69.ほとんどみんな逃げちまった
「困った。さっき倒した数の10倍以上のコックローチがコッチに向かって来てる。」
「あいつら弱いくせに数が多いから嫌なんだぞ。」
ジンはあんだけ数が多いと自分の好きな接近戦ができないから嫌なんだろな。
「ブヒブヒ」(あいつら飛ぶしな)
今までの相手は空中にいればほぼ手出しできなかったからな。
今後は飛行できる魔物を少しづつ戦って経験を積もう。
まぁ、それもこの騒動が終わってからだけどね。
「ここでオレたちだけ迎撃するのは無理があるな。今分かってるのだけの数で全部か分からないからなおさらな。」
コックローチの数を削りながら街まで後退するか。
クマがきっと迎撃の準備をしているだろ。
「コックローチの足止め用の罠を仕掛けながら撤退するぞ。」
「ソラ、こいつらをやっつけないと街が大変なことになるぞ。」
ジンはほんと戦闘に関することは的確だ。
「そうなんだが、クマにも状況を知らせてるから何か対策を準備してるだろ。街を見捨てる気はないけどオレもまだ死にたくないからな。より生き残れそうな方法で行くよ。」
もしクマの準備がなくても一応クマと協力しればできることもあるからな。
「ソラに考えがあるんだな。分かった。」
「オレとポックルは罠を作りながら撤退するからジンとパッシーは先にクマのところまで撤退しろ。」
オレはアイテムボックスからルシアさんからもらったポーションをだす。
「それとこれを飲んで回復しておけ。」
「わかった。ソラもポックルも気をつけろよ。」
「ブヒブヒ」(主ドジるなよ)
とりあえず久しぶりにパッシーに『バシ』っとデコピンをしておいた。
「ブヒ」(イテ)
「心配すんな。コックローチが来る前に撤退するよ。早く行け。まだまだ戦闘は続くからしっかり休んどけよ。」
「休むのも仕事だな。」
「ブヒ」(そのまま終りまで寝ていたいな。)
ジンとパッシーが撤退した後、オレとポックルはひたすら泥をばら撒いている。
これで多少は進軍を遅らせてクマの準備の時間を作れるだろう。
途中途中に《プログラム・条件》で感圧式に改良した《プログラム・爆弾》を設置していく。
もしかして威力が思ったより高かったのは《漢字》スキルも関係してるのかもな。
他にもポックルと協力して《プログラム・条件》で圧力を感知したら植物の根が飛び出す罠も設置。
これでコックローチを串刺しにできるだろ。
「ポックル、魔力は大丈夫か?」
(ダイジョウブ)
「一応ポーションを飲んでおけ。」
オレはポーションをポックルに渡して自分も飲んでおく。
それら二つの罠をできる限りの数を設置しながら撤退していると街の外壁が見えてきた。
しかしどこにも迎撃部隊らしきものが見当たらない。
クマは今の状況を理解してないのか?
さらに街に近づくとようやく迎撃部隊らしきものが見えてきた。
しかし明らかに人数が少ない。
ジンの近くにクマがいたのでどういうことか説明してもらおう。
「クマ、これはどういうことだ?」
クマはこっちに振り返って厳しい顔つきを見せた。
「ああ、ソラか。結論を言うとこの街は見捨てられたんだよ。」
可能性はあったが考えられる最悪の事態だな。
「詳しい現状を教えてくれるか?」
「貴族は全員街の外に避難したな。騎士はその護衛に着いて行った。ギルド員も護衛依頼を受けて出て行ってるな。」
「街の住人はどうなってるの?」
「馬なんかを持っている商人なんかは避難してるんじゃないか?大半は家に篭っている。ここに残っているのはこの街出身の冒険者と兵士だ。」
「それにしても少なすぎないか。コレじゃ、あの大群に対応できないぞ。」
「そうなんだろうが、もともとフォルスに戦力が少ない上にこの街出身じゃないヤツは逃げだしたからな。」
自分の命が一番大事だろうけどなんだかなぁ。
「大規模な魔法を使えたりするすげぇヤツがいたりする?」
「そんなのいねぇよ。オレも一度に大多数を葬るようなことはできんしな。」
そのとき遠くで爆発音が響いて周りが騒然となる。
「落ち着け!」
クマが《威圧》を軽く放って落ち着かせる。
意外と《威圧》って便利なんだな。
「すまん。オレが仕掛けてきた罠が発動したんだ。あと30分くらいでここにコックローチが来る。」
「時間があまりないな。どうするか・・・・。」
今ならオレの作戦が通るな。
「クマ、ちょっとオレの作戦にのるか?コックローチの全滅は無理でも半数以上は削れるぞ。」
「話してみろ。」
クマもやっぱり追い詰められてんだろうな。




