島流し
連載形式と言うのを試してみたかったのではじめてみました。
短編バラしただけ、ってならないと良いな、と思ってます。一応。
ゴーストタウンとでも言うのだろうか。ほとんど住む人も居なくなった住宅街を抜けると、人口の川が流れている。
コンクリートで出来たその川には歩行者用の細い橋が掛かっていた。
「悪いんだけど、夏休み中に女子寮の改築工事があるから、ちょっと部屋を開けてくれないかしら」
まるで選択の余地があるかの様な聞き方だが、断ることは出来ないだろう。
実家に帰るのは難しいと言うと、泊まるところを紹介してくれた。
橋を渡るには階段を登る必要がある。
スーツケースを持ち上げて、階段を登り、橋を渡る。
水は濁っているが、周辺の様子から生活排水とかでは無さそうだ。
何か大きな魚影が見える。鯉だろうか。
橋を渡ると川と並行した片側2車線の4車線道路に出る。
間に植え込みもあるので、反対側まで20m程だろうか。
道の向こう側も空き地や閉店したと思しき店舗らしき建物が並ぶ。
その先はすぐに山の様だ。
橋を渡り切ったところで待っていろと言われたので、スーツケースを立てて長い黒髪をいじっていると、遠くから低い唸る様な音が聞こえてきた。
「V型10気筒、8リッターくらいかな」
この国ではだいぶ前に公道での運転が禁止され、道路には自動運転の電気自動車しか走ることが許されなくなっていた。エンジン音を聞くのは小さい頃以来だ。
もっとも、こんなエンジン音を直に聞いたことはほとんどないが。
黄色い背の低い何かが近寄ってくる。いわゆるスポーツカーと言うやつだろうか。
「アレかな?」
近づいてくるそれは減速するどころかむしろ加速していた。
時速120kmくらいは出ている。過去の記録からこの道の法定速度は時速60km。
現在は閉鎖されていて私有地扱いらしいから関係ないわけだが。
目の前をそれが通過すると、物凄い風圧が襲う。
夏服のセーラー服が盛大に巻き上げられてお腹から下が丸出しになってしまった。
長い髪、セーラーカラー、リボン、そしてスカートがスローモーションで本来あるべき形に戻っていく。
風圧とびっくりした拍子にずれたセルフレームのメガネを直しつつ、一応周辺に誰もいないことを確認すると、1人呟いた。
「わーお」
実は私もあまり車とか興味ないんで、詳しい人怒らないでね