」
え、何がだい?
「だって、風の精霊王様とか水の精霊王様は優しかったですけど、イフリート様はあんな危ないことをするなんて…」
ああ、たぶんイフリートさんは瘴気のせいで呪われているんだよ。
それでおかしなことをしているんじゃないかな。
あれはホントの姿じゃないんだよ、たぶん。きっと。
「そうなんですね。やっぱり精霊王様はお優しいのですよね。」
……うん、たぶんそうだと思うよ。
「サクヤ、精霊王様たちは自然の摂理を守る者です。私たちが自然を慈しみ、道を外れなければあの方々は優しく見守ってくださいます。」
「そうなのですね。」
サフィのひと言にサクヤはうれしそうな顔を見せる。
う~ん、この世界の精霊王様の立場が分からんから、迂闊なことは言えないね。
でもね、サフィがそういう話をしている傍で肉弾戦してるってどういうことよ。
「おらぁぁ、まだまだじゃあ!」
「まだ目を覚まさんのかぁ!」
いや、ジンさん。
たぶんイフリートさんは瘴気にやられているから、殴っただけじゃダメだと思うよ。
「そのことを風の精霊王様に言わなくていいの?」
言った方がいいとは思うけど、その前に殴り合い始めちゃったからね。
どうしたもんかな、と思ってたの。
「確かに、あれに混ざりたくはないわね。」
ジンさんとイフリートさんが空中に浮かんで殴り合っている。
精霊王様って、力の優劣があるのかな。
「どうなんだろう。私は聞いたことがないわ。同格だと思うけど。」
それじゃあ、いつまで経っても決着つかないんじゃないの?
「……そうね。たぶんそうだと思うわ。」
はぁ、あれに割って入るのは気が重いね。
「ご愁傷様。でもあそこに入れるのはシンジしかいないと思うわよ。」
そうだろうね。俺もそんな気がするよ。
仕方ないね。
サフィと話して憂鬱になりながら、俺はジンさんとイフリートさんのところへ向かった。
二人は宙に浮かんだまま殴り合っている。
このまま放っておいても終わらないだろうね。
「はっはっは、貴様なぞ燃やしてくれるわ!」
そう言うとイフリートさんは大きな炎を出した。
あれじゃあ、ジンさんが飲み込まれそうだ。
それとも風で何とかできるのかな。
でもあれを風で飛ばされたら、辺りが大火事になりそうな気がする。
ちょっとヤバそうになってきたので、二人の間に割って入ろうとすると、
「いいかげんにするの! このめいわくおやじ!」
リーシャが冷気で炎を包み消してしまった。
「おおお、ワシの炎を消すとは、お主何者だ!」
「うるさいの!」
リーシャが叫ぶと、イフリートさんは氷漬けになってしまった。
空中で氷漬けになったイフリートさんは、そのまま地面に落下する。
ドスンッ、という音と共に地面に落ちた氷の塊はそのまま砕けてしまった。
「ぬははは、ワシを氷漬けにするなど片腹痛いわ!」
何事もなかったかのように、イフリートさんは砕けた氷の中から現れて仁王立ちしている。
何て言うか、これ以上相手にしてるとこっちまでおかしくなりそうだ。
さっさと浄化してやろうか。
俺はサラマンダーを浄化したときのように魔力の塊をイメージし、その塊をイフリートさんに投げつけてやる。
塊をその身に受けたイフリートさんは、眩しく光り出しすぐに何事もなかったように光が消えた。
光が消えた後には、オレンジ色の炎を纏ったイフリートさんが立っている。
顔の紫色もなくなって、本来の色なのか赤い顔が見えた。
うん、大丈夫そうかな。
「あれっ、ワシは何でこんなところにいるんだ?」
ようやく気がついたっぽい。
「これはいかがしたのでしょうか?」
浄化されたイフリートさんを前に、ジンさんが戸惑いながら俺に尋ねてきた。
「イフリートさんは瘴気に侵されていたようです。浄化しましたので元通りだと思いますが。」
「そういうことですか…。おい、炎の。我のことがわかるか?」
俺の話に納得したジンさんがイフリートさんに話しかける。
キョロキョロと辺りを見回していたイフリートさんが、ジンさんに視線を向けた。
「おお、風の。久しぶりだな。」
イフリートさんが右手を上げて何事もなく挨拶をしている。
どうやら元に戻ったようだ。
これでひと安心だけど、ものすごく疲れたよ。




