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今日はおかしい

「おーい!笹本。今日こいつらとカラオケ行くんだけどお前も行かないか?」

クラスメイトの男女5人が俺の前に来た。俺は5人を見た。

「ごめん。今日は晴れてるからやめとくよ」


クラスメイトは不思議そうな顔でヒソヒソ話している。俺は鞄を持ち教室から逃げるように出た。


俺だって…俺だってカラオケに行きたい。俺は生まれて16年1度も友達と外で遊んだことがない。俺は生まれつき変な体質で簡単に外に出れない。どんな体質かと言うと日向に10分間いると体が怪物になってしまうのだ。3分で手足の指が5分で手足のが10分たつと全身が怪物になってしまう。日影に一瞬でも入ってしまえば元に戻るがちゃんと全身が影に入らないと戻らない。ライトなどの光は大丈夫だが日光になるとダメなのだ。全身怪物になったのは1度だけで親が病院から退院して車に乗っていると俺が怪物になったらしい。


なぜこんな体質かは今だに不明で俺も困っている学校の登下校はいつも車、体育はなるべく参加したいので毎回日影のある場所を把握しておかなければならない。席が窓際だとカーテンをすぐ閉めて嫌な顔をよくされる。今の教室はまさにその状態にある。そんなことがありいつの間にか俺は日影好きという噂が流れた。俺は校門の前の木陰で車を待つ。


学校からは生徒がだるそうに出てくる。車が来た。車には母さんが乗っている。だいたいは母さんだが時々父さんや5歳はなれた兄さんが迎えに来る。

「おかえりなさい」

母さんが笑顔で言ってきた。

「ただいま」

俺も微笑みながら言った。



帰っている途中俺はわざと日向に手を出して3分待ってみた。すると両手の指が変色し薄い緑になった。たぶん今両足の指も同じ色になっているだろう。それから5分たつと手が全て薄い緑にかわりどことなく鋭くなっている。このままだと靴と靴下に穴が開きそうなので靴と靴下を脱いだ。それから少しずつ腕足首と色が広がりゴツゴツしてくる触ってみると硬く丈夫そうだ。そのまま体、首と来るのをミラーで見る。そして頬にヒビのようなものが出てきた。気持ちがぼーっとしてくる。そのとき

「ゆうき!?(笹本の名前)何してるの!?」

母さんが顔を真っ青のして言ってきた。俺ははっとしてすぐに手を日向から日影に引っ込めた。すると体はすぐに元に戻った。

「ごめん……」

俺は真っ青な顔の母さんに謝った。それから家に帰るまで一言も話さなかった。


家に帰ると荷物を置きに部屋に行った。部屋は暗く窓はカーテンがかかっていて外は見えない。荷物を置きベッドに寝転ぶ。そして先程の怪物になる途中のことを考えた。ぼーっとして頭はもう寝ている感じで母さんが俺を呼ばなかったらそのまま全身が変わっていたかもしれない。全身が変わったのは物心つく前だったからなにも覚えていない。思い出せないので考えるのを諦め起き上がりリビングに向かった。リビングに近づくと母さんと早く帰ってきていた兄さんが話していた。俺は耳を済ませると案の定さっきのことを話していた。

「あの子自分から日向に手を出していたのよ!」

母さんが大きな声で話している。

「母さん心配しすぎだよ。きっとちゃんと戻ろうって思ってたよ」

兄さんがなだめるように話している。

「だ…だけど…」

俺はドアを開けた。すると母さんと兄さんが俺を見る。

「母さん、お茶持っていっていい?」

俺はこちらを見ている母さんに聞いた。

「え、えぇどうぞ」

俺は冷蔵庫を開けお茶の入った容器とコップを取りだしリビングから出た。リビングからは母さんの声がした。

「聞こえちゃったかしら?」

もちろん聞こえてるさ。この16年間何度も聞いてないフリをしてきてうまくなってしまった。俺は部屋に戻りコップにお茶を注いだ。俺はコップのお茶を一気に飲みほしカーテンを少し開けた。暖かく眠くなる。そんなことを考えながら俺はカーテンを閉め読書を始めた。



朝スズメのうるさい声がする。カーテンの隙間から日光が入ってくる。俺は昨日のことを思い出した。あのあと晩ごはんの間はみんな普通に話してるようにしていたがどことなく嫌な雰囲気が漂っていた。俺はその雰囲気が耐えきれずすぐにリビングを出た。この空気はいつまで続くのだろう。俺は部屋からでるとリビングのドアを開けた。

