96.やっぱりジンは天才だな
10階層には5階層と同じように貧相な両開きの木の扉が在るだけだった。
同じように開いていた扉の孔から中の様子を確認するとオークが5階層のゴブリンと同じような編成を組んで待ち構えている。
ギルドの情報通りなら、中にいるのはオークソードマン・シールドオーク・オークアーチャー・オークマジシャンだ。
ここから様子を見るに5階層のときとは違ってシールドオークはオークマジシャンではなくオークソードマンの前に陣取っている。
今回はポックルにはオークシールドの邪魔ではなく、オークマジシャンが魔法を唱えられないように植物で口と鼻を塞いでもらおう。
万が一呪文を唱えなくても魔法が使える特殊な個体がいても口と鼻を塞さがれて呼吸ができなければ集中が乱れて魔法を使うことはできないはずだ。
今回パッシーはジンの補助だ。
さすがのジンもあの数のオークソードマンとシールドオークには手こずるだろう。
パッシーの牽制が役に立つと思う。
ジンが戦いたくてウズウズしているので早く全員の行動方針を伝えてオーク討伐と洒落込もう。
最初に飛び出したのはいつもの通り切り込み隊長ジンだ。
紫色の雷と風を纏う《魔闘気(風雷)》を使って一気に駆け出す。
すでにトップスピードはオレの《韋駄天》を超えているように見える。
あっという間に一番左端のオークのさらに左の壁際に足を踏み込んでいるがオークソードマンは全くジンの動きに反応できていない。
ジンは踏み込んだ足の力をそのまま流れるように腕まで伝えて前進の力で斧を振り抜いた。
オークソードマンは何もすることも無くただ首から血を溢れさせて迷宮の床に崩れ落ちる。
しかし他のオークもただ仲間が殺すれるのを見ていたわけではない。
オークソードマンが床に倒れ伏したときにはシールドオークがガッチリ防御を固め終わってしまった。
それでも鉄をも切るジンなら問題ないだろう。
しかし、シールドオークはジンの斬撃を力で耐えるのではなく力に逆らわずに腕を引きそのまま後方へとジャンプすることで力を受け流そうとしたのだ。
だがジンはそれを上回った。
シールドオークは力を流しきれずに後方へ飛ばされて床に背中を強かに打ち付けて倒れた。
あの様子ではすぐには立ち上がれないだろう。
ジンが斧を振り切った瞬間を狙っていたのか3匹のオークソードマンがほぼ同時にジンに突きを放った。
「ジン、危ない!」
思わずオレも叫んでしまったがそこからのジンの動きを俺には正確に表現できないがとにかくすごかったの一言だ。
振り切った斧の力を利用して踏み込んだ足を軸に回転して始めの突きを避けて次の突きも軸足を変えて回転することで避けた。
最後の突きは回転した勢いをそのまま利用してオークソードマンの鉄の剣を下から斧でかち上げた。
勝ち上がった剣が一番下でほかのオークソードマンの剣に交差していたために他の剣も巻き込まれ一緒にかち上げられてた。
オークが剣を手放さなかったのはオークの力強さの証明でもあるが今回の場合は悪手である。
全員バンザイのような態勢になってしまい完全に無防備な状態だ。
しかもシールドオークは遥か後方でまだ立ち上がってもいない。
ジンは3匹の首を狩るには腕が邪魔と判断したのか比較的細い3匹の足首を一気に切断した。
ジンがこんなにきれいに軸足の回転のみで3匹の攻撃を回避できたのは3匹が密集して剣を振ることができず点の攻撃である突きしか放てなかったからと思うがそれでもとてもオレはマネしようとは思わないしできるとも思わないな。
今回もジンの天才っぷりに魅せられたな
接近戦なんて絶対無理です!




