78.お嬢様あらわる
エリナさんに何でもするって言ってしまった。
なにをお願いされるか分からないが機嫌が直ったようなのでよしとしよう。
それにしても結局何で怒っていたのか分からなかった。
今後エリナさんを怒らせることのないようにしたいのに対策できないのは困ったな。
これが後々問題となってエリナと溝ができたら一大事だ。
早く解決方法を探さないと。
そんなことを考えながら孤児院に向かっていると不意に《直感》さんが反応したのでヒョイっと右にステップを踏むと大きな虫取り網がさっきまで立っていたところを通り過ぎた。
なぜに虫取り網?
「なんで避けるのよ!」
後ろに振り返ると女の子が虫取り網を持って立っていた。
しかし全く似合ってない。
キレイな金髪をツインテールにした勝気な目をした女の子。
服装は少女マンガに出てきそうなフリフリの桜色のドレスを着ている。
将来はクールビューティーって言葉が似合う美女になるに違いない。
「なんでって、そりゃ頭から虫取り網を被りたくないからかな?」
「なんで疑問系なのよ。ハッキリしなさいハッキリ」
おお、ストレートな物言いだな。
日本人は曖昧な言葉が好きなんだよ。
相手に察してもらいたいんだよ。
とりあえずハッキリもう一度言う。
「なんでって、そりゃ頭から虫取り網をかぶりたくないから。」
「それは分かったわよ!」
え~、ハッキリ言えって言うから言ったのに・・・。
「あなたその頭にのせている生き物を私に譲りなさい!」
なんで譲ってほしいのに上から目線の命令形なのだろうか?
オレのほうが年上なのに、あ、この世界では関係ないのか。
「いやだよ。パッシーは大事な仲間だしな。」
もちろんパッシーを渡すわけが無い。
その当のパッシーは寝てますけどね。
「あなた、私がリーゼ・アントレと知って言ってるの!?」
誰だそれ?
家名があるから貴族なんだろうな。
うぁ、すげぇめんどうになりそう。
「ソラ、なんかコイツえらそうだな。」
「貴族みたいだから一応えらいんだよ。あれ?たしか貴族ってみんな街から逃げ出したんじゃなかったっけ?」
「アントレ家をそんな腑抜けたちと一緒にしないで!私達はファルスの街を助けにわざわざ来たのよ!感謝しなさい!」
えぇ~。税を納めてるんだからそれは貴族の仕事じゃないだろうか。
子供に言っても仕方ないけど。
「はぁ、ありがとうございます。」
「なによその言い方は!」
困ったな。
めんどうだし、逃げるか。
「お嬢様。探しましたよ。」
侍女風っていうか侍女が急に現われた。
赤毛のショートカット、ソバカスがチャーミングだ。
赤毛のアンっぽいな。
胸は想像にお任せします。
それにしてもいつ来たのか分かんなかったぞ。
「ソラ、気をつけろ。あの女強いぞ。」
「ああ。」
侍女兼護衛なのかな。
「アン。丁度良かったわ。あのブタを捕まえて!」
この子パッシーを諦めてなかったか。
「これは『殲滅者』ソラ様。この度は街を救ってくださってありがとうございます。」
アンさんは丁寧に挨拶してくれた。
「いえ、オレもこの街に守りたい人がいただけですから。」
「そうですか。それでもこの街で生まれたものとしてお礼を言わせてください。」
「そうだったんですね。なら尚更この街を守れてよかったです。」
知り合いの美人がいるから頑張ったけどこうやってほかの人にもお礼を言われると嬉しいものがあるな。
「アン、早くあのブタを捕まえなさい。」
パッシーが寝ててよかった。
起きてたらブタじゃないって騒いでいただろうな。
「お断りします。それより早く帰りますよお嬢様。」
「アン。あなたは私の侍女でしょ!私のいうことを聞きなさいよ!」
この子はわがままお嬢様なんだろうか?
「私は私の雇い主であるアントレ侯爵にお嬢様を連れ帰るように言われてしますのでお嬢様を連れて帰るだけです。ソラ様お騒がせしました。」
そういうとアンさんはなんとリーゼちゃんをひこずって帰って行った。
あとにはリーゼちゃんの「ア~ン~」という叫びだけが響いていた。
リーゼちゃんみんなに注目されて目立っているな。




