75.美人の晩酌
せっかく食べれると思ったエナちゃんにエリナさんから待ったがかかってしまった。
エナちゃんの顔がショボーンってなっちゃってるよ。
ショボーンって顔ホントにできるんだな。
「そうだ!エリナさんも一緒に食べましょうよ。肉もたくさんありますし、何より偶には違う人と一緒に食べたいですから。」
エリナさんも巻き込んだらどうだ?
「そ、そうしましょ。お母さん!」
「ダメよ。エナ決めたでしょ?」
なにを決めたのかな?
ここはさらに援護射撃だ。
「今日は他のお客さん居ませんし、それに今日は1日頑張ったご褒美があっていいと思いますよ。」
貴族は逃げ出し騎士もいなくなり兵士もほとんどいないさらにギルド員すら数少ないなか家に籠ってずっと恐怖が過去るのを肩を震わせて待っていたのだ。
エナちゃんにご褒美があっていいはずだ。
決してオレがエレナさんとご飯を食べたいだけじゃないんだ。
「なに言ってるんですか。ソラさんはこの街の住人でもないのに残って戦ってくれたんです。私たちはただ家で待っていただけで頑張ってなんかいませんよ。」
いや、頑張ってるでしょ。
どうやって説得しようかな・・・。
エナちゃんのご褒美でなくオレたちに対するご褒美と言うことならどうだ?
「褒めてくれてありがとうございます。それじゃそんな頑張ったオレたちにご褒美で美人親子と一緒にご飯が食べれても良いと思うんですよ。」
エリナさんはちょっと呆れた顔になる。
「はぁ、ソラさんには敵いませんね。分かりました。一緒に食べましょう。」
「やった~!お母さん早く用意しよう!」
エナちゃんがあっという間にニコニコ顔になって厨房へと入っていく。
「ソラさん、ありがとうございます。エナはソラさんが来てからとても子供らしく感情豊かになりました。」
そういってエリナさんが頭を下げてくる。
「頭を上げてください。オレの何がエナちゃんに影響を与えたのか分かりません。ただオレもエリナさんとエナちゃんに大変お世話になってます。その一部でも返せたのならこれほど嬉しいことはありません。」
「ふふ、ソラさんはいつもそうですね。大変なことを何でもないことのように言いますね。」
「そうですか?自分ではよく分かりません。」
実際オレはあくまで自分のできる範囲でしか行動してない。
「きっとそれがソラさんの良いところなんでしょうね。」
そういってエリナさんは厨房へ入っていった。
これは素直に喜んでおけばいいのか。
オレはかなり利己的な人間だと思うのだが・・・。
ジンとパッシーが一人前を食べ終えたころエナちゃんとエリナさんがジンとパッシーのおかわりも持って戻ってきてくれた。
「ジン君、パッシーちゃん。おかわりを持ってきたわ。」
「エリナ、ありがとだぞ。」
「ブヒブヒ」(ありがとう)
「エナ、ソラさんに感謝しておいしいお肉をいただきましょう。」
「分かってるよ。お母さん」
「「ソラさん、ありがとうございます。」」
なんだか照れるな。
これからもできる限りのことはしよう
「喜んでいただいたなら、持って来たかいがありました。冷めないうちに食べましょう。」
「そうだぞ、温かいのが旨いんだぞ。」
「ブヒブヒ」(そうだそうだ。)
(タベヨウ)
「「はい。」」
みんなでおいしい肉を口に放り込む
「熟成肉にしてよかったわ。アースリザードのおいしさを十分に感じられるわ。」
「お母さん、これがアースリザードのお肉なのね。こんなに肉汁があって赤みも柔らかい。これじゃ普通のお肉じゃ物足りなくなっちゃう。」
「それは大変だ。エナちゃんはアースリザードの肉は食べないほうがいいね。明日からお肉がおいしくなくなっちゃうよ。」
エナちゃんに半眼で睨まれてしまう。
「ソラさん、あくまで言葉のあやです。」
エナちゃんがそっぽ向いたが肉はしっかり食べている。
「あらあら、エナはソラさんと仲良しね。ちょっと妬けちゃうわ。」
エナちゃんの顔がシュッと動いて。
「お母さん何言ってるの!」
そんなエナちゃんをエリナさんはスルーして
「ソラさん、お肉のお礼においしいお酒でも飲みませんか?」
お酒はあまり好きではないが美人が勧める酒を断る理由はない。
「ぜひ、いただきます。」
「それじゃ、取ってきますね。」
そんなエリナさんにエナちゃんは抗議を諦めてお肉をパクパク食べている。
そんな風にしてその日の夕食はエリナさんとエナちゃんと楽しく過ごした。




