86.味方はアントレ侯爵だけ?
「ややこしい話はこのくらいにしてコックローチ討伐に対する報酬の話をしよう。」
話を長くややこしくした張本人が何を言っているんだ。
「今回参加してくれたギルド員全員に銀貨5枚を支払う。そしてソラ殿には金貨10枚を支払うこととする。以上が今回の件に関する報酬とする。」
相場は分からないが日給5万円と考えれば破格の報酬だ。
命がかかっていることを考えると妥当かは分からないけど、危険度の違いはあっても命懸けなのは日頃の依頼でもそうだからあまり関係ないのかもな。
そしてオレの報酬金貨10枚は約一千万円、オレの3年分以上の給料でとんでもない金額だな。
とは行っても昨日ギルドでそれ以上の報酬を受け取っているから今更だ。
まぁ、コックローチを討伐するために一軍を動かすことを考えたら安いもんなのかな。
「「ありがたく頂戴します。」」
うん、やけに廊下が騒がしい気がするな。
「おと~さま~。」
コレもしかしてリーゼちゃんの声か?
「お嬢様お待ちください。ただ今来客中ですよ。」
ってことはコレはアンさんかな?
そうこうしていると部屋の扉を音を立てて開いたリーゼちゃんがオレ達の居る部屋に走り込んで来た。
「お父様、お父様。この街をお救いになった英雄殿はどこに来られているのですか?」
リーゼちゃん元気がいいけど、接客中にお客さんを無視してそれはどうかと思うんだよ。
続いてアンさんも部屋に入ってきたがリーゼさんを止めることをすでに諦めたようで落ち着いて入り口の側に立って気配を薄くしている。
ジンが強いっていうだけ有ってそこにいるのに非常に認識し辛い。
「申し訳ございません。お嬢様をお止めできませんでした。」
アンさんが頭を下げているがあの状態リーゼちゃんを止めるのは難しいだろう。
「リーゼ。今は来客中だと言っていただろうに。」
アントレ侯爵は一応嗜めているつもりのようだが顔も声も猫なで声になっている。
うんこれだけで親バカなのははっきりした。
「こちらは今回街を救ってくれた英雄ソラ殿とギルドマスターのジン殿だ。きちんと挨拶をしなさい。」
来客中に飛び込んできた件はもういいんですかね?
あ、セスさんも諦め気味な表情をしてますね。
あの完璧執事のセスさんが諦めるとはよっぽどだと思うね。
リーネちゃんがこちらを向いて姿勢を正しながら
「初めましてソラ様、ジン様。私はリーネと申します。以後お見知りおきを。」
両手でスカートのスソを持ってお辞儀をしてくれる。
これがカーテシーとやらなのかな。
ゆっくりと姿勢を戻すしてオレの顔に目を向けると何か疑問があるのか首を捻っている。
つられてオレも首を捻る。
「あ、ああぁぁ~!!!」
リーゼお嬢様、せっかくの優雅な挨拶が台無しですよ。
しかも人を指で指すのはどうかと・・・。
もしかしてこの世界ではいいのか?
いやセスさんが渋い顔をしてるし、アンさんもアチャーって顔になっちゃってるからダメなんだろな。
「あなたあのときの平民!のこのこ私の前に出てこれたわね。今ならあのブタを置いていけば許してあげるわ。」
まだ諦めてなかったとは
リーゼちゃんもよっぽどパッシーが気に入ったんですね。
それにしても誰か止めてくれないかな~。
クマに目を向けると目を反らされた。
まぁ、オレも逆の立場なら目を反らすけど一応クマはオレの上司的立場だと思ったんだがな。
困ったときに助けてくれないダメ上司だったか。
アンさんは言われたことしかしないタイプみたいだから助けてくれないかな。
セスさんはあとでオレに対してフォローするとは思うけどここで率先して行動するとは思えないな。
ここは親バカなアントレ侯爵に期待するしかないのか。