「あ、おはよう」

母さんがぎこちない笑顔で言ってくる。

「おはよ」

俺も笑顔を作り返す。

「父さんと兄さんはもう出たの?」

俺は辺りを見回しながら聞く。

「えぇ、今日は二人とも朝早くに用事があるみたいで」

いつもの俺と変わらないので少しほっとした表情になった。俺は机の上に並んでいる朝食を見た。白ご飯と味噌汁とサラダだ。正直俺はほとんど食べなくても大丈夫だ。たぶんとういうか絶対この体質のせいだろう。朝食を食べ終えると学校へ行く準備するために自分の部屋に戻る。部屋につくと制服に着替えほとんど使わないスマホを持つ。鞄を持ち下に降りると母さんが車の鍵を持って待っていた。外に出ると日影を通り車に向かう。車に乗ると日光に当たらないとこに座る。母さんも乗ると車は発進し出した。


15分ほどで学校につくと日影に沿って玄関に向かう。玄関につくと同学年の人たちが大きな声でしゃべっていた。その横を通り教室に向かう。教室につくと窓際の席に鞄を置く。


「笹本!」

すると俺の前に男子二人がいた。

「どうしたの?」

俺が聞くと男子のひとりが

「今日二人で晩飯食いに行くんだけど一緒にどうだ?」

と聞いてきた。

「ごめん、今日は晴れてr……」

「だから行くんだよ!」

俺の言葉をさえぎって言ってきた。

「あ、えっと……」

「こら!」

もう一人の方がしゃべっていた方の頭をチョップする。

「ごめんな笹本。太一が急にお前誘いたいって言い出したもんだから」

太一……たぶんしゃべっていた方だろう。

「あ、大丈夫」

「ほら行くぞ太一」

そう言って二人は自分の席に戻っていった。



それからはなんとなく授業を受けて昼になった。俺は昼になるといつも特等席に行く。中庭にある物置の裏になぜかベンチがありそこは日影になっていて安心なのだ。到着するとベンチに座り弁当を開いた。おいしい。

「あら~?先客がいたのか。せっかくいいとこ見つけたと思ったのに」

見たことない女子二人が急にあらわれた。俺は唖然と二人を見ていた。

「あら?よく見たら日影好きの笹本ゆうき君ではないですか?」

一人が俺のことを知っていたようでなんか苦手な感じだ。

「笹本君私は日野 ひかりと言います」


名前まで苦手だ。まさに太陽って感じだ。今日はなんか運が悪い。朝の二人といいこの二人といい。

「えっと日野さん…?」

「はい!あ、さんはいらないです」

日野はとにかく苦手だ。

「よかったらこの場所いいよ。俺そんなお腹すいてないし」

とにかく俺はここから逃げたい。そう思い日野の返事も聞かずに俺はその場から立ち去った。



特等席から逃げてきてなんとなく教室に戻ってきた。運よく自分の席は空いていた。自分の席に座り弁当をまた開いた。落ち着かないが弁当はおいしい。弁当が終わり俺は中庭に向かった。やっぱり中庭が落ち着く。また俺は日向の場所に立つ。まわりに人気はない。3分たち指の色が変わってきた。そしてまた少しずつ色が広がりゴツゴツしてくる。しかし俺はそこで昨日の母さんの顔を思い出した。

(俺なにしてんだろ)

俺はすぐに日影に入った。そして教室に戻って行った。



午後もなんとなく授業を受けて帰る時間になった。俺は嫌な予感がするので早めに学校を出た。しかし親は来ていない。携帯の電源を入れ母さんに連絡する。しかし出ない。疲れて寝ているのだろうか?しょうがないので学校に戻り中庭の特等席に向かった。学校は運動部の声や吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。中庭につくとほとんどが日向になっていた。


俺はなるべく早く歩き特等席に来た。特等席はどんなときでも日影になっている。ベンチに座ると携帯を見て連絡がないか確認する。来てないのを見て鞄の中から小説を出す。小説の内容は虐待を受けた犬の思想を書いた物語だ。いい趣味とは言えないが話的には俺はおもしろいと思う。10分ほど読んだが親から連絡はない。読んで待っていると読み終えてしまいロッカーにある他の小説を取りに行った。


階段を上がっていくと吹奏楽部の演奏の音が大きくなる。教室の中に入りロッカーを開けると小説が3冊入っていた。1冊取りロッカーを閉める。すると携帯が急に大きな音で鳴り響いた。俺は急いで電話に出た。

