90.閑話 シスターリーネ
私の名前はリーネと言います。
ファルスの街で教会のシスターとして教会と孤児院の管理を行なっています。
近所に住む昔なじみのライトが手伝ってくれることで何とかギリギリの状況ですが運営できています。
先日からよく足を躓いてこけるそうになることが増えて来ました。
足元に注意しないといけないなと思っただけで何処に痛みがあるわけでも無く気にするほどのことでは無いとそのままいつも通りに過ごしていました。
数日経ったころ今度は歩くのが少し辛くなって来ました。
いつも忙しいので疲れが溜まって来たのかも知れないと思いましたが、教会と孤児院には私しか居ないのに休むわけにはいきません。
しかし倒れてしまっても子供達の世話ができなくなるので少し早めに寝るようにしました。
さらに数日経つと何処かにつかまらないと立てなくなりました。
ここに来てようやく自分が石化病にかかったことに気がついたのです。
石化病は滅多に発症しませんが足先から段々体が動かなくなり心臓が止まるまでゆっくりと死の気配を感じ続ける恐ろしい病です。
しかし気がついたからと言って私にはどうすることもできません。
なぜなら石化病を治すには希少な薬草である精霊草が必要だからです。
ここ30年以上市場に出回ったことが無いほどの希少な薬草です。
例え見つかったとしても私が払えるような値段では手に入れることは出来ません。
身売りをすれば買えるかもしれませんがそれでは孤児院の世話をする人が誰も居なくなります。
そんなことをすれば私は命を存えるかもしれませんが大切な子供達が路頭に迷ってしまいます。
私にとってそれは絶対にしてはいけないことです。
ベットから起き上がらない私を心配する子供達には少し疲れただけだと誤魔化しましたが何日経ってもベットから起き上がれない私を見れば子供達も気が付いてしまいます。
しかし問題を解決する方法が全く思い付きません。
なんと翌日に神の慈悲と言っても過言ではない出会いがあったのです。
そうロイ君がソラさんを連れてきたのでした。
はじめ勘違いをして大変失礼なことをソラさんに対して言ってしまいました。
今考えるととても恥ずかしいことを言ってしまいました。
だって男の人が優しくするのは卑下た考えを持っているからだと聞いていたのですもの。
でも彼はそんな風に心の中で考えていた私に全く嫌な顔しないとても優しい人です。
そしてとても暖かい魔力の持ち主でもあります。
あの心休まる魔力にずっと包まれていたいと思ってしまいます。
こんなことは今まで思ったことも無かったのにソラさんは本当に不思議で優しい人です。
しかし唯一分からないのはなぜ神への祈りのようなことをさせたのでしょうか?
きっと特別な意味があるとは思うのです。
今度機会があればソラさんに尋ねて見ましょう。
そんな優しいソラさんに私達は返しきれない恩ができてしまいました。
精霊草を手に入れてくれたことはもちろんのこと。
報酬も報酬とはとても呼べないような要求しかしてくださいません。
さらには沢山手に入ったからと栄養価も高く高級なお肉をたくさん寄付してくれます。
子供たちの成長には必要な物なので心苦しいですがその好意に甘えてしまっています。
今は無理ですけれど、子供達がここを巣立った暁にはこの恩を一生かかって返さないといけません。
ただそんな私にロイ君は笑顔で「シスターがいれば大丈夫」って言ってくれます。
私のせいで孤児院が大変なことになりそうだったのにそんな私を信頼してくれてともて嬉しいです。
そして今日も孤児院の入り口をノックする音が聞こえます。
きっとソラさんですね。
「ソラで~す。リーネさんいませんか?」
やっぱり、ソラさんです。
「は~い。今開けます。」
相手の心の内が分かれば楽ですよね。




