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閑話 錬金術士

魔法使いそれは御伽話で語られる伝説の存在。そんな存在を僕は2人知っている。

しかも1人は僕の目の前で食事している。

…でもこんな事話したって信じてもらえない。それくらいあり得ない出来事なのだから。






僕は元々物作りが大好きだった。きっかけは兄とお忍びで見に行ったお祭りの屋台でみた魔法道具だと思う。子供用だからおもちゃに魔力を通して動かすだけの作りだったけど、とても丁寧に作られていて美しかった。

その日から僕に夢が出来た。それはクラフト士になる事。職業的にはかなりランクは低いと思う。何か物作りをしていれば誰でも名乗れるものだから。それでも良かった。その分頑張ればいいと思っていたから。

…でも現実はそんなに甘くなくて誰も賛成してくれる人はいなかった。悔しくて最初は色々な物を作って見せていたけど白い目で見られていた。そして誰にも相手にされなくなった。でも皆にほっとかれてその分集中出来たので僕はそれでよかった。

しかし平穏な日々は僕の10歳の誕生日で呆気なく終わってしまった。


「なんと。この子は3属性の適正を持っていらっしゃる‼」

その言葉で周りがざわめき出す。そして一人の大きな男が僕の目の前に立った。

「やはりお前は私の子だ。」

すると男は僕の頭に触れた。

「ありがとうございます。父上。」

僕がそう言うとその男は不敵な笑みを浮かべた。

…あぁ。やっぱり僕はこの英雄と呼ばれるこの男が嫌いだ。


それから最低限だった僕の勉強は剣術や馬術など兄と似たようなメニューになった。そのせいで物作りはあまり出来なくなってしまったが時間を見つけてやっていた。この時間が僕にとって祝福の時間だった。でもある日いつものように作業を始めようとしたら道具や材料、作った作品全てが消えていた。使用人に問いただすと父の命令で全て処分したらしい。その日僕は父に呼ばれた。

「お前にもその資格が十分にある。…言いたいことは分かるな?」

「…はい。」

「分かっているならそれで良い。話は以上だ。」

どうしてあの時反発しなかったのか今でも後悔している。誰にも縛られずに生きているつもりだったが、この首はすでに鎖に繋がられていたのかもしれない。


…そして2年後。僕はとうとう耐えきれなくなり、蒸し暑い夜の日に僕は逃げることを決めた。

持ち物は少なくするため剣とお金だけにした。家を抜け出すのは簡単で王都からもあっという間に出られた。こんなに簡単に出られるならもっと早く出るべきだった。

だけど次の日には休んでいた村で僕を探していると言う噂が耳に入ってきた。だから僕はひたすら走った。疲れたら歩いて日が沈んだら寝てそんな生活を何日か続けていると目の前に大きな森が現れた。

___死の森だ。

ここに入ったものは二度と生きては出られない。誰でも知っている話。そして誰もが恐れる森。ここに入ればきっと誰も追ってこない。僕は本当の自由を手に入れる事ができる。震える足を無理に動かし僕は森に入った。


森の中はやけに静かだった。鳥の声は一切聞こえず、微かに聞こえるのは風で揺れる葉の音のみ。それほど歩いていない筈なのにすでに来た道が分からなくなっていた。仕方ないのでしばらく歩いていると目の前に黒い人が現れた。顔はフードを被っていて見えない。そして身体が押しつぶされそうなほどの威圧を感じる。

__きっとこの人は父よりもずっと強い。

僕が固まっているとその人は口を開いた。

「…死にたいのか」

その声は低く、そこからは何も感じられない。だから僕は正直に話すことができたのだと思う。

「…いっその事もう死んでしまいたい。生きていてもあの人の駒になるだけで僕はやりたい事を何も出来ない。」

何故か僕はとても泣きたくなった。ここで泣いても意味なんて無いのに。

「そんな人生に…生きる意味はありますか?」

その人は僕の質問に答える素振りは無い。…いったい僕は何を求めているんだろう。変な質問をした事を謝ろうと口を開いた瞬間その人は答えてくれた。

「…知らん。他人の事など私には。」

「…ははは。そうですよね。すみません。変な質問して。」

僕は急に恥ずかしくなって顔を俯く。

「ただ…お前の人生はお前のものだ。」 

「えっ?」

驚いて顔を上げるとその人は僕の後ろを指差していた。振り向くと森の外が見える。

「…戻りたいなら戻るといい。」

「…どうして、どうして助けて下さるのですか?この森に入った人間は必ず死ぬと聞いています。」

「…ただの気まぐれだ。意味など無い。…早くしなければ閉じてしまうぞ。」

その人はそう言うと森の奥へ足を進める。

「待って下さい‼…名前を教えて下さい‼」

馴れ馴れしいと思ったが聞いておかないと後悔すると思い聞いてみると、その人は足を止めると少しこちらを振り向いて「…グラディウスだ。振り返らずにさっさと行け。」

そう言うと消えてしまった。

僕は「ありがとうございます‼」とお礼を言うと走って森を抜け、家に帰った。


それからはとんとん拍子に進んだ。

1年勉強してから魔術を学ぶため隣国の魔法都市に留学し、17歳で魔術学校を卒業。魔術士になるように進められたが魔術士は色々と面倒なので錬金術士になった。

錬金術士もそれなりにランクは高いし何よりあまり目立たない。そして錬金術士は物作りもする。

錬金術士になってからは王都から離れた所に家を建てそこで色々やっている。最初はかなり反対されたが錬金術士としての成果を出したら短い期間ならこの家にいても何も言われなくなった。

そして錬金術士になってから3年目グラディウス様から弟子の面倒を見て欲しいと連絡が来た。

快く受け入れると、それからは2週間ほどでグラディウス様の弟子エルピスさんが来た。






食事が終わり部屋に戻る。作業するため椅子に座るとエルピスさんを思い出す。

白髪に黒曜石の様な黒い瞳。変わった見た目だが目を奪われるほど美しい。それに表情豊かで一緒にいて飽きないし料理もとても上手だった。

料理をすると言われた時は驚いたけど作ってもらって良かった。僕はあまり料理しないし食事なんて栄養が取れれば良いと思っているから、食べる物にはこだわっていないけどエルピスさんの料理は優しい味わいでとても美味しかった。


さて武器の調整は終わったから明日は防具か。

武器は狩人の武器だから防具も狩人の防具にするか。となると明日はサイズをは測って…

僕は防具のデザインを決めるためペンを持ち気づく。

あ…。エルピスさんじょじょじょ女性だー‼どどどどうしよう‼でもサイズの合わない防具を身につけるのは良くないし、でもサイズを測るには触れないといけないしグラディウス様こう言う大事なことはもっと早く言って下さいよ‼

僕はどうすればいいかわからず頭を抱え机に突っ伏す。









はぁ…今日は眠れる気がしない。

読んで下さりありがとうございます。

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