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銀河戦国記ノヴァルナ 第2章:運命の星、掴む者  作者: 潮崎 晶
第2話:混迷は裏切りとともに
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#15

 

「おかしな話じゃの。中継ステーションの障害か何かではないのか?」


 ドゥ・ザンは艦橋の後方、壁に隔てられた執務室で、通信途絶が続いているという報告に赴いた通信参謀に問い掛けた。自分達の現在位置は、首都惑星バサラナルムから遠く離れた、隣国オウ・ルミル宙域との国境地帯であり、バサラナルムとのやり取りはタイムラグのあるリアルタイムの連絡ではなく、複数の中継ステーションを介しての超空間電信しか連絡手段はない。だがそれが現在は全くの不通となっていた。


 見事な八の字髭を右手の指先で撫で付けたドゥ・ザンの問いに、通信参謀は困り果てた顔をして応じる。


「最も距離が近い中継ステーションの報告によりますと、バサラナルム本星からの恒星間通信伝達機能が、著しく不確定化しているとのことです」


「むぅ…」


 それを聞いたドゥ・ザンは、怪訝そうな表情で小さく唸った。最も重要な情報伝達手段の恒星間中継は、宙域内各所に置いた中継ステーション網を使って行うため、どこか一つの中継ステーションに障害が発生しても、別ルートを組む事によって、障害が発生したステーションを迂回させられる。


 しかしその根幹となる首都惑星バサラナルムからの通信が不確定化、つまりどのルートを取って、通信伝達を行うかの指示もなされていないのは、奇妙な状況である。


“はて、いるはずのロッガ家艦隊の不在と合わせ…どうにも腑に落ちんな”


 スキンヘッドの頭頂部を右手で軽く撫でまわしたドゥ・ザンは、何か違和感を覚えて、通信参謀に改めて指示を出した。


「ギルターツの第2艦隊に連絡を取れ。そちらは異状ないか、とな」


「御意」


 頭を下げた通信参謀が執務室を出ていくと、ドゥ・ザンは今度はインターコムで艦隊参謀に連絡を取る。


「ロッガ家への警戒に駆逐艦を何隻か残し、全艦隊にバサラナルムへ引き返すコースを取らせろ。わしが解除を命じるまで、総員第二種警戒態勢のままでな」


 そして自分の乗る『ガイライレイ』も回頭を始め、座席に座ったドゥ・ザンが、重力の移動を背中に感じた時、艦橋から新たな事態を知らせて来た。


「ドゥ・ザン様。長距離センサーに感あり。こちらに接近する艦隊らしき反応を補足致しました」


「ロッガ家か?」


 だが報告して来たオペレーターは意外な事を告げる。


「いえ。反応を捉えたのは我が領域内、バサラナルムの方向からです」

  


「バサラナルム方向からだと?…IFF(敵味方識別装置)は?」


「作動させておりません」


 首都惑星方向から接近する所属不明の艦隊―――自分達が到着するより先にロッガ家の艦隊が領域内に侵入し、待ち伏せしていたのだろうか。だがそれにしては不自然だ。待ち伏せならここで姿を現す意味が分からない。


「ふむ…わかった。そちらへ行くので待て」


 そう言って席を立ったドゥ・ザンは、扉一つ隔てた艦橋へ向かった。参謀や艦長ら艦橋にいる乗組員全員が一礼する中、おもむろに司令官席に座り、戦術状況ホログラムを見据える。そこにはすでに、報告が上がっている正体不明の艦隊が、確認出来る範囲の情報と共に表示されていた。


「艦の総数はおよそ六十…基幹艦隊一個程度じゃな」


 戦力的にこちらと戦うには数が足りない。どこかに別の艦隊が伏せているのか―――戦術状況ホログラムを、周辺の宇宙地図に切り替えて見渡すドゥ・ザン。だが辺りには別動隊を伏せさせておけるガス星雲も自由浮遊惑星もない。一番近くの恒星系でも百六十光年近く離れており、戦闘が起きても関与出来ない距離だ。


 判断しかねる状況に腕を組み、ドゥ・ザンは口をへの字に歪めた。すると接近中の艦隊に新たな動きが起こる。向こうから通信が入ったのだ。オペレーターが報告する。


「前方の艦隊より通信。コーティ=フーマ殿の第5艦隊です」


 同時に先方はIFFを起動した。名乗り通り、戦術状況ホログラム上の所属不明艦隊の表示が、サイドゥ軍第5宇宙艦隊のマーカーへ変化する。緊張の糸を緩める『ガイライレイ』の艦橋クルー達。しかしドゥ・ザンだけは厳しい表情のままだった。コーティ=フーマはドルグ=ホルタに次ぐ腹心であり、信用出来る家臣である。それゆえにこちらへのアプローチの仕方が、通常ルーティンとは異なっている事に引っかかりを覚えたのだ。


「通信スクリーンに出せ」


 ドゥ・ザンは違和感を抱えたまま、指示を出した。そもそも第5艦隊は今回の両面作戦の後詰の一隊として、バサラナルムへ残していたのであって、ドゥ・ザン自身、出動命令など出してはいない。艦橋正面に展開された通信用の平面ホログラムスクリーンに、黒髪を刈り込んだコーティ=フーマの、真面目そうな顔が映し出された。いや、単に真面目そうなだけでなく、その表情は強張っている。


「何事か、フーマ」


 ドゥ・ザンは眼光を鋭くして問うた。





▶#16につづく

 

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