74.餌付け?
《そよかぜ亭》の扉はきっちり締め切られたままだった。
十分に用心してくれているようで安心した。
「エリナさ~ん。ソラです。ただ今帰りました。」
部屋の中を走る音が聞こえて来て扉の前まで来た。
扉がゆっくり開いてエリナさんが顔出して笑顔になった。
「ソラさん、よかった無事だったんですね。さぁさぁ、中に入ってください。」
エリナさんに促されてオレたちは《そよかぜ亭》の中に入った。
「エリナさん、すいませんが食事を作ってもらえますか。」
「ソラ、オレは2人前は食べるぞ!」
「ブヒブヒ」(オレも2人前だ。)
(ジュース、タクサン)
そうだった、好きなだけ食わせるって約束したけどそれはコックローチの片付けがあったからで。
「おまえらそれはコックローチの片付けをするからであって、もう免除されたんだからなしだぞ。」
「えぇぇ!「ブヒブヒ!」(えぇぇ!)」」
通常なら構わないけど、この後たぶん街の食料供給が滞るだろう。
それを考えたらここでオレたちが好き勝手に食べるのはダメだ。
「ソラさん、お時間をいただければ準備できますから大丈夫ですよ。」
「ダメです。この後おそらく食料の供給が滞ります。通常なら問題ありませんが今は甘いことは言えません。」
「うぬぬ、なら我慢するぞ。」
「ブヒブヒ」(いじわるじゃないのか)
オレの使い魔はきちんとした理由があれば分かってくれる。
主に対する扱いが雑な気はするが良い使い魔だよな。
「ソラさん、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。以前いただいたお肉を保存したものがたくさんありますから。どうしても気になるならまたお肉を差し入れてくださればいいですから。」
「ソラ、オレも頑張って狩るぞ。」
「ブヒブヒ」(おいしいメシのためならいくらでも)
(ガンバル)
使い魔たちもこう言ってるしエリナさんが問題ないなら頑張った使い魔にご褒美を出すのは主の務めかな。
「それでしたら。また肉を手に入れてくるので5人前の食事とジュースをお願いします。」
「それでは少し時間がかかりますのでその間に体を洗っておいてください。」
体がベタベタのままじゃせっかくおいしい食事を気分良く食べれないな。
エリナさんの言葉に従おう。
「ジン、パッシー、ポックル。食事の前に体を洗っておこう。」
部屋でみんなの体をきれいにしてから食堂の席に着いた。
するとすぐにエナちゃんが食事を持ってきてくれた。
「ソラさん、今日はアースリザードの熟成肉のステーキとリザードのハンバーグですよ。」
この世界にも熟成肉ってあるんだな。
匂いだけ涎が出てくるなんて初めての経験かも、どれだけ旨いか想像もつかない。
「ソラ、オレはもう食うぞ!」
「ブヒブヒ」(我慢できん)
「よし、食べよう!」
全員が肉にかぶりつく。
う、うまい、高級霜降り肉を食ったことないがきっとそれより旨いはずだ。
なんといっても美人が作った料理なんだからな。
オレたちが一心不乱に肉を食っていると何となく視線を感じてそちらに顔を向けるとそこにはまだエナちゃんが立っていた。
これはどうするべきか・・・・。
ジンとパッシーを見るが食事に夢中で気が付いてないようだ。
あ、ちなにみポックルはジュースを飲んでますよ。
「エナちゃんも食べる?」
「い、いらないわ。」
エナちゃんは断っているのにジッと肉を見ている。
もしかして「いいの」って言おうとしてた?
どうしたらいいかな?
「あ~あ、エナちゃんにこのお肉の感想をどうしても聞きたいなぁ。食べてくれないかなぁ。」
エナちゃんをチラっと見ると、うれしそうな顔をしながら
「ソラさんがそこまで言うなら味見しないといけないよね。」
「エナ!言ったわよね。」
ありゃりゃ、エリナさんから待ったがかかちゃったよ。