「もしもし」

「あ、ゆうき?ごめんねちょっと疲れちゃって寝てたみたい」

母さんのいつもの声が聞こえた。

「大丈夫。どのくらいでつきそう?」

俺もいつもの声で返す。

「なるべく早く行くからいつものとこで待ってて」

そう言って電話は切れた。俺は小説を鞄に入れ階段をおりた。外はまだ明るい。夕日がとても赤く眩しい。俺は日影に入り腰を下ろす。あえて小説は読まずなにもアプリの入っていない携帯を眺めた。

「あれ?ゆうき」

その声を聞き俺は上を向くと俺の唯一の友達といっていい友達が立っていた。


彼は南たくま。たくまは仲のいい友達が何人もいるはずなのにほとんど俺と関わっている。まわりからは偽善者などと言われて嫌っている人もいる。

「たくま。部活帰り?」

俺はたくまの顔を見上げ聞いた。

「そうだけど、ゆうきはなんでこの時間に?」

たくまも地面に座り聞いてきた。

「母さんが遅れてて」

「なるほどね。てか、ゆうきが携帯いじってるの珍しいな」

たくまは俺の携帯を除きこんできた。

「あれ?なんもしてないの?」

たくまは少し残念そうな顔をした。そうこうしていたら母さんの車が到着した。

「遅れてごめんね。あら?たくま君。またいつでも遊びに来てね」

たくまは会釈をする。

俺は車に乗りドアを閉めた。ミラーを見るとたくまが車を見えなくなるまで見ていた。今日はいろいろな人たちが俺に関わってきた。俺はいつかみんなの記憶でただの怪物になるのかもな。

「やっぱり人のフリって難しい…」

俺の小さな声は町のうるさい声に消された。



家についた俺はいつものように部屋に行き鞄を置く。俺はそのままベッドに倒れ込む。俺は自分の机を見た。そして机に手をのばし引き出しを開ける。そして中からナイフを取り出す。そしてナイフを持った手を真上に上げ刃をこちらに向ける。そしてそのまま俺は思いっきり心臓がある場所刺した。ナイフをまた少しずつ上げてみる血は出ていない。そんなの当たり前だ。100円ショップで昔買ったおもちゃなのだから。俺は起き上がり着替えを済ます。そして階段をおりリビングのドアを開ける。

「母さん今日の晩ごはんなに?」

いつもの顔でいつもの声で聞く。

「今日は焼き魚にしようかと思って鯖買ってきたの」

「そっか、美味しそう」

俺は母さんの料理は全て大好きだ。もともと好き嫌いもないから、という理由もあるが。


俺はソファーに座り最近ほとんど見ていなかったテレビをつける。今日は全てが珍しい。急にクラスメイトに誘われたり、誰も来たことのない特等席に人が来たり、俺がすることもないのに携帯を眺めたり、テレビを見たりと今日はいろいろおかしい。最後の2つは俺の気分の問題かも知れないがさいしょの2つは…。考えすぎか。


俺はテレビを消し自分の部屋に戻った。電気をつけ本を開く。今度の本は頭脳派の連続殺人犯を主人公にしたサスペンス小説だ。これもいい趣味とは言えない。でも、面白ければ俺はまわりの目は気にしない。趣味なんて人それぞれなんだから。小説を読んでいると集中しすぎていたのか母さんが肩を叩いてくるまで気づかなかった。晩ごはんの時間だ。

「ごめんね。呼んでも来ないから心配になって」

母さんは悪いことをしたという顔をしている。

「大丈夫。呼びに来てくれてありがとう」

本を閉じ母さんと一緒にリビングにおりた。


もう父さんも兄さんも帰ってきていて食卓についていた。

「やっとおりてきたか」

兄さんは笑顔で言う。その笑顔はどこか歪んで見えた。やはり今日はおかしい。俺がおかしいだけかもしれないが…。俺はなぜか急に食欲がなくなった。

「ごめん。ちょっと食欲ないや。鯖はみんなで分けて。ほんとにごめん」

みんなの顔を見ると少し心配したような顔が見えた。

「大丈夫?熱とかない?」

母さんが言ってきた。

「うん。いがいと残酷な小説読んだからだと思う」

母さんを少しでも安心させるために言った。

「今日はゆっくり寝て明日の朝食べれるなら食べればいいよ」

父さんが言ってきた。

「うん。ありがとう。父さんも仕事の疲れちゃんととるためにゆっくり休んでね」

父さんはうなずいた。

「今度お前の本1冊読んでみたいよ。おやすみゆうき」

兄さんが笑顔で言う。

「いつでも言ってよ。かすから。おやすみ兄さん」

俺はリビングのドアを開け階段をのぼった。


部屋のドアを開けカーテンが閉まった窓の前に立つ。カーテンに手をかけカーテン全部開けた。外はもう真っ暗だひさしぶりに自分の部屋からの景色を見た。星は1つも見えない。暗闇に三日月が黄色い光を発している。俺は狼男みたいなものなのかな?そんなことを考えてみる。そういえば狼男も俺もどういう仕組みで体が変わるんだろう。狼男は満月を見たら急に毛が生えてきて狼になって明るくなると毛がなくなる。俺は日光に10分当たれば全身が怪物になって日影に入ったら元に戻る。考えても考えても答えはでない。そんなものがいっぱいあるのに誰も気にしない。だから俺も気にしないで寝ることにした。



今日は休日。と言っても起きる時間が遅くなることはない。いつもの時間でなれてしまい嫌でも起きてしまう。いつものように階段をおりリビングのドアを開けた。

「ゆうきおはよ」

といつもなら母さんたちの声がするが今日はしなかった。今日は母さんと父さんの結婚記念日で朝早くから二人で出かけていった。兄さんは午前中だけ用事があり今はこの家に俺しかいない。机には置き手紙と朝食、昼食の分のお金があった。俺は椅子に座り朝食を一人でとった。終わると食器を流しに出した。

(洗うのは昼食のあと全部まとめてしようかな)

リビングを出て部屋に戻り読書にはいる。


きりのいいとこで俺は時計を見た。10時25分と示しておりいがいと長い時間読んでいたことになる。そのわりに本は半分ほどしか進んでいない。まあまあ分厚い本で時間がかかりそうだ。

「ガチャッ」

玄関で音が聞こえた気がした。父さんも母さん夜まで帰って来ないはずだし兄さんも帰ってくるには早い。まさか不審者。俺はカーテンを開け日向に手を出す。足音が階段をあがってくる。指の色が緑にかわった。日影に全身が入らないように注意しながらドアに近づく。ドアノブが回った。ドアが開いた。

俺は足音の主に飛びかかった。



「うわっ!?」

俺は足音の主の首に爪を突きつけた。

「や、やめろ!ゆうき!俺だお前の兄だ」

俺は手を引っ込め顔を見た。そこには焦った顔の兄がいた。

「あ、ごめん兄さん。こんな早いとは思ってなくて不審者かと思っちゃった」

俺は兄さんの上からおりた。

「今日はお前と外食にでも行こうと思って早めに帰ってきたんだ」

兄さんは起き上がり言った。

「外食?」

「あぁ、それよりお前もしほんとに不審者だったらどうしてたんだ?」

兄さんは真剣な顔で聞いてきた。

「脅して帰らせる…かな…?」

少しの間沈黙ぼ世界になる。外の音しか聞こえない。

「そうか。ゆうき約束してくれどんなことがあっても俺たちに何かあってもそれは使うな」

腕まで広がった緑の体を指さしながら言った。

「うん。ごめん」

俺は日影に入り体を元に戻した。

「大丈夫だ。早く着替えろよ。昼飯食いに行くぞ」

そう言い兄さんは部屋から出ていく。俺はカーテンを閉め、着替えた。部屋を出て1階におりると。兄さんは準備を終えて玄関で待っていた。



「準備終わったかじゃあ、行くぞ。日向に気を付けろ」

ドアを開け日影を通り兄さんの車に乗った。日陰がある場所に座り車は発進した。車の中では学校のこと本のこと恋愛のことを話していた。ついた店はラーメン屋で前から兄さんがおすすめしていた店だ。車を降り店にはいると全席カウンターで老舗って感じがする。席に座ると兄さんはもう決めているようでメニュー表を見ていない。

「兄さんは決まってるの?」

兄さんはその言葉を待っていたかのようにこちらを見た。

「あぁ、俺はこってり味噌ラーメンだ」

そう言ってメニューのこってり味噌ラーメンを指さした。

「じゃあ、俺もそれにしようかな」

そういうと兄さんは店員を呼んで注文をした。のんびり待っているとラーメンが到着した。美味しそうだ。

「いただきます」

箸で麺を持ち上げるといいにおいがする。口に運んだ。

「おいしい」

「だろ?今日どうしてもつれてきたくてな」

兄さんは嬉しそうだ。すごくおいしくペロリと食べてしまった。


「ごちそうさま」

「そろそろ行くか」

レジに向かい兄さんはお金を全額払おうとしたので俺はそれを止めた。

「兄さん。お金俺の分はもらってるからいいよ」

俺はお金を出そうとすると兄さんは

「いいよ。俺のおごり。その金は自分の本買う小遣いにでもしとけ」

と言いにっと笑った。

「ありがとう」

そう言い俺も笑った。そのまま兄さんとまたいろいろな話をしながら帰った。



いつもの時間に俺は目を覚ます。昨日は帰ると皿を洗うのを忘れていて急いで洗った。そのあとは兄さんに携帯のアプリを入れてもらい一緒にした。ひさしぶりのゲームで少しはまった。今日は読書をしながらも途中にゲームの時間を挟もうと思った。しかし家のチャイムがなり母さんがドアを開ける音が聞こえた。俺は気にしないで本を読んだ。

「ゆうきー!お友だちだって子達が来てるんだけど」

俺は驚き読んでいた本を落とした。俺に友達といえるのはたくまくらいなのに複数。どういうことだ。


俺は階段をおり玄関に行くとおとといに俺を晩ごはんに誘ってきた二人だった。

「お、笹本。おとといぶり」

名前は忘れているので元気な方と落ち着いた方と呼ぼう。因みに今話していたのは元気な方だ。

「悪いな笹本。太一がどうしても笹本の家行って遊びたいって言ったもんだから」

落ち着いた方が申し訳なさそうに話している。

「あの…帰ってくれないかな…?」

俺は二人に言った。

「なんでだよ?前は晴れてたから無理だったんだろ?でもお前の家なら晴れてても関係ないとおm」

「帰れよ」

俺は話の途中にも関わらず二人を睨み付け言った。。二人はびくっとしていた。俺はドアを閉め鍵を閉めた。

「ゆうき…」

母さんが心配した顔で俺をみる。

「謝らなくて大丈夫。母さんは悪くないんだから」

母さんが謝ってきそうだったのでさえぎり部屋に戻った。部屋から外を覗いてみるとまだ二人は立っていた。

(いつまでいるんだよ!)

そう思いカーテンを閉めた。


俺は坂井 みらい。隣で機嫌の悪そうな顔をした男は和田 太一。今太一が友達になろうとしている笹本の家の前にいる。睨み付けられ俺も太一もびびった。いつもおとなしい笹本があんな顔をするとは。それよりなぜ太一がこんなにも笹本にこだわっているかというと正直俺にもよくわからない。


おととい急に

「俺笹本と友達になりたい!」

と言い出したのだ。

「どうした急に」

俺はもちろん乗り気ではない。笹本はいつも一人で変わった本を読んでいる。俺は笹本と関わる気もなかった。

「なんかさ、笹本と友達になれたらいろいろおもしろそうじゃん」

しかし太一がこう言うのでなんとなく付き合っている。おととい晩ごはんに誘ったが拒否られた。どうせ本しか読まないのに断るとは。そんなこんなで現在に至る。

「太一もう帰ろうぜ?」

俺は太一の腕をつかむ。

「みらいだけ帰ればいいじゃん」

太一は俺の手を振り払い言った。

「は?」

「みらい。別に俺にあわせなくていいよ」

太一がこんなこと言ったのは初めてだ。

「おい!どういうことだよ!」

俺は胸ぐらをつかむ。

「なに怒ってんの?今の台詞に怒るとこなんてあった?」

そうだよ…俺なに怒ってんだ?自分でなんで怒ったかもわからない。俺は掴んでいた胸ぐらから手をはなした。

「ごめん太一…俺、変だな…」

俺はうつむいた。

「ほんとに変だよ」

「え?」

俺は太一の言葉を聞き驚いた。

「みらいは変だよ。でも、だから俺はお前の友達なんだよ」

そうか。俺は太一が初めてのちゃんとした友達だから笹本に嫉妬してんのか。

「そうかもな」

俺は笑いながら言った。


俺は外を見ていると元気な方と落ち着いている方がなんか喧嘩をしていたみたいだ。だけどすぐに仲直りしたみたいだ。

「人ん家の前でなにしてんだよ」

俺はカーテンを閉めようとすると二人がこちらを見たような気がしてカーテンを閉める手を止めた。

「笹本―!!今度は雨の日にちゃんと連絡してから行くな―!!」

元気な方の声が聞こえてくる。

「どんだけ一緒に食べたいの」

俺はボソッと一人で言った。

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